その他
「IT投資促進税制」に期待高まる 減税規模は6000億円超
2003/01/20 15:00
週刊BCN 2003年01月20日vol.974掲載
IT投資に対する大規模な減税制度が導入される見通しとなった。政府は2003年度の税制改正で向こう3年間にわたる「IT投資促進税制」を創設。IT投資の加速を促し、景気浮揚につなげたい意向だ。減税規模は6000億円超。過去に例をみない規模だけに、IT業界からの期待も自ずと高まる。これまでもIT投資に対する減税措置はなかったわけではないが、いざ活用しようとなると、手続き面などでハードルは高かった。このため利用が思うよう進まず、減税制度自体を知らない企業も多かった。今回の減税制度は、そうした問題にメスを入れた。これを市場活性化の起爆剤につなげられるかどうかは、IT業界の努力にもかかっている。(木村剛士●取材/文)
市場活性化の起爆剤に
■取得価格の10%が税額控除、先行減税で即効性に期待
IT投資促進税制とは――。簡単にいえば、企業が自社のIT投資に踏み切ろうとする際に、企業規模の大小を問わず、一律に税制上の優遇措置が受けられる制度だ。
具体的にはパソコンやサーバー、プリンタなどはもとより、ルータやデジタル複写機、インターネット電話、さらには無形固定資産のソフトウェアをも対象に、取得価格の10%が税額控除される。また、業績不振で減税の恩恵が受けにくい企業であっても、対象となるIT取得資産の50%が特別償却として認められる。控除か特別償却か、どちらを選択するかは企業側の自由だ。
加えて、中堅・中小企業のIT投資がリース中心であることを踏まえ、資本金3億円以下の企業に対しては、税額控除の対象にリース案件(料金総額の60%)も含められる。
IT投資促進税制を活用すれば、例えば2億円のサーバーを購入した際、税額控除を選択すると、投資額の10%に相当する2000万円が税額控除される勘定となる。100億円規模の投資なら10億円が戻るわけだ。減税額の上限は、本来支払うべき法人税額の20%と、これも高率の設定となっており、限度額超過分は1年分だけ繰り越すことができる。
減税制度の適用は、この通常国会で認められれば、今年1月1日にさかのぼって実施される。本来なら03年度の税制改正として、今年4月からの適用になるところだが、前倒しの意図について経済産業省商務情報政策局情報処理振興課の河野太志課長補佐は、「“経済有事”の状況下、1日でも早く手を打つ必要がある。4月を待っていると買い控えが生じる恐れもあり、先行減税でなければ効果がない」と説明する。
IT投資に活用できる減税措置が、これまでに存在しなかったわけではない。特定情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)や中小企業投資促進税制がそれにあたる。だが、その波及効果は限定的だった。例えば、中小企業投資促進税制では、適用対象は資本金1億円以下の中堅・中小企業が前提。しかも税額控除率は7%、特別償却率は30%にとどまり、この制度もソフトウェアは対象から外れていた。
これらに比べ、今回のIT投資促進税制は減税規模はもとより、利用できる企業、適応される製品、利用できる内容が格段に広がった。すべての企業が利用でき、ソフトウェアに対する投資も対象となり、ハードウェアの対象範囲も広がった。
経産省の河野課長補佐は、「これまでの中小企業投資促進税制は1000億円規模にとどまっていた。それに比べると6000億円超は相当な額。米国では95-96年からIT投資が増え、新資本の蓄積に結びついた。今回の減税が日本経済に対し、投資が投資を呼ぶ“発火点”になればと期待したい」と語る。
■「かなりのインパクトがある」、業界には販促チャンス
一方、IT業界の反応はどうか。「今回はかなり大きなインパクトがある」(西垣浩司・NEC社長)、「非常に期待が持てる。前回とは比べられない適応範囲の広さなので、提案さえしっかりできれば、拡販に大いに活用できる」(長野佳久・富士通常務理事マーケティング本部長)、「減税規模が相当なだけに業界が寄せる期待も大きい」(松田章・三菱電機取締役インフォメーションシステム事業推進本部本部長)と、否が応にも期待は高まっている様子だ。
今後、IT業界に課せられた課題は、新たに用意された大規模減税という“環境”をいかに実需に結びつけていくかであろう。これまでの減税制度が広く利用されなかった最たる理由は、「ユーザーが存在すら知らなかった」(大手ITベンダー)に尽きる。なぜ、それほど認知されていなかったのか。
ユーザーに近いある関係者は、「従来は減税措置の手続きを踏もうとすると、大臣認定の申請が必要で、それにともなう各種証明書を用意する必要があった。中堅・中小企業の経営者、経理担当者にとっては、あまりに負担だった」と打ち明ける。
また、あるベンダー幹部は、パソコン減税に関して「減税という販促チャンスにも関わらず、ソフトウェアが含まれないために、担当者レベルで提案がしにくかった」という。今回の減税措置は、そうした問題のクリアにも主眼を置いている。
経産省の河野課長補佐によると、「適用範囲は広く、申請にあたっての各種証明書添付の必要もない。通常の税額控除のように、税務署で申告すれば減税措置が受けられる」ようになっており、「まずは税理士や会計士、ITコーディネータらに相談して欲しい」と呼びかける。
今回の税制改正にあたり、ソフトウェアを適用対象に入れてもらえるよう働きかけていた日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA)の川島正夫会長(ピー・シー・エー会長)も、「前回の広まり具合が悪かったことを受けて、セミナーを開催するなど、幅広く伝えていけるよう努力していく」と語る。
富士通では、「現段階ではパートナー企業のエンドユーザーに接する営業マンの約3分の1は、新減税の存在自体も知らないのではないだろうか。IT投資促進税制に関する小冊子の作成や、ウェブでの情報公開など積極的な普及活動に力を入れる」(長野常務理事)という。
経産省では、今回の税制措置について、「短期的にはデフレの撲滅と経済浮揚の効果を期待している。また、長期的には、将来の日本の活力につながる政策」と位置づける。
今回の減税措置により、大手企業のシステム更新が促されると同時に、中堅・中小企業のIT化に一気に火が点き、国全体でITレベルの底上げが図られれば、政府がe-Japan戦略の最終目標に掲げる「最先端IT国家」への道筋も大きく拓けてくることは間違いない。
IT投資に対する大規模な減税制度が導入される見通しとなった。政府は2003年度の税制改正で向こう3年間にわたる「IT投資促進税制」を創設。IT投資の加速を促し、景気浮揚につなげたい意向だ。減税規模は6000億円超。過去に例をみない規模だけに、IT業界からの期待も自ずと高まる。これまでもIT投資に対する減税措置はなかったわけではないが、いざ活用しようとなると、手続き面などでハードルは高かった。このため利用が思うよう進まず、減税制度自体を知らない企業も多かった。今回の減税制度は、そうした問題にメスを入れた。これを市場活性化の起爆剤につなげられるかどうかは、IT業界の努力にもかかっている。(木村剛士●取材/文)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…