その他
ソフト開発と下請法
2003/01/27 15:00
週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載
本紙973号1面で、大手ベンダーが系列のソフト開発会社に対し、発注した金額の10―15%を天引きしている問題を報じた。これは、公正取引委員会が非常に重要視している問題でもある。公取委の調査によれば、コンピュータメーカーとの取り引きにおいて、ソフト開発会社の12・3%が「代金の減額の要請」を経験したとし、14・6%が「著しく低い対価での取引の要請」を受けたことがあると答えている。代金減額の要請とは、メーカーなどの発注者が一方的に「今後、単価を10%引き下げる」と通告し、すでに完成したソフトの開発代金についても10%減額して支払ったというものだ。(安藤章司●取材・文)
古くて新しい問題
また、ソフト開発会社の38・3%が、コンピュータメーカーに収益の「50%以上依存している」とし、21・0%が「30%以上50%未満依存している」という。30%以上の収益をメーカーに依存している割合は実に6割近い。これらのソフト会社が、メーカーの業績不振を理由に10%の蕫天引き﨟を食らった場合、倒産の危険もある。では、これら下請けイジメとの印象を受ける行為を取り締まることはできるのか。実は、現行法でソフト会社を法的に守ることはできない。
中小企業庁の菅原敏之・取引課下請代金検査官は、「ソフト開発などの受託業者が、取引上の地位が優位である委託者から不公平な取引を要請された場合、現行では下請代金支払遅延等防止法(下請法)で対処している。だが、この法律の対象範囲は1956年の制定当時から製造業を中心とする下請取引に限定されており、ソフト開発には適用できない」と話す。つまり、法による強制力が働かないのだ。
当面は、下請法と独占禁止法の拡大解釈による蕫柔軟な運用﨟で、ソフト開発会社など受託業者が、著しく不利な取引を強要されないよう指導する方針を公取委は打ち出す。この点について、企業取引に詳しい辛島睦弁護士は、「製造業だけにしか効力がない下請法問題は、従来から指摘されている古くて新しい問題」だと話す。中小企業庁の梅原真士・取引課企画調整係長も、「ソフト業界みずからが世論を盛り上げながら、立法化へ結びつけなければ、われわれも動きにくい」と打ち明ける。
公取委は、「ルールある競争社会の推進」の名の下に、昨年9月以降、電子情報技術産業協会(JEITA)、情報サービス産業協会(JISA)、日本ソフトウェア産業協会、首都圏ソフトウェア協同組合に聞き取り調査を実施した。調査に応じた日本ソフトウェア産業協会の山田晃司会長は、「誰が見ても採算割れが明らかな価格でソフトをつくらせるのは問題だ」と語る。
しかし、「法律で一律に保護しても根本的な解決にならない。国内の未成熟な小規模ソフト会社を過保護にして、世界市場に乗り出す中堅・大手ソフト会社の足を引っ張るのもマイナス面が大きい」と話す。つまり、法律で縛りを入れても、発注者側のメーカーや中堅・大手ソフト会社は、海外への発注比率を増やし、製造業のような空洞化を招くだけだと危惧する。とはいえ、一方的に不利な取り引きを野放しにはできない。われわれ業界が主体となって、ソフト産業の公正取引問題の解決に向けた具体的な行動を起こさなければならない。
本紙973号1面で、大手ベンダーが系列のソフト開発会社に対し、発注した金額の10―15%を天引きしている問題を報じた。これは、公正取引委員会が非常に重要視している問題でもある。公取委の調査によれば、コンピュータメーカーとの取り引きにおいて、ソフト開発会社の12・3%が「代金の減額の要請」を経験したとし、14・6%が「著しく低い対価での取引の要請」を受けたことがあると答えている。代金減額の要請とは、メーカーなどの発注者が一方的に「今後、単価を10%引き下げる」と通告し、すでに完成したソフトの開発代金についても10%減額して支払ったというものだ。(安藤章司●取材・文)
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