その他
どうするニフティ、ソネット、NTT プロバイダの合従連衡進む
2002/05/06 15:00
週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載
プロバイダの合従連衡が進んでいる。ニフティの渡辺武経社長は、「今年に入りNECから連合参加の打診を受けたが断った。数だけ追い求めても仕方がない。だが、今後も連合しないというわけではない」と、今の段階では中立維持の姿勢を示す。一方、独自に4社連合を結成したNECビッグローブの芳山憲治執行役員常務は、「今年初め、ソニーとニフティの買収話が出てから、連合への動きに拍車をかけた。今後ともほかのプロバイダの連合参加を呼びかける」と、有力プロバイダの引き込みに余念がない。また、NTTグループは4月19日に発表した3か年計画で、「規模の拡大が必要であり、現在グループ各社で展開しているプロバイダサービスを段階的に統合する」と、規模の追求を明記。収益性が低下するプロバイダ事業は、統合・巨大化の一途をたどるのか。
「メガコンソーシアム」発足
●4社連合結成、総会員数1000万人
NECビッグローブは5月下旬、KDDIディオンと日本テレコムODN、松下電器産業ハイホーと連合し、「メガコンソーシアム」(仮称、4社連合)を結成する。総会員数は1000万人となり、国内最大のプロバイダ連合となる。
NECの芳山常務は、「ニフティやソネット、NTTなどが、いずれ連合して巨大になることを想定している。こうなると、競合すべきでないプロバイダとは連合を組んだほうが得策」と、規模の論理で対抗する姿勢を示す。
4社連合は、コンテンツ流通を主眼に置いた“なだらかな”連合としている。だが、ブロードバンド(BB)時代に即したコンテンツを配信するには、それ相応のインフラが必要。なだらかな連合だけでは、役に立たない。
芳山常務によると、6月の本格的な活動開始までには、①4社連合による共同出資会社をつくるのかどうか、②利用者に向けたサービス名称はどうするか、③インターネット総合研究所や松下電器などと共同で設立したブロードバンド・エクスチェンジなど、ほかの通信事業者との連携はどうするのか――などを「具体的に決める」方針。どこまで踏み込んだ事業統合になるのかは今後の検討課題だ。
なぜ、ここへきて「連合」なのか。その理由は、プロバイダが急速に収益力を失いつつあるからだ。
日本テレコムの片岡忠衛常務執行役員は、「ヤフーBBが登場して、月額の接続料が半額に下がった。月額4000円の接続料金のままで、しかも56Kbpsのナローバンドのままだったら連合を組まなくても済んだだろう。しかし、現状は接続帯域が広がり、どのプロバイダも儲かっていない。だから、連合して収益構造を変えていく」と打ち明ける。
ニフティの渡辺社長は、「赤字ではない。値下げとBB化が同時に進み、一番苦しかった昨年度(2002年3月期)でさえも、売上高639億円、最終利益数億円を確保した。今年度は売上高700億円、最終利益で2ケタの億を目指す」と強気だ。
しかし一方で、ニフティと「統合」するかもしれないソネットは昨年度(02年3月期)、売上高333億円に対し経常損益は24億円の赤字見通しにある。
ニフティ関係者の中からは、「ソネットの224万人という会員数は欲しいが、赤字は要らない。せっかく黒字運営をしているのに、統合して赤字になっては元も子もない」という声も聞こえてくる。
今のプロバイダにとって、黒字を出すということが、どれだけ困難なことかをよく物語っている。
だが、いつまでも単独の黒字だけに安穏としてはいられない。
ニフティの渡辺社長は、NECビッグローブ4社連合やNTT連合について、「1000万人の連合や、NTT連合が本格的に動き出せば、相応の影響力が出てくる。数年前はソネットの動きが気になったが、今はNTTコミュニケーションズのOCNの動きが気になる。単独で日本一の会員数を誇るが、プロバイダの統合が進めば、日本一でなくなるかもしれない。一度そうなれば、会員数の規模でそう簡単に巻き返せなくなる」と神経を尖らす。
●依然元気なヤフーBB、今後IP電話を軸に展開
プロバイダ業界を連合に走らせた一因のヤフーBBは、今でも元気がいい。会員数はほかのプロバイダに比べて少ないものの、4月25日から国内と米国が一律3分7.5円で通話できるインターネット電話(IP電話)「BBフォン」を正式に開始した。
全国の図書館や公民館などに無線LANのアクセスポイント(ホットスポット)を設置し、インターネット接続する「ヤフーBBモバイル」の実証実験も始めた。「ヤフーBBモバイル」は月額2280円で下り最大8Mbpsの通信ができる。
4社連合にとっても、IP電話は重い課題だ。 NECビッグローブの芳山常務は、「今年の秋をめどにIP電話サービスの可能性を検討する」と意欲を示す。
KDDIの伊藤泰彦執行役員常務は、「常時接続となれば、必然的にIP電話も始めなければならない。1000万人規模の連合を達成したからには、IP電話の相互接続も実現しないと利用者が困る」と、IP電話に一定の理解を示す。
日本テレコムの片岡常務は、「4社連合のなかで、IP電話を公衆網に接続するインフラや、音声や映像を通す回線を自前でもっているのは当社とKDDIだけ。だが、ビッグローブとハイホーは、競合のNTTの回線も使っているわけで、この辺りのインフラまわりを、どこまで共有化するのかは今後の課題」と話す。
4社連合が、ヤフーBB対抗に向けた本格的なIP電話構築を模索するなか、ニフティの古河建純副社長は、固定電話方式によるIP電話に疑問を投げかける。
「無線(モバイル)事業はまだ理解できる。しかし、固定電話は今後縮小・消滅する市場だ。各通信事業者も携帯電話には積極的な投資をするが、固定電話には投資しない。IP電話が安いからといって、消えゆく固定電話の市場に新しく参入するのはどうかと思う」と、ヤフーBBへの盲従に警鐘を鳴らす。
垂直統合を進めるヤフーBBと、水平統合を模索する4社連合やNTT連合。これに対し、態度を明確に示さないニフティやソネットが周囲の様子を探る。
ニフティの古河副社長は、「年内には、勝ち組と負け組がはっきりする」と、プロバイダが直面する厳しい状況を吐露する。
プロバイダの合従連衡が進んでいる。ニフティの渡辺武経社長は、「今年に入りNECから連合参加の打診を受けたが断った。数だけ追い求めても仕方がない。だが、今後も連合しないというわけではない」と、今の段階では中立維持の姿勢を示す。一方、独自に4社連合を結成したNECビッグローブの芳山憲治執行役員常務は、「今年初め、ソニーとニフティの買収話が出てから、連合への動きに拍車をかけた。今後ともほかのプロバイダの連合参加を呼びかける」と、有力プロバイダの引き込みに余念がない。また、NTTグループは4月19日に発表した3か年計画で、「規模の拡大が必要であり、現在グループ各社で展開しているプロバイダサービスを段階的に統合する」と、規模の追求を明記。収益性が低下するプロバイダ事業は、統合・巨大化の一途をたどるのか。
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