その他
どう売る“ブレードサーバー” 戦略を模索するベンダー、販社
2002/09/02 15:00
週刊BCN 2002年09月02日vol.955掲載
ブレードサーバーの売り方で模索が続いている。ブレードサーバーとは、ラック型の薄型1Uサーバーより省電力で、高密度な実装をしたサーバー。今年に入り、各ベンダーが相次いで販売を始めた。だが、1Uサーバーの低価格化が進むなか、ブレードサーバー1台あたりの割高感が強く、順調に立ち上がっているとは言い難い。さらに、データセンターの利用料も、数年前に比べ格段に下がっており、「あえて省電力・省スペース性を気にする必要はない」との声もある。果たしてブレードの将来性は? (安藤章司●取材/文)
新ソリューション創出がカギ
■メリットの認知度は低い、ブレードへの移行はこれから
100ラック1500台のサーバーの運用代行を手がけるイーツの清水義博社長は、「ブレードは検討しているが、利点が少ない」と打ち明ける。
「1999年頃のデータセンターは、1ラック(42U)当たりの家賃が月額50-100万円した。だが、今は月額10万円以下で借りられる。場所も電力も十分にあり、ブレードが省スペース・省電力と言われても、それほどコスト的な魅力を感じない。ブレードが今の半額になれば、ブレードにする利点が浮き出てくる」と話す。
1Uサーバー自体の価格も下がっており、安いものでは1台10万円強で購入できる。これに対しブレードは1台(枚)約20万円と高い。
システム販社もブレードの売り方に頭を悩ます。大塚商会マーケティング本部販売企画課の野田正夫係長は、「ブレードは、最低でも数十台単位で納入しないと利点が活きてこない。一般企業向けで、一度に同じ場所で20台、40台のサーバーを納品するケースは少なく、データセンター向けにまとめて納入する場合を除いては、売り方が明確でない」と話す。
キヤノン販売のコンピュータ商品企画部コンピュータビジネス企画課の鈴木徹課長代理は、「ブレードの立ち上がりは、まだまだこれから。売り方も明確に決まっているわけではない。ただし、サーバーがタワー型からラック型へと省スペース、省電力化したことを考えれば、ここ数年でラック型からブレード型へと、もう一歩、小型化することは十分に考えられる」と、小型化・省電力化はサーバーの発展方向に合致していると分析する。
コンパックコンピュータIAサーバ製品本部製品企画部の大内剛部長は、「5-6年前のサーバーは、タワー型が中心だった。だが、今では、ラック型の出荷台数が増え、タワー型とほぼ同じ数が出るようになった。これは、省スペースや運用管理がしやすい利点があるためで、将来的には、今の1Uサーバーの一部が、徐々にブレードに置き換わるのではないか」と予測する。
イーツの清水社長も「1Uサーバーを20台積み上げるより、20台収納できるブレード1台購入したほうが、管理が格段に容易になる。ブレードは基本設計が新しいため、遠隔操作での障害復旧能力が強く、この点では、高く評価できる。次の世代で、信頼性が増せば、1Uとの入れ換えが起こるのではないか」と話す。
調査会社IDCジャパンでは、06年のIAサーバー出荷台数約56万8000台のうち、ブレードが全体の21.1%を占め、IAサーバーの5台に1台はブレード化するという調査結果をまとめた。
日立製作所インターネットプラットフォーム事業部マーケティング部の福岡正晃課長代理は、「当社のIAサーバーのうち、1-2個のCPUを積んだローエンドサーバーの出荷比率は6-7割。06年までには、このうち半分がブレード化する可能性がある」と、ローエンドサーバーを中心にブレード化が進むものと考える。
■新たな使い方を模索、業界は新規市場に期待
だが、ブレードの値段を下げて、単に1Uサーバーの置き換わりとして売るのであれば、売り手にとっての利点はない。IAサーバー市場そのものにとっても1Uが減り、ブレードが増えたところで、全体のパイは変わらない。
これを受けて、ベンダー各社は、「1Uの代替ではなく、ブレードならではのソリューション」の開発に躍起になっている。
NECでは、ブレード1台にサーバー用CPUを2個搭載し、ブレードの高性能化を推進する。この分、3Uの筐体に収納できるブレードは6台までで、記憶装置(HDD)も別収納となる。他社の本体と記憶装置を合わせて20台収納できるのに比べて少ないものの、信頼性と処理性能を格段に高めた。これは、ローエンドの1Uサーバーの置き換えを想定しているのではなく、ブレードという機構をつかった新しい取り組みを模索するものである。
NECソリューションズクライアント・サーバ営業本部の山内久典本部長は、「メタフレームサーバーやグリッドコンピューティング、科学技術計算など、複数のサーバーを並列に並べて処理する、あるいは分散して処理するシステムにブレード機構を応用する。1Uサーバーの置き換えではなく、1Uサーバーではやりにくいことを、ブレードで簡単に処理できるようにする。ブレードならコスト削減能力も高く、管理もしやすい」と意気込む。
メタフレーム大手のシトリックス・システムズ・ジャパンマーケティング本部の竹内裕治シニアプロダクトマーケティングマネージャーは、「メタフレームのボトルネックは、サーバー側のCPUの処理能力に大きく左右される。これを解決するのに、CPUの性能を高める“スケールアップ”という手法でなく、CPUの数を増やす“スケールアウト”という手法が、今の主流」という。
「つまり、メタフレームを動かすサーバーを複数台並べたほうが、大きなサーバー1台より、費用対効果が良い。ただ、複数台サーバーを並べると、管理が難しくなる。この点、ブレードは最初から複数台を同時に動かすことを前提にしているアーキテクチャーがあり、メタフレームと相性がいい」と話す。
日本IBMシステム製品IAサーバー&PWS事業部の岩井淳文事業部長は、「ブレード複数台並べて並列・分散処理を想定するなら、OSをすべてLinuxにすれば割高感を緩和できる。問題は、Linuxで動くソリューションが揃えられるかどうかだろう」と指摘する。
日立製作所の福岡課長代理は、「ブレードならではのソリューションを編み出せるかどうかが課題。それが、メタフレームなのかグリッドなのか、あるいは他のものなのかは、現在模索途中」と話す。
ブレードが、単なる1Uサーバーの置き換えに終わるのか、あるいは並列・分散処理に適したソリューションを足かがりにして、新規市場を創出するアーキテクチャーに発展させることができるのか。ベンダー、システム販社の取り組みに期待したい。
ブレードサーバーの売り方で模索が続いている。ブレードサーバーとは、ラック型の薄型1Uサーバーより省電力で、高密度な実装をしたサーバー。今年に入り、各ベンダーが相次いで販売を始めた。だが、1Uサーバーの低価格化が進むなか、ブレードサーバー1台あたりの割高感が強く、順調に立ち上がっているとは言い難い。さらに、データセンターの利用料も、数年前に比べ格段に下がっており、「あえて省電力・省スペース性を気にする必要はない」との声もある。果たしてブレードの将来性は? (安藤章司●取材/文)
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