その他
みずほのシステム障害 やはり“人災”か
2002/05/13 15:00
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
みずほフィナンシャルグループのシステム障害は、ようやく「沈静」したようだ。第一勧業、富士、日本興業の3銀行が統合・再編され、個人、中小企業向けの「みずほ銀行」、大企業向けの「みずほコーポレート銀行」が誕生した4月1日。開店早々から現金自動預入払出機(ATM)が正常に動作せず、現金は引き出せずに残高だけ減少が147件、公共料金など二重引き落としが3万件、同じ口座に二重振り込みするなど送金の誤処理5000件、口座振替の遅延が最大250万件――。日本の金融システムに対する信頼を根本から揺るがしたこの障害の原因はなんだったのか。(村田知哉●取材/文)
経営陣の責任は重大
●“つぎはぎ”のシステム
金融庁と日本銀行は5月8日、原因究明のため、みずほへの立ち入り検査を始めた。
今回の障害は、旧3行の勘定系システムをつなぐ中継コンピュータの不具合によるものとされる。
また、旧3行のシステム「製造元」が異なったことが統合を難しくしたという指摘もある。
都銀の元システム技術者は語る。
「都銀の勘定系システムは、各行で独自に『つぎはぎ』してつくったもので、古い個所の設計図がなくなっていることも多い。全体像を把握している人物がだれもいない。そんなシステムを他行とつなぐのだから、トラブルが起きないほうがおかしい」
しかし、障害発生の原因は単なる技術上の事情だけではないようだ。
柳沢伯夫金融担当相が衆院財務金融委員会で4月25日、金融庁が昨年度中にみずほ側から、「虚偽の報告を受けた」と答弁している。
このことからも想像できるように、プログラムの間違いを完全に修正しきれず、「そうした状況を事前に知りつつも、経営陣が重要視せず、システム統合を強行したことにある」(みずほ銀幹部)との指摘が強くなっているのだ。
●主導権争いの戦場に
そもそも、みずほは99年12月、勘定系システムを02年4月に旧一勧に一本化すると発表した。
ところが、00年12月ごろには白紙に戻され、03年4月に延期する方針に転換された。
みずほ銀中堅行員によれば、統合システムの中身が旧3行の主導権争いの「戦場」になったからで、「そんなに仕様が変わっては、作業が間に合わない」と悲鳴を上げる担当部門の意向を無視して、システム統合計画は右往左往を続けたという。
その言葉どおり、統合直前になってもシステムは正常に動作しなかった。3月28日、「統合テストのせい」(みずほ銀の幹部)で一勧のATMが止まった。
さらに別の幹部によれば、再編・開店に備えて実際に移行作業を始めた30日には、4月1日の口座引き落としを依頼する企業から持ち込まれたデータに支店コードなど大量の誤りがあったという。
システム担当部門から、「データの振り分け作業が遅れている。期日中に処理できないかもしれない」との報告がなされても、経営陣は、「いまさら統合計画を先送りすることは困難」と判断したという。
「この時点で、行内では、今回の障害を予測する向きも少なくなかった」(みずほ銀中堅行員)。
経営陣は、こうした声にまったく耳を貸さず、一連の障害につながったのだ。
前出の幹部はこう怒る。
「経営陣は、顧客に対するサービスより、メンツを優先したんです。今回の障害は、明らかな『人災』ですよ」
みずほフィナンシャルグループのシステム障害は、ようやく「沈静」したようだ。第一勧業、富士、日本興業の3銀行が統合・再編され、個人、中小企業向けの「みずほ銀行」、大企業向けの「みずほコーポレート銀行」が誕生した4月1日。開店早々から現金自動預入払出機(ATM)が正常に動作せず、現金は引き出せずに残高だけ減少が147件、公共料金など二重引き落としが3万件、同じ口座に二重振り込みするなど送金の誤処理5000件、口座振替の遅延が最大250万件――。日本の金融システムに対する信頼を根本から揺るがしたこの障害の原因はなんだったのか。(村田知哉●取材/文)
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