その他
あらゆる家電をネットワーク化 最先端の実験現場を見る
2002/01/07 15:00
週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載
テレビ、ビデオ、エアコン、照明器具など身の回りに溢れるさまざまな家電機器――。それらをネットワーク化すると、どんな使い方が可能になるのか。「情報家電」を実際の家庭で使ってもらう初めての実証実験が晴海トリトンスクエア(東京都中央区)でスタートしている。家電製品を集中的に操作できるタッチパネル式の「ホームパネル」と「ホームサーバー」を利用してもらい、その操作性や利用状況などを調べることで、実用化の可能性を探るのが狙いだ。実験には、NTTコミュニケーションズをはじめ20社以上が参加、新しいジャンルの市場創出への期待も高まっている。(千葉利宏●取材/文)
情報家電集中操作の実証実験
●実際の家電で実験、ホームサーバーを核に
昨年春に完成したばかりの市街地再開発地区「晴海トリトンスクエア」(東京都中央区)。この一角に、都市基盤整備公団が次世代賃貸住宅のモデルとして100Mbps対応の光ファイバーを敷設した超高層賃貸住宅棟「アーバンタワー」がそびえている。
今回の実証実験は、ここに住む家庭に協力してもらい、かつ原則的には個々の家庭で使用中の家電製品を使って実施することになった。経済産業省が00年度から情報家電のあり方などを検討してきた「ホームディジタルビジネスモデル研究会」の成果を実証する場である。
実際の家庭と同じように家電機器を設置したアーバンタワー内にあるモデルルームを案内してもらった。
壁際に、一辺が20cm程度の正方形のホームサーバーが設置され、14インチ程度の大きさのホームパネルが無造作に置かれている以外、一見、何の変哲もない部屋である。
家電製品も、現在市販されているものばかりで、ホームサーバーとホームパネルもNECがすでに販売を開始している製品だ。それら家電機器を制御する技術も、無線LANではなく、リモコンに広く使われている赤外線である。
少し意地悪な見方をすれば、テレビ、ビデオ、エアコン、照明器具で、それぞれバラバラにある4つのリモコンを統合して、ホームパネル上で操作できるようにしただけ、と言えなくもない。
リモコンを片手にもって機器本体の受光部に向けてボタンを押すという動作はしなくて済むように、360度全方向に赤外線を発信する装置だけは新たに開発したというわけだ。
しかし、見方を変えれば、同じテレビでも、メーカーごと、さらには製品ごとにボタンの配列が異なるリモコンをホームパネルという共通プラットフォーム上で統合することは、家電分野ではこれまでになかった画期的なことだ。
ボタンだけがたくさん並んだリモコンの代わりに、文字や映像を自由に映し出せる液晶ディスプレイを搭載したホームパネルを使うことで、インターフェイス機能を大幅に向上することも可能だ。メカに弱いお年寄りや小さな子どもでも簡単に操作できるインターフェイスを開発することは、情報家電を実用化するための必須条件であり、実験の最大の狙いもそこにある。
例えば、テレビやビデオの操作では、ホームパネル上に通常のリモコンの画像を映し出して、そのボタンをタッチして操作することもできるが、液晶画面にテレビ番組表を映し出して、そのなかから番組を選択できるという操作方法を用意した。1週間分の番組表が前の週の半ばには自動的にサーバーからダウンロードされ、ビデオの操作画面で番組を選択するだけで簡単に予約録画ができるという。
エアコンの操作画面には、「快適にする」と書かれたボタンが用意されている。これは、利用者が行った温度などの設定ログ(記録)を蓄積しておくことで、「快適にする」というボタンを押せば、利用者がいつも設定する温度に自動的に調整してくれる機能。この「ログの蓄積」によって最適化を図るという技術は、いろいろな部分に使われているキーテクノロジーの1つだ。
●コミュニティ活動も視野に、情報家電ビジネスの可能性大
ホームパネルは、誰もがウンザリしている操作マニュアルを読む作業を不要とするインターフェイスの実現を目指している。このため、使い始めは、使い方の説明が画面上に自動的に表示される仕組みとなっている。さらに、操作が進むと、段階ごとに、操作方法が判ったかどうかを質問する画面が煩わしいくらいに表れる。ここで「わかった」と押すと、そのログが蓄積されて、使い方の説明の画面や理解度を質問する画面がだんだん表示されなくなる仕組みだ。
逆に、なかなか操作方法を理解できない状況が続くとどうなるか。まずは、よりやさしく詳しい説明が表示されるようになる。それでも解決しない場合は、操作方法を習熟した人に教えてもらうという機能「コミュニケーション・ヘルプ」が用意されている。
「情報家電ネットワーク」では、ホームサーバーの上位に、マンション単位や自治会単位でコミュニティサーバーを設置することを想定している。
コミュニティサーバーでは、接続した利用者の習熟度に関するログを蓄積。操作方法を理解できない人に対して、コミュニティのなかで習熟度が高い人を紹介してくれるわけだ。デジタルデバイド(情報格差)を縮小するだけでなく「コミュニティ内におけるこれまでにない新たな情報流通が生まれる効果も期待できる」(NTTコミュニケーションズ・ソリューション事業部・増田英昭主査)。
今回の実験では、窓の開閉状態を監視して携帯電話に通知したり、IPカメラで静止画を撮影して送信するセキュリティサービス、ホームパネル上で手書き入力が可能な電子メール機能やコミュニティ内の電子掲示板・回覧板などの通信機能サービスも用意した。
さらに、ブロードバンド機能を生かして、ショートコントやアニメ、サスペンスホラーなど300本以上の映像コンテンツをホームパネル上で楽しむことができるコンテンツサービスも提供している。
実験は今月いっぱいで終了し、年度内に結果を取りまとめる予定だ。
インターフェイスとネットワーク――。2つの共通プラットフォームが確立して初めて新しいサービスやコンテンツを提供できる環境が整う。実証実験では共通プラットフォームの重要性と、その上で発展するであろう情報家電ビジネスの可能性が示された。同時に、今後は情報家電ネットワークが、利便性だけでなく、家庭生活にどのような豊かさをもたらすのかも検証していく必要があるだろう。
テレビ、ビデオ、エアコン、照明器具など身の回りに溢れるさまざまな家電機器――。それらをネットワーク化すると、どんな使い方が可能になるのか。「情報家電」を実際の家庭で使ってもらう初めての実証実験が晴海トリトンスクエア(東京都中央区)でスタートしている。家電製品を集中的に操作できるタッチパネル式の「ホームパネル」と「ホームサーバー」を利用してもらい、その操作性や利用状況などを調べることで、実用化の可能性を探るのが狙いだ。実験には、NTTコミュニケーションズをはじめ20社以上が参加、新しいジャンルの市場創出への期待も高まっている。(千葉利宏●取材/文)
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