その他
公正取引委員会 改正下請法案、今国会へ
2003/02/03 15:00
週刊BCN 2003年02月03日vol.976掲載
公正取引委員会は、この3月にも、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正案を国会に提出する。法案が通れば、早ければ来年4月にも施行される見通し。改正下請法では、新たにソフト・サービスが適用範囲に加えられる。同法が1956年に制定されて以来、新しく適用範囲を広げるのは、今回が初めて。ここ数年、大手コンピュータベンダーや情報サービス事業者が優位的立場を利用し、中小ソフト開発会社などに対して不当な取り引きを強要する事例が急増したため、公取委は下請法で規制を加えることにした。これまで、下請法は製造業のみに適用されており、ソフトウェアの取り引きは対象外だった。
1956年以来の大幅見直し
ソフト発注における「下請けいじめ」を見かねて、公取委が動き始めた。00年の公取委による実態調査では、ソフト開発会社の12.3%が代金減額の強要を経験し、14.6%が著しく低い対価で開発するよう要請されたと答えた。公取委の高橋省三・取引部企業取引課長は、「前回の調査から2年経った今は、事態はさらに悪化している」と分析する。
公取委は、97年にも同様の調査を実施したが、「下請法を適用するほどではない」と判断。ソフト・サービスを同法の規制対象にすることを見送った経緯がある。だが、ここ5年あまりで状況は急速に悪化。情報サービス産業の伸び率は、「昨年で頭打ち」(経済産業省商務情報政策局情報処理振興課・河野太志課長補佐)になるなど、業界が下降線を辿り、下請けへのしわ寄せが一気に高まった。
BCN本紙が入手した情報でも、富士通をはじめとする大手ベンダーが、系列のソフト開発会社への発注金額を、支払いの段階で10%天引きしている実態が明らかになっている。
下請法の改正にあたり、システム開発大手で組織する情報サービス産業協会(JISA)は、「もともと製造業向けの下請法では、情報サービス取引の実態に合わない」などと猛烈に反発。日本ソフトウエア産業協会(NSA)の山田晃司会長も、「契約後の下請け代金の天引きや一方的な仕様変更は『ある』」と認めつつも、「未成熟の中小企業事業者を、やみくもに保護するのは問題だ。下請けの多重構造のなかで、中間に挟まっている中堅ソフト会社こそが、情報サービス産業の競争力の源泉である」と、一部でJISAに同調する。
また、国内の中小ソフト会社を保護することで、元請け事業者が発注先を中国など海外に移して、空洞化が進むとの懸念もある。これについて、公取委の高橋課長は、「今回、下請法を改正しなくとも、中国への産業集積は加速するわけで、これが改正しない理由にはならない。改正下請法が“ダメ押し”するというのも論点がずれている」と反論する。
一方、首都圏コンピュータ技術者協同組合の横尾良明理事長は、改正下請法を歓迎する。「ソフト業界も、ようやく1人前の取引ルールができる。ルールができたのを機に、ソフトウェアの電子商取引をもっと活発化すべき。これまで、取引ルールを保護する法律が不整備だったため、ソフト受発注の電子商取引は発展しないままだった」と指摘する。
日本情報技術取引所の二上秀昭理事長は、「改正下請法だけでは、子や孫、ひ孫請けまで階層が深い情報サービス産業特有の多重構造をカバーできない」としながらも、「一定の枠組みができることには賛成する」と話す。
企業取引に詳しい滝谷国際経営事務所の滝谷敬一郎所長は、二上理事長に「この際、『日本情報技術取引所』だけでなく、『国際情報技術取引所』をつくるべき」と、新しくできる取引ルールに則った国際的な取引所に発展すべきだと説く。
取引ルールは産業の基盤である。一方的に天引きしたり、買い叩かれたのでは産業の基盤は脆くなるばかりだ。電子商取引や国際情報技術取引所などの新しい発想も出てこない。改正下請法では、問題のごく一部が改善されるに過ぎないかもしれないが、それでも取引ルールが明文化されることの意味は大きい。
公正取引委員会は、この3月にも、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正案を国会に提出する。法案が通れば、早ければ来年4月にも施行される見通し。改正下請法では、新たにソフト・サービスが適用範囲に加えられる。同法が1956年に制定されて以来、新しく適用範囲を広げるのは、今回が初めて。ここ数年、大手コンピュータベンダーや情報サービス事業者が優位的立場を利用し、中小ソフト開発会社などに対して不当な取り引きを強要する事例が急増したため、公取委は下請法で規制を加えることにした。これまで、下請法は製造業のみに適用されており、ソフトウェアの取り引きは対象外だった。
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