その他
既存LANでSANを実現 iSCSIの最終仕様固まる
2002/11/11 15:00
週刊BCN 2002年11月11日vol.965掲載
iSCSI市場が本格的に立ち上がる。iSCSIとは、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)を安価に構築できるIPベースの接続規格で、年内にも最終的な仕様が固まる。iSCSIはここ2年間、規格統一に向けた協議を続けたものの、ベンダー間の利害が絡み合い長期化。今年9月、ようやく最終仕様のドラフトが完成し、各社一斉に製品化へ向けて動き出した。来年以降、iSCSI関連の製品が一気に増える見通しだ。
ストレージ市場に“革新規格”登場
分散したストレージを統合するSANは、「年率160%で伸び、2006年には約3500億円市場に拡大し、企業ストレージの主流になる」とNECでは予測する。今回、規格がまとまったiSCSIは、既存のLAN(イーサネット)の設備をそのまま流用することで、安価にSANが組めるのが売り。安く、遠くへデータを伝送できるイーサネットの強みも活きる。
アダプテックは昨年度(02年3月期)、iSCSIに強いプラタスコミュニケーションズを買収し、iSCSI関連だけで2億ドル(約240億円)を投資。ボブ・スティーブンス社長は、「今後、急成長するiSCSI分野で、必ずトップ企業になる」と意気込む。サン・マイクロシステムズも、iSCSI技術で先行するパイナスを買収する方針を打ち出しており、iSCSI分野における企業買収が活発化している。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の佐野正和・ストレージ・システム製品事業部主任ソリューション・スペシャリストは、「iSCSI対応のストレージが普及すれば、極端な話、秋葉原で売っているLAN用のスイッチでSANが組める。従来のSAN専用の接続方式であるファイバチャネル(FC=毎秒2ギガビット)用の機器に比べれば、数十分の1の安さだが、速度が遅いのが欠点。しかし、部門導入や中小企業向けのSAN市場を切り拓くためには、遅くても“安い”ということが逆に強みになる」と予測する。
SAN向けの大型ストレージベンダーは、日本IBM、日立製作所、EMCなど数社に限られている。だが、イーサネット上でSCSI制御コマンドを伝送するiSCSI規格の登場で、数百、数千社あると言われるネットワークベンダーがSAN市場に参入し、一気に価格を押し下げることも十分にあり得る。本来高価だった毎秒100メガビットのLANカードの価格を1000円にまで押し下げたネットワークベンダーの実績を考えれば、あながち的外れではない。
日本ネットワーク・アプライアンスの鈴木康正社長は、「コンピュータベンダーの独壇場だったストレージに対し、ネットワーク側からの挑戦が始まった。巨大なデータセンターにストレージが集約し、iSCSIでメトロポリタンネットワークを構築するという将来像も描ける」と分析する。
NECソリューションズの山田忠治・システムファイル事業部第二技術部技術エキスパートは、「イーサネットは決して遅くない。毎秒10ギガビットが登場し、数年後には100ギガビットに増えるのはほぼ確実。既存ネットワークとの相互接続性と拡張性を考えれば、汎用的なイーサネットに一日の長がある」と指摘する。
日立製作所の中野俊夫・RAIDシステム事業部製品企画部長は、「速さだけでは、FCとイーサネットはほぼ互角。イーサの強みは、東京・大阪間など長距離を飛ばせる点にある。災害対策で東京のデータを24時間無停止で大阪へ待避(バックアップ)させることも、従来の数分の1以下の価格で実現できる」と話す。
長距離回線にFCを走らせることは困難だが、IP(イーサネット)だったら安い回線で伝送できる。
実際には、ハードのiSCSI対応だけでなく、OSやミドルウェア、アプリケーションの対応、広域化におけるセキュリティ問題など、iSCSIの普及に向けて解決しなければならない課題も多い。しかし、IP化の大きな流れのなかで、「SANのIP化も必然的な帰結」との見方が優勢だ。
iSCSI市場が本格的に立ち上がる。iSCSIとは、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)を安価に構築できるIPベースの接続規格で、年内にも最終的な仕様が固まる。iSCSIはここ2年間、規格統一に向けた協議を続けたものの、ベンダー間の利害が絡み合い長期化。今年9月、ようやく最終仕様のドラフトが完成し、各社一斉に製品化へ向けて動き出した。来年以降、iSCSI関連の製品が一気に増える見通しだ。
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