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<e-Japanリファレンス>NTT局舎のコロケーション問題 「電気通信分野における競争の促進に関する指針」公取委、総務省まとめ
2002/01/07 15:00
週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載
NTT局舎のコロケーション問題が新たな展開を見せている。イー・アクセスなどが、「(ヤフーBBは)不当に場所を占有している」として反発を強めているものだが、NTT局舎を攻撃していたヤフーBBがいつの間にか被告の立場に立たされていた。背景などについては、別の機会に書くとして、ここでは公正取引委員会と総務省が2001年11月に公表した「電気通信分野における競争の促進に関する指針」のなかから、コロケーションに触れている「電気通信設備の接続および共用に関する関連する分野」を紹介しよう。
II 独占禁止法上又は電気通信事業法上問題となる行為
第1 電気通信設備の接続及び共用に関連する分野
1 独占禁止法における考え方
(1) 電気通信役務を提供するに当たっては必要不可欠であるが、投資等を行うことにより同種の設備を新たに構築することが現実的に困難と認められる設備(以下「不可欠設備」という。)(注1)がある。このような場合において、電気通信事業者にとっては当該設備への接続(注2)が行えなかったり、接続の手続が遅延したりすれば、新規参入や新規事業展開が困難となる。また、当該設備のうち必要となる機能等だけに限定した接続ができない場合には、更なるコスト負担を強いられることとなる。さらに、当該設備への接続が一部の電気通信事業者にしか行われない場合には、電気通信事業者間の公正な競争条件を確保できないこととなる。
(注1) 例えば、市場において相対的に高いシェアを有する電気通信事業者が保有する固定系の加入者回線網がこれに当たる。ここにいう加入者回線網とは、加入者から最も近い交換機(以下「端末系交換等設備」という)、加入者と端末系交換等設備を連結する電気通信回線(以下「端末回線」という)、端末系交換等設備からの電気通信回線を集線する交換機(以下「中継系交換等設備」という)、端末系交換等設備と中継系交換等設備の間を連結する電気通信回線等から構成されるネットワークをいう。また、ここでいう電気通信回線には、メタル回線のほか、光ファイバー回線等を含むものとする。
(注2) 加入者回線網への接続に係る行為のほかに、加入者回線網の共用に係る行為があるが、これらについては接続に係る行為の考え方が準用される。
(2) このような状況の下、例えば、不可欠設備を有する電気通信事業者が、他の電気通信事業者に対し、その保有する加入者回線網の接続(注3)やコロケーション(注4)の取引を拒絶し、又はそれらの取引の条件若しくは実施について自己又は自己の関係事業者(注5)に比べて不利な取扱いをすることは、他の電気通信事業者等の新規参入を阻害し、円滑な事業活動を困難にさせるもの(注6)であり、これにより市場における競争が実質的に制限される場合には、私的独占に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反することとなる。市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、上記のような行為により、公正な競争を阻害するおそれがある場合には不公正な取引方法に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反することとなる(注7)。
また、移動体通信サービス事業者の保有する電気通信設備については、投資等を行うことにより同種の設備を新たに構築することが現実的に困難なものと一概に認められるものではない。しかしながら、移動体通信サービスを行う際には市場において相対的に高いシェアを有する移動体通信サービス事業者との接続が不可欠と認められる場合があること、電波の割当て枠に限りがあることから同サービス市場への参入が行われにくいという現状等を踏まえると、市場において相対的に高いシェアを有する移動体通信サービス事業者が、他の電気通信事業者との接続を拒否等することは、上記と同様に独占禁止法上問題となる。
(注3) 加入者回線網の接続には、その機能を細分化し、接続を受ける者にとって必要なもの(例えば、通信を伝送する機能、通信の交換を行う機能等)のみを利用させる形態を含むものとする。
(注4) コロケーションとは、加入者回線網の接続を受ける者に対して、接続を行うために必要な装置を設置するために必要不可欠となる局舎スペース等を提供することをいう。
(注5) 自己の関係事業者とは、自己との資本関係等を通じて一方が他方の経営方針等の決定を支配しているか又はそれに対して重要な影響を与えている事業者をいい、例えば、自己の子会社、自己を子会社とする親会社、当該親会社の子会社などをいう。
(注6) 不可欠設備を有する電気通信事業者が、接続の拒否行為等を行うことにより、他の電気通信事業者による新たな電気通信役務の提供を困難にさせることも含む。
(注7) 具体的行為に対する独占禁止法の適用については、I、第2、2(3)を参照。
2 電気通信事業法における接続制度等の趣旨と概要
(1) 電気通信設備の接続制度
電気通信設備の接続の制度は、電気通信事業者間の交渉力の相違等に着目して、優位な一方当事者によって他方当事者に著しく不利な協定が締結されたり、接続の実質的な拒否がなされたりすることで、公正な競争及び利用者の利便を害することがないように、電気通信事業者間の円滑な接続を確保することを目的としている。そして、制度の概要は以下のようになっている。
ア.第一種電気通信事業者の接続義務等
第一種電気通信事業者は、その電気通信回線設備について、電気通信役務の円滑な提供に支障が生じるおそれがあるとき等一定の場合(注8)を除き、他の電気通信事業者からの接続請求に応じる義務がある(電気通信事業法第38条)。
(注8)(1)電気通信役務の円滑な提供に支障が生じるおそれがあるとき
(2)当該接続が当該第一種電気通信事業者の利益を不当に害するおそれがあるとき
(3)接続を請求した他の電気通信事業者が接続に関し負担すべき金額の支払を怠り、又は怠るおそれがあるとき
(4)接続に応ずるための電気通信回線設備の設置又は改修が技術的又は経済的に著しく困難であるとき
第一種電気通信事業者は、自己の電気通信設備(下記の第一種指定電気通信設備及び第二種指定電気通信設備を除く)と他の電気通信事業者との接続に関して、接続料金等について接続約款を定め、又は変更しようとするときは、総務大臣に届け出なければならない(電気通信事業法38条の4第2項)。
イ.指定電気通信設備制度
不可欠性・独占性を有する、あるいは相対的に多数の加入者を収容していること等から、公正な競争及び利用者利益の確保の観点から特別の接続規制が必要な電気通信設備については、電気通信事業法に基づき、総務大臣が指定を行う。総務大臣が指定を行う電気通信設備には、第一種指定電気通信設備と第二種指定電気通信設備がある。
まず、第一種指定電気通信設備とは、固定系端末回線を相当な規模で有する地域ネットワーク設備であり、他の電気通信事業者の事業展開上不可欠で独占性を有しているため、公平かつ透明で円滑・迅速な接続を確保する観点から、これを設置する第一種電気通信事業者は、接続約款の作成・認可・公表、アンバンドル(ネットワーク機能の細分化)した形での接続、接続会計の整理・公表、特定の機能に関する接続料についてのLRIC(長期増分費用)方式による算定等が義務付けられている。
次に、第二種指定電気通信設備とは、移動体通信用設備のうち相対的に多数の加入者を収容しているものであり、移動体通信市場が電波の有限性のために参入者が限られる寡占的市場であることから、それを設置する第一種電気通信事業者は、接続約款の作成・届出・公表等が義務付けられている。
ウ.接続の協定
第一種指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者は、認可を受けた接続約款によらなければ、他の電気通信事業者との間において、第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更してはならない(電気通信事業法第38条の2第6項)。また、第一種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない(同条第9項)。
第二種指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者は、届け出た接続約款によらなければ、他の電気通信事業者との間において、第二種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更してはならない(電気通信事業法第38条の3第4項)。また、第二種指定電気通信設備との接続に関する協定を締結し、又は変更したときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない(同条第6項)。
(2) 電気通信設備の共用制度
電気通信設備の共用に関する協定については、当事者間の協議により締結することとしている。
第一種電気通信事業者及び特別第二種電気通信事業者が行う第一種指定電気通信設備の共用に関する協定については、不当な差別的取扱いを防止する等、第一種指定電気通信設備の適正かつ円滑な利用を確保する観点から、総務大臣の認可に係らしめている(電気通信事業法第39条の3第1項)。
他方で、第一種電気通信事業者及び特別第二種電気通信事業者が他の電気通信事業者と締結する電気通信設備(第一種指定電気通信設備を除く。)の共用に関する協定については、総務大臣に届け出なければならないとされている(同条第5項)。また、第一種指定電気通信設備を設置する第一種電気通信事業者が一般第二種電気通信事業者と締結する当該第一種電気通信設備の共用に関する協定についても、届け出なければならないとされている(同項)。(続く)
NTT局舎のコロケーション問題が新たな展開を見せている。イー・アクセスなどが、「(ヤフーBBは)不当に場所を占有している」として反発を強めているものだが、NTT局舎を攻撃していたヤフーBBがいつの間にか被告の立場に立たされていた。背景などについては、別の機会に書くとして、ここでは公正取引委員会と総務省が2001年11月に公表した「電気通信分野における競争の促進に関する指針」のなかから、コロケーションに触れている「電気通信設備の接続および共用に関する関連する分野」を紹介しよう。
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