これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ランプ・河野 匠代表取締役CEO」を取材しました。
不便がきっかけ
起業当初は企業のWebマーケティング支援がメインだったが、より社会貢献できる事業を立ち上げたいと考えていた。そんなとき、コロナ禍の在宅食事需要が転機となり、テイクアウト特化型の管理SaaSを開発する。テイクアウトの利用には電話予約が必要だったり、店頭で待たされたりと、不便に直面した経験がヒントとなった。
テイクアウト市場は都心部で急速に広がった。「生まれ育った滋賀をはじめ地方でも同じように利用できないか」。新事業は、社名に込めた「地域の事業者を“灯す”」というビジョンに近づく一歩だった。
かゆいところに手が届く
人手不足が深刻な地方の飲食店にこそ必要なサービスと自負する。電話やファクスで注文を受けて紙で管理するアナログな方法からオンラインでの一元管理に転換することで、負担が減るからだ。ネット注文システムなどで顧客の利便性も高めることができる。DXをためらう事業者には他社事例を示し、初期費用を無料にすることで導入ハードルを極力下げている。
顧客課題から解決策を導く「イシュードリブン」を大切にしている。ユーザーからのフィードバックを受けて改良を重ねた結果「かゆいところに手が届く」と、きめ細かい管理項目を評価してもらえるようになった。今後は管理ツールにとどまらない進化を見据える。「収集データを活用したプロダクトをつくり、売り上げにも貢献したい」
三方よし
社員にユーザーファーストの考え方を伝える一方、社会全体を良くしたいとの思いから、故郷である滋賀の近江商人の経営哲学「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を経営者として心掛ける。休日には旅行を兼ねて各地の導入店に行く。「利用されている様子が一番のモチベーションになっている」
月に何度か上京するが、本社の京都から拠点を移すつもりはない。「創業の地からサービスを広げる」。地方への思いを原動力に、日本全体をデジタルの力で照らす。
プロフィール
河野 匠
1992年生まれ、滋賀県大津市出身。大谷大学文学部在学中に起業し、アパレルEC事業を手掛ける。2017年に企業HP制作やWebマーケティング支援事業でランプを創業。
会社紹介
飲食店のテイクアウトに特化した管理システム「テイクイーツ」を提供する。24時間のネット注文受付や在庫、受け渡し日の管理、顧客データの収集などを一元化。管理業務を減らし、業務効率化を支援している。