ワールドカップ目前!新東京国際空港(成田空港)にインターネットサービスが続々登場。e-エアポートの実力は――。世界最大のスポーツイベント、2002年ワールドカップサッカー日韓大会の開幕を今月31日に控え、世界から観客を迎え入れる成田空港で「e-エアポート」構想が動き出した。「世界最先端のIT空港の実現を目指す」――。e-Japan計画を積極的に推進する日本のITの実力を世界に示すのが狙いだ。新東京国際空港公団では、通信回線やパソコンなどハード面の整備に加えて、e-エアポートを利用者へのサービス向上につなげる工夫にも力を入れる。(千葉利宏)

ファクシミリなどが利用できるビジネスコーナー

インターネットが利用できるキオスク端末
ワールドカップに合わせて
●「NAAランデブープラザ」 海外の航空会社が多く利用する第2旅客ターミナル。出発ロビーのある3階、ずらりと並んだ航空各社の受付カウンターの中央奥に、サービススポット「NAAランデブープラザ」がある。
「もともとあった空港公団の施設を移動して、出発する利用者の目に入りやすい、目立つ場所に設置しました」(新東京国際空港公団事業本部情報業務部・鈴木敏之調査役)。
文字通り、待ち合わせ場所の目印となる巨大な壁画の下に、利用者がくつろげるラウンジ、スターバックス・コーヒーが運営するスタンドカフェに加えて、インターネットを利用できるパソコン12台などを設置したビジネスコーナー(運営:キンコーズ)を配置し、3月末にオープンした。
ラウンジには、プラズマディスプレー5台が設置されてCNNなどの番組を流しているほか、成田空港の施設案内などの情報検索ができる端末も、より使いやすくリニューアルしたという。
同じフロアには、100円で10分間、インターネットを利用できる無人キオスク端末も2台設置されている。こちらは、公衆電話が置かれているような場所に、さりげなく(?)設置されている。FMラジオの成田フライトインフォメーションで有名な空港情報通信が、第1旅客ターミナルに設置した9台を含めて4月からサービスを開始した。

NAAランデブープラザ
●「Yahoo! Cafe」 パソコン50台、100Mbpsの光ケーブルによる高速インターネットサービスを無料で提供する「Yahoo! Cafe」は、出国審査手続きを終えたあとの制限エリア内に開店、4月10日からサービスを開始している。
Cafeは、NAAランデブープラザ近くのハイジャック検査場を通って、出国審査を終えると、中央のエスカレーターの脇にあった。こちらも利用者の目に入りやすい便利な場所だ。
「パスポートを見せてください」――。受付でパスポートの提示を求められるが、あとは無料でインターネットを楽しむことができる。Cafeからは、航空機の発着風景を眺めることができ、インターネット利用の合間にのんびりくつろぐ利用者の姿もチラホラ。これらのサービス施設が浸透すれば、利用者も着実に増えていくだろう。
e-エアポート構想では、3つの施策に総合的に取り組むことを打ち出している。
(1)空港での待ち時間や空港までの移動時間を有効活用するための高速インターネット接続環境の創出(2)空港アクセスの円滑化などのための利用者への総合的な情報提供(3)IT活用による空港でのチェックイン手続きの迅速化など 現時点で利用者がサービスを受けられるのは、(1)の高速インターネット接続環境の部分だけだが、空港という公共的な施設で手軽にインターネットを利用できる意義は大きい。
多様なサービスを試みることで、ここでの成果がほかの空港や公共的な施設へと広がっていくことになるからだ。

4月10日からサービスを開始した「Yahoo! Cafe」
●無線LANサービスも ワールドカップ期間中に提供されるサービスは、これだけではない。
「今月下旬からは無線LANのプロジェクトも開始します」(鈴木調査役)。空港施設内に、数か所の無線LANエリアを設置。「できれば、利用者が日常で使っている無線LANカードで、複雑なパソコンの設定をしなくてもインターネットの利用ができるようなサービスを実現させたい」と、意気込んでいる。
無線LANのサービスが加わると、(1)の高速インターネット接続環境のメニューは、現時点で利用可能なものがフルラインで揃ったことになる。
さらに、(2)の総合的なアクセス情報提供の目玉となる、携帯電話を使った「e-インフォメーション」の実証実験も6月から開始する計画だ。
これは、飛行機の便名に連動したアクセス交通機関情報などを提供するサービス。ワールドカップ開催期間からお盆休みなどで空港利用者が増える8月までの間、「フェーズ1」の実験を行う予定だ。
さらに年度内には、フェーズ1の利用者の意見なども聞いて、ホテルやバス便の情報も加えたフェーズ2の実験も予定しているという。
今後、空港公団では、これらの取り組みをよりいっそう利用者にわかりやすくPRするために、e-エアポートのサイトを立ち上げる。(http://www.narita-airport.or.jp/airport/)
「空港サービスカウンターで、担当の女性に何でも質問してみてください」
空港内を案内してくれた空港公団の鈴木調査役が、最後にそんなリクエストをしてきた。
サービスカウンターに行ってみると、担当者の前にもインターネット端末が設置されている。
空港利用者から寄せられた質問がデータベース化され、その端末を使って検索できるようになっているのだ。
「たいていの質問には答えられるように準備しています」
そう鈴木氏が胸を張ったように、ハード面の環境を整備するだけでなく、それを利用して、いかに利用者へのサービス向上につなげるか。
そこに、e-エアポート成功のカギがありそうだ。