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フリーソフト化するCAD商品 競争力面で厳しい国内メーカー シー・ピー・ユーの「KING・CAD」、無料に
2002/10/14 15:00
週刊BCN 2002年10月14日vol.961掲載
低迷する経済環境のなかで、日本のCAD産業にはどのような回復プランがあるのか。製造立国日本を象徴して右肩上がりの成長を遂げてきたCAD業界だが、国際競争が激化するなか、回復への糸口が見えない。かつて大きな話題となり、とっくに解決したかに見えるフリーソフトCADの問題にしても、実は何も解決しないまま現在に至っている。そんななか、建築CADメーカーのシー・ピー・ユーが今月から、2次元汎用CADパッケージ「KING・CAD」をフリーソフトとして、無料配布を始めた。フリーソフトが一般化した今、大きな話題にはなっていないが、無視できない多くの問題をはらんでいる。
フリー化は時代の趨勢
誰もが無料で自由に使用できるフリーソフトがインターネット社会に果たした役割はいまさら言うまでもない。このフリーソフトがCAD分野で脚光を浴びるようになったのは1992年。「JW_CAD」をはじめとする優れたプロダクトがパソコン通信で登場したことに始まる。翌93年にはCADソフトを添付した解説本が登場し、フリーソフトCADは一気にブレイクした。
これにCADベンダーは一斉に反発。「自分たちが築き上げてきたCAD市場が“市場”ではなくなる」、「無料CADとは言いながら、これをプロモートして利益を上げているのはおかしい」などと反論した。
しかし、ユーザーの希望に合致したフリーソフトCADの進出を食い止めるほどの論拠はなく、94年には「JW_CAD」がフリーソフト大賞を受賞するなど、フリーCADが時代の趨勢となった。
ネット経由でユーザー同士が教え合うサポート環境がフリーCADの最大のポイントで、メーカーのサポート環境に飽き足らないユーザーの心を捉えた。だが、このフリーCADは、その後間もなく登場した32ビットウィンドウズへの対応が遅れたことにより、商品CADとの線引きが再び明らかになる。新OSへの対応や3次元対応など、CADベンダーは技術面で優位性を示すことによって“プロの意地”を見せた。
これに対し、遅ればせながらフリーCADのウィンドウズ対応も進展する。昨年から今年にかけてウィンドウズ対応プロダクトも安定を見せ、フリーCADもようやくウィンドウズの時代に入った。つまり汎用2次元というレベルにおいては、再びフリーCADが全盛になる可能性がある。
今回の「KING・CAD」のフリー化は、このようなタイミングを見計らったものであり、現在の商品そのものをフリー化するのはCAD業界でも初のケースとなる。つまり、汎用2次元CADは、もはや有償の時代ではないとメーカー自身が宣言したことになる。この意味は決して小さくない。
今回の発表について競合他社は静観の構えだが、2次元がダメなら3次元があると簡単に言えないところに大きな問題がある。日本がフリーCADに関心を奪われている間に、世界は変化した。
将来が見えないCADソフト市場
CADプロダクトとして、3次元は2次元と違う世界であることは広く知られており、2次元から3次元への流れは必ずしも必然ではない。しかし、3次元が一般化するようになると、CADの関心は3次元に集中する。国際市場では、CADはすでに3次元を意味する言葉であり、2次元は3次元の一要素であるとの認識が一般的だ。
ところが、3次元分野で世界に通じる国産メーカーはない。今後の国際競争を考えるとかなり厳しい状況にある。これは企業体力や技術力によるものだが、3次元への先行投資が許されなかった2次元ビジネスにも遠因がある。
ユーザーにとってフリーソフトは有り難いが、どの分野でも無料がベストということであれば、ソフトは産業として成立しない。この問題をなおざりにしてきたツケは大きい。今回の発表は、今後3次元で世界と戦うメーカーとしての決意であり、警鐘であるように見える。
低迷する経済環境のなかで、日本のCAD産業にはどのような回復プランがあるのか。製造立国日本を象徴して右肩上がりの成長を遂げてきたCAD業界だが、国際競争が激化するなか、回復への糸口が見えない。かつて大きな話題となり、とっくに解決したかに見えるフリーソフトCADの問題にしても、実は何も解決しないまま現在に至っている。そんななか、建築CADメーカーのシー・ピー・ユーが今月から、2次元汎用CADパッケージ「KING・CAD」をフリーソフトとして、無料配布を始めた。フリーソフトが一般化した今、大きな話題にはなっていないが、無視できない多くの問題をはらんでいる。
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