その他
ナスダック・ジャパン、市場から撤退 上場会社への影響は甚大
2002/09/02 21:12
週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載
「ナスダック」が日本から消える――。ナスダック・ジャパン(NJ)市場の営業・システム開発会社「ナスダック・ジャパン」と、NJ市場を運営する大阪証券取引所は8月16日、提携を10月15日に解消することで合意したと発表した。2000年6月の市場開設から、わずか2年余りの撤退劇だった。市場自体は存続するが、名称は「ジャパン・ニュー・マーケット」(仮称)などに変わる。米ナスダックは大証に、「上場企業は02年末で1000社、05年末までに2000社を超える」と“バラ色の未来”を語っていたが、現実の上場会社は撤退発表時に98社。夢は、はかなくも破れた。(村田知哉●取材/文)
安易な撤退に怒りの声も
■他市場への移籍進む?
米ナスダックを運営するナスダック・ストック・マーケットは、日本撤退について、「経済や市場環境の変化で事業継続が困難になり、営業活動を停止せざるをえなくなった」とコメントを発表したが、そこに関係者への謝罪はなかった。ある上場企業幹部は怒りをあらわにする。
「最初は大風呂敷を広げておいて、目先の利益が出なければ自分の都合だけでさっさと退散する。株式市場が『公器』という認識はあるのか」
というのも、ナスダックの撤退が避けられなくなった8月14日には、市場が混乱することを嫌った投資家からの売り注文が膨らみ、NJ市場のほぼ半数の銘柄が株価を落としたからだ。
前出の会社では、こうした事態を重く見て、ジャスダック(店頭)市場や東京証券取引所への移籍を検討し始めた。幹部が続ける。
「執ような営業に根負けしたというのもあるが、日米欧の市場が直結して国際的に資金調達できるということだったのでナスダックを選んだ。それができなくなったわけですから、ほかの市場に移ることになるでしょう。NJ社や大証と信頼関係が築けたわけでもありませんし…」
証券業界では、上場企業の4分の1程度がただちにほかの市場に移る意志があるといわれている。だが、「移籍できる企業はまだいい」と嘆くのは、ソフトバンクが出資する別の上場企業社員だ。
「ナスダックが日本に上陸した頃は、ソフトバンクが出資し、ナスダックに上場しているというだけで株価が上がった。でも、当社は、まだ赤字経営を続けています。ほかの市場の上場基準を満たしていませんので、移籍することもままなりません。今後、ソフトバンクが出資し、ナスダックから移れない企業は、それだけで投資家から『マイナス評価』されることになるでしょうね」
ナスダックは上場企業の不安を十分に払しょくしたわけではなさそうだ。立つ鳥が跡を濁した格好だ。
■影響大きいソフトバンク
NJ社の筆頭株主であるソフトバンクの孫正義社長にしても、ナスダックの意向を知った7月あたりから、ジャスダックを運営する日本証券業協会に市場合併を持ちかけ、福岡、名古屋の両取引所には大証に代わる提携先となってくれるよう説得するなど事態収拾に走り回った。だが、やはり、上場企業への説明は後回しになっているようだ。
ともあれ、ナスダック撤退にともなってNJ社は清算される。ソフトバンクは、NJ社に対する出資分およそ12億円などが回収できなくなった。
ソフトバンクにとって財務上の被害は大きくないかもしれないが、事業戦略ではかなりの影響を与えそうだ。ソフトバンク関係者は、こう言う。
「孫社長は、あおぞら銀行の保有株を売却する方向で検討していますが、ナスダックが撤退することで、ナスダック、あおぞら銀行と、『ベンチャー企業を育てるしくみ』と称した2社とのかかわりが消えることになります。孫社長にとってナスダック撤退は、金融事業をきれいさっぱり忘れ、『ヤフーBB』はじめ通信事業に専念する契機となるでしょう」
孫社長の真価が改めて問われる。
「ナスダック」が日本から消える――。ナスダック・ジャパン(NJ)市場の営業・システム開発会社「ナスダック・ジャパン」と、NJ市場を運営する大阪証券取引所は8月16日、提携を10月15日に解消することで合意したと発表した。2000年6月の市場開設から、わずか2年余りの撤退劇だった。市場自体は存続するが、名称は「ジャパン・ニュー・マーケット」(仮称)などに変わる。米ナスダックは大証に、「上場企業は02年末で1000社、05年末までに2000社を超える」と“バラ色の未来”を語っていたが、現実の上場会社は撤退発表時に98社。夢は、はかなくも破れた。(村田知哉●取材/文)
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