これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Recustomer・柴田康弘代表取締役CEO」を取材しました。
ヒップホップ文化に傾倒
高校時代はヒップホップ音楽のDJやブレイクダンスに傾倒し、下校後は札幌市内の大通公園に集まり、仲間とヒップホップ文化を熱く語り合った。「興味を持ったものは掘り下げないと気が済まないタイプ」だといい、自身を「好奇心を原動力にして突き進む“好奇心ドリブン”な性格」だと評する。
コロナ禍でビジネスが一変
大学に進学した後は、AIやデータ分析と相性がよいコンピューター言語のPythonに引かれて独学で習得。「音楽とPythonの二足のわらじ」を楽しむはずだったが、在学中にソフトウェアの受託開発会社を立ち上げたことがきっかけとなり、音楽からは徐々に遠ざかった。
起業して3年がたった頃、コロナ禍に見舞われた。「三密」を避けるためにネット通販のシステム開発の需要が急増。ネット通販の仕組みをSaaS型で提供するカナダ発祥の「Shopify」を活用して従来の数分の1の納期でネット通販を始められるサービスをスタートしたところ、注文が殺到。事業を大きく伸ばすことに成功する。
ASEAN進出、音楽も復活へ
ネット通販に関わるようになり「みんな、売るのには熱心だが、返品業務は手作業であることが多く、後ろ向きな作業になっている」ことが分かった。持ち前の「好奇心」が頭をもたげ、詳しく調べてみると、衣料品などで返品OKの「お試し購入」を実施すると購入率が3~5ポイントほど向上。返品率は15%程度で、通常販売より5ポイント程度増えるが、それでも85%は売れる。「顧客需要とのコンバージョン率を高めるほうがトータルでプラスになる」と、返品・キャンセル業務の自動化ソフト「Recustomer」を開発し、社名も商品名と同じに変えた。
今の関心事は海外進出。とりわけ成長著しい「ASEAN市場への好奇心が止まらない」と話す。事業が軌道に乗り、再び音楽を楽しむ余裕も生まれ、「最近はハウスミュージックをよく聞く。ASEANにも音楽好きな仲間は多くいるはず」と話す。好奇心の赴くまま、ビジネスと音楽で国境を越えていく。
プロフィール
柴田康弘
1993年、札幌市生まれ。早稲田大学商学部中退。2017年、在学中にANVIEを創業。21年、Recustomerに社名変更。
会社紹介
ネット通販の返品・キャンセル業務ソフト「Recustomer」を開発。これまでにおよそ300件のネット通販サイト、運営会社数では100社に納入。従業員数は約20人。