その他
風雲急を告げるデータ通信業界 IIJとパワードコムの提携交渉
2002/07/29 15:00
週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載
NTTグループの対抗軸誕生へ――などとセンセーショナルに報じられたインターネットイニシアティブ(IIJ、鈴木幸一社長)と、電力系企業向けデータ通信会社、パワードコム(種市健社長)との経営統合を視野に入れた提携交渉。だが「日本のデータ通信産業のリーダーシップをとる」(鈴木IIJ社長)といった表面的な華やかさとは裏腹に、両社とも赤字解消の見通しが立たないなかで、危機感が日増しに強まっていたのも確かだ。米国の大手長距離通信会社の破たんに代表されるように、情報通信の世界では単一の事業形態ではもはやビジネスが成立しなくなっている。それだけに、今回の提携は勝ち組に入れるかどうかの“最後の賭け”ともいえそうだ。
赤字体質から脱却できるか
●揺れ動く収益モデル
設備産業といわれる通信業界。しかし、ここ数年のブロードバンド化とIP化の波は、NTTをはじめ通信事業者が築いてきた、設備を回転させることによって利益を生む収益モデルを根底から揺さぶる結果をもたらした。
これまで収益源だった回線ビジネスは、過剰ともいえるインフラ投資とブロードバンド化で1回線当たりの単価が大幅に下落。加えて、専用線よりも安価にネットワークを構築できるIPへの移行が急速に進み、もはや単一のビジネスは成り立たなくなっている。
とりわけ、IT武装に積極的な企業向けの通信ビジネスでは、インフラだけでなく、それに付随したさまざまなサービスやソリューションをワンストップで提供できない事業者は、市場から退出を迫られるとさえいわれている。
今回、IIJとパワードコムが提携に踏み切る背景には、中長期的には電力系通信会社がリーダーシップをとってNTTグループの対抗軸になるといった思惑があるものの、まず両社の経営資源を最大限に生かし、安定した成長が期待できる企業向けデータ通信分野で勝ち組に入るといったことがある。
実際に両社の2001年度の収益は、最終損益で大幅な赤字を計上。必ずしも経営基盤が盤石とは言い難い。
インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)事業から企業向けデータ通信へ特化する戦略をとっているIIJは、大手通信会社の低価格攻勢と営業パワーの前に劣勢に立っている。
今回の提携には、IIJ系のデータ通信会社であるクロスウェイブコミュニケーションズ(CWC)も加わる見通しだが、インフラ投資が重く、こちらも慢性的な赤字経営が続いている。CWCにはトヨタ自動車やソニーも出資しているが、関係者によると「両社とも、CWCの追加投資に難色を示している」とされ、IIJがパワードコムに秋波を送った要因ともいわれる。
一方、01年10月、電力系通信会社3社のデータ通信事業が統合して発足したパワードコムは、光ファイバー網の保有では、NTTグループに迫る規模をもつが、その豊富なインフラを十分に生かし切れていない。しかも、目まぐるしく変化する通信業界で、常に時代を先取りするサービスを開発・提供するには、独自の事業展開では限界が生じていた。
●事業運営の一本化目指す
両社は今後、IIJ、CWCが強みとする広域LANサービスやコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)事業をパワードコムのインフラ上で構築するといった個別事業での連携を進めていく。
同時に「事業運営の一本化」を目指し、資本を含めた完全統合の可能性も探る。
問題は、果たして両社の歯車がかみ合うのかということだ。実際、7月18日に東京都内で開かれた両社の提携交渉開始の発表会見で、鈴木IIJ社長の暗に電力系通信会社の技術力不足を卑下するような発言に、種市パワードコム社長が顔をしかめるといった場面が何度もあった。
人一倍自尊心が強く、ある意味でワンマン的に物事を進めてきた鈴木IIJ社長に対し、組織を重んじる電力系通信会社の風土がなじめるのか。結論は12月末に出る。
NTTグループの対抗軸誕生へ――などとセンセーショナルに報じられたインターネットイニシアティブ(IIJ、鈴木幸一社長)と、電力系企業向けデータ通信会社、パワードコム(種市健社長)との経営統合を視野に入れた提携交渉。だが「日本のデータ通信産業のリーダーシップをとる」(鈴木IIJ社長)といった表面的な華やかさとは裏腹に、両社とも赤字解消の見通しが立たないなかで、危機感が日増しに強まっていたのも確かだ。米国の大手長距離通信会社の破たんに代表されるように、情報通信の世界では単一の事業形態ではもはやビジネスが成立しなくなっている。それだけに、今回の提携は勝ち組に入れるかどうかの“最後の賭け”ともいえそうだ。
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