その他
PC大手、構造転換は後手に 求められる“活きの良い”製品
2002/05/13 21:12
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
大手コンピュータメーカーの2002年3月期決算は、コンピュータ事業を主力に置く企業ほど厳しい結果に追い込まれた。これは01年3月期決算でもすでに現れていた兆候だ。かつて、NECの西垣浩司社長は、市場変動に収益が左右されない事業構造の確立を目指すと言い、富士通の高谷卓副社長もパソコン事業の転換を示唆した。しかし、このような動きも現段階では間に合わなかったようだ。各社のコンピュータ事業の売り上げは軒並み前期割れとなり、収益悪化の引き金になっている。景気が上向くのは「今年後半から」と各社は口を揃えて期待するが、これも昨年の時点ですでに聞いた話である。
社団法人、電子情報技術産業協会(JEITA)によると、01年度(01年4月-02年3月)のパソコン総出荷実績(輸出分を含む)は、台数ベースで前年度比12%減の1136万台、金額ベースで同17%減の2兆5872億円。このうち、パソコン本体の出荷金額は同18%減の1兆8733億円にとどまった。
台数、金額とも前年度と比較してほぼ同等の落ち込みをみせており、この要因についてJEITAでは、景気低迷による個人消費の冷え込みをあげている。
NECの松本滋夫専務は、「パーソナルプロダクツの不調が業績改善の足を引っ張っていることは確か。今期(03年3月期)の課題も依然パソコン事業の構造改革にある」と話す。同社では市場の変動要因に左右されない事業体質を構築するため、パソコン事業の第2次構造改革策として、生産拠点のシフトによるコスト削減を実施する。
具体的には、中国における携帯電話やパソコンなどの完成品調達額を前期の4倍に当たる2000億円に拡大。これにより、同社が出荷するパソコンの70%が中国からの調達になる予定だ。
コンピュータ部門で、NEC以上に厳しい状況にあるのが富士通だ。プラットフォーム部門の02年3月期の売上高は前期比13.4%減の2兆2556億円に落ち込み、03年3月期の見通しでもマイナス成長の予測を立てている。
高谷卓副社長は、「国内外の情報システムの落ち込みは、やはりパソコン事業の悪化が最大の要因」と説明する。とはいえ、ソフト・サービス部門の業績が好調なだけに、ハード部門を簡単に斬り捨てることもできない。
価格下落による収益の悪化、景気低迷による需要の落ち込みは、富士通だけではなく、他のメーカーも共通に頭を悩ませる。結局はNECと同様、対処療法的なリストラを進め贅肉を削ぐことが現段階での最善策にとどまり、”攻めの経営”に転じる気配は感じられない。
しかも、各社が推進する一連のパソコン事業構造改革案は、すでに昨年の時点で提出され、実行に移されてきたはず。対策と市場変化の速度がうまく折り合わず、後手後手に回っていることは否めない。
01年3月期に、パソコンを含むエレクトロニクス分野の売上高で前期比13.7%増の4兆9986億円をあげたソニーでさえも、02年3月期は同3%減の実績にとどまった。ただ、同社の場合、低迷していたゲーム部門の売り上げが02年3月期は大幅に伸び(前期比51.9%増)を記録し、全体的な収益悪化を食い止めたという特殊要因がある。
コンピュータ事業に限っていえば、各社の今期以降の戦略には、市場創出を促すほどの新製品を開発する意気込みはみられない。確かに、パソコンハードの場合、新たなコンセプトを打ち出すのは非常に困難な状況にある。ただでさえ市場が縮小し、収益力が大幅に低下している現状で、赤字部門への大幅な資金投入は企業の存続を危ういものにする可能性がある。
このことは、現状の高コスト体質を見直し、事業構造の転換を急ぐ各社の動きからも明らかだ。だが、収益をソフト・サービスのみに依存し、ハードの革新をストップすることは、メーカーにとっては将来的な死活問題にもつながる。メーカーの商品企画・開発力に勢いが感じられず、”活きの良い”製品を世に問おうとする意欲を失っていること自体が、各社の不振を一層深刻にしているとはいえないだろうか。
大手コンピュータメーカーの2002年3月期決算は、コンピュータ事業を主力に置く企業ほど厳しい結果に追い込まれた。これは01年3月期決算でもすでに現れていた兆候だ。かつて、NECの西垣浩司社長は、市場変動に収益が左右されない事業構造の確立を目指すと言い、富士通の高谷卓副社長もパソコン事業の転換を示唆した。しかし、このような動きも現段階では間に合わなかったようだ。各社のコンピュータ事業の売り上げは軒並み前期割れとなり、収益悪化の引き金になっている。景気が上向くのは「今年後半から」と各社は口を揃えて期待するが、これも昨年の時点ですでに聞いた話である。
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