これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Notta・張 岩CEO兼創立者」を取材しました。
経営経験を積み手応え
高校生のとき、家族にPCを買ってもらったことがきっかけで、ITやコンピューターの世界に興味を持った。当時はインターネットを通じた企業のビジネスが人々の生活の中に広がり始めたころ。自身にも「この業界に進みたい」という思いが芽生え、プログラミングの勉強に取り組んだ。
(取材・文/下澤 悠 撮影/大星直輝)
大学を出て就職した複数の企業でプロジェクトマネージャーなどの知識を得た後、2014年にシェア自転車のMobikeを中国で共同創業。自ら社内のあらゆる方面をリードしていく経営の経験を積み、手応えを感じた。
会話内容を分析、次の価値創造へ
その後、翻訳デバイスを手掛ける会社を起こしたが、コロナ禍で対面のコミュニケーションが減った中での事業は厳しく、「人生で一番の苦痛」を味わった。悩む中で「デバイスではなくアプリケーションを提供しよう」との考えに至り、仲間と開発プランニングした「Notta」をリリース。グローバル市場を志向し、ユーザーからの感触が良かった日本にNottaの本社を構えた。
社名には、AIでの文字起こしを担うことから「note taking」の意味と、自身が好きな日本食である「納豆」のように人々の身近な存在になってほしい、との願いを込めた。ただ、目指すのは議事録の作成にとどまらない。例えば、日常的な会話内容などを「資産化」して分析し、次の価値を創造することにつなげたいと構想する。
成長してほしい「子どものように」
Nottaは「自分の子どものような存在」だと感じている。より多くのユーザーに使ってもらい、成長してほしいと願う。経営者として社員の働きに報いる成長を遂げたいとの思いが、仕事へのモチベーションになっている。
米国などにたびたび渡航し忙しく過ごすが、隙間時間にはポッドキャストでAIについて学んでいる。研鑽は欠かさず、25年に経験豊富なビジネスリーダー向けのEMBA(Executive MBA)も取得した。娘とレゴで遊ぶのは、仕事との切り替えができる大切な時間だ。
プロフィール
張 岩
1983年生まれ、中国出身。大学でコンピューター工学を専攻し、卒業後はWeb広告企業などに勤務。2014年、中国でシェア自転車大手のMobikeを共同創業。20年にNottaを創業した。
会社紹介
東京に本社を置き、AI文字起こしサービスを提供。日本を中心にグローバル展開し、ユーザー数は1000万人を超える。25年春からハードウェアデバイス「Notta Memo」などの取り扱いも始めた。