その他
マイクロソフトの全国IT推進計画 「まず芽吹かせるところから」
2003/01/13 21:12
週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載
「地方に出てみると、中小企業ビジネスにおいてはほとんど他社とバッティングするところがない。中小企業市場は、マーケットが出来上がっていない状況だ。なんとしても、このマーケットをつくっていきたい」――。マイクロソフトの眞柄泰利取締役(OEM営業本部、ゼネラルビジネス統括本部、東日本・西日本営業本部担当)は、同社が取り組む中小企業向けビジネスについてこう語る。同社は昨年、中小企業および中堅事業所向け施策として「全国IT推進計画」を発表。同時に「マイクロソフトIT体験キャラバン」として、キャラバンカーで全国のユーザーの元に出向くなど、草の根活動的な施策を展開している。マイクロソフトがここまで、力を入れて中小企業市場の開拓に取り組む狙いはどこにあるのか、そしてビジネスの成果はどのようにあがっていくのか。
中小企業市場の開拓を本格化
■今年は積極的にパートナー募集、まずはマーケットづくりから
マイクロソフトの中小企業市場に対する取り組みは、懇切丁寧すぎると思えるほど徹底している。それは販売パートナーとの関係を見てもよくわかる。
パートナーであるIT推進全国会の参加メンバーは、準備段階では声をかけたところを含め、スタート時点で197事業所。昨年12月中旬までの段階で250事業所となったが、思いのほか、パートナーの増加数が少ない。
これは、「昨年は、オープンなパートナー募集を行っていなかった。なぜなら、例えばサーバーを販売する場合はきちんとサーバーを売る力があるとお互いが了解した上で、パートナーになってもらったから」(眞柄取締役)という。
その結果、「1年後には97%のメンバーが引き続きパートナーとなることに賛同してくれた。一緒にビジネスを行ってきたパートナーは、成功や失敗などさまざまな経験を積んで、これまでにはない密接な関係を築くことができた」と語る。
同社では、今年に入りオープンにパートナー募集を行い、「今年6月末までに、パートナーの数を500にまで拡大したい」と、ようやくパートナー拡大に力を入れ始めた。
また、IT推進全国会のメンバーに対しては、「中小企業市場を開拓していくためには、単に製品を売ろうと考えるのではなく、ユーザーとなる中小企業側の経営にプラスになるビジネスコンサルティングをきちんと行うことが最も適切。中小企業の案件だから、売り上げもそう大きくない。手離れよくビジネスを進めていこうと考えてしまうのは間違い。もちろん、ビジネスとして考えると、ある程度の効率も必要だが、時間と戦いながらビジネスコンサルを行っていくことが適切」と指摘する。
■ダイレクトメールも工夫、ノウハウを積み重ねて市場を開拓
なぜ、そこまで時間をかけ、中小企業市場を開拓していくことにこだわるのか。
眞柄取締役はその疑問にこう答える。「これまでは、中小企業市場の開拓方法としていくつもの製品を投入してきた。しかし、機能の優位性だけをアピールして導入に結びつけるのには限界がある。機能の優位性を理解できる人はすでになんらかの製品を購入している。これまでリーチできていなかった層に製品を導入してもらうためには、従来のやり方では無理。マーケットをつくるところから進めて行かなければならない」。
一見時間がかかりすぎるように見えるこの取り組みこそ、次のビジネスを拡大する芽になるとマイクロソフトでは考えているのである。
眞柄取締役は、「実は、当社の社長である阿多(親市氏)に、今後3年間はこの事業を担当させて欲しいと直訴した」と冗談交じりに話す。「市場を育てるという視点ではそれくらい時間がかかっても当然」と、あえて異例の直訴をしたのだという。
「時間をかけたからこそ、実現できたものもある」と、石井青樹・ゼネラルビジネス統括本部ゼネラルビジネス営業本部本部長は、中堅企業に対して送っているダイレクトメールを取り出した。
そのダイレクトメールは、ウェブサイトなどにアクセスがあったユーザーに送付しているもの。その中にはユーザーが興味をもっていると思われる資料が入っている。
「これだけ情報が氾濫していると、自分が欲しい内容になかなか行き着かないというのがユーザー側のジレンマ。ユーザーが求める内容の資料をきちんと送るという作業が、ユーザーとのパイプを強くするノウハウの1つ」という。
もちろんそのためには、データプロファイリングをきちんととり、その分析結果によってユーザーをセグメント化していくことが必要だ。
「はっきり言って、一朝一夕に出来上がったものではない。当初は失敗もあった。2年という年月をかけてそれらのノウハウを蓄積したからこそ今の形になった」と石井本部長は苦笑いする。
ダイレクトメールには、資料だけでなく、メモ帳や携帯電話のストラップなど、ささやかなおまけが入っていることもノウハウのひとつ。
「資料だけではなく、おまけをつけることで、封を開いてもらえる率が高くなる。つまり、それだけ中身を真剣に検討してもらえるようになる」のだという。
眞柄取締役は、「実際に全国を回ったが、ITベンダーは企業規模の大きなエンタープライズマーケットを指向する傾向が強いためか、中小企業市場で他社とバッティングすることがほとんどなかった」と指摘する。
「地方の市場でも、e-Japan計画により自治体向けビジネスなどが脚光を浴び、目線が民需に行っていないところが増えているように感じる。“孤高のマイクロソフト”と呼ばれても仕方ないかも」と苦笑いするが、予想以上に中小企業マーケットが開拓されていないと感じているようだ。
新しい市場を開拓してくための試みに挑戦し、失敗を繰り返して、マイクロソフト自身のスキルは着実に向上しているように見える。しかし、実際に中小企業市場でサーバーの売れ行きが大きく拡大するといった成果がまだあらわれていないことを考えると、全国IT推進計画が成功を収めたとは言い切れない。
オープンにIT推進全国会のパートナーの募集を始めた今年、これまで蓄積してきたノウハウをどれだけ生かして、新しい中小企業向けビジネスをつくり上げるのか、1つの成果が求められる時期に入っている。
「地方に出てみると、中小企業ビジネスにおいてはほとんど他社とバッティングするところがない。中小企業市場は、マーケットが出来上がっていない状況だ。なんとしても、このマーケットをつくっていきたい」――。マイクロソフトの眞柄泰利取締役(OEM営業本部、ゼネラルビジネス統括本部、東日本・西日本営業本部担当)は、同社が取り組む中小企業向けビジネスについてこう語る。同社は昨年、中小企業および中堅事業所向け施策として「全国IT推進計画」を発表。同時に「マイクロソフトIT体験キャラバン」として、キャラバンカーで全国のユーザーの元に出向くなど、草の根活動的な施策を展開している。マイクロソフトがここまで、力を入れて中小企業市場の開拓に取り組む狙いはどこにあるのか、そしてビジネスの成果はどのようにあがっていくのか。
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