その他
需要高まるIT資産管理ソフト 年率2ケタ増で急成長の企業も
2003/02/24 15:00
週刊BCN 2003年02月24日vol.979掲載
不正コピー対策を切り口に、IT資産管理ソフトの需要が増えつつある。同ソフトを提供するシステムインテグレータのなかには、ソフトのライセンス販売と組み合わせることで、需要を獲得するケースも出てきた。ソフトメーカーがライセンス管理の重要性を訴求するという傾向もみられる。IT資産管理ソフトのビジネスは、年率2ケタ増で成長しているシステムインテグレータが多い。各社とも、潜在需要が眠る市場としてビジネス拡大を見込み、ビジネス連鎖を視野に入れたアプローチで新規顧客を開拓していく。(佐相彰彦●取材/文)
不正コピー対策とセキュリティでビジネス拡大
■提案型営業で顧客を獲得、ライセンス販売と組み合わせる
IT資産管理ソフトは、ハードウェアの構成やパソコンの設定情報、ソフトウェアのバージョン情報、ライセンスの使用状況を取得でき、ソフトの社内統一や新規ソフトの導入調査、ソフトのライセンス管理、パソコンのリプレース調査など、少人数による運用管理を可能とする。導入企業にとっては、運用コストを削減できるツールだ。
最近では、不正コピー対策としてライセンスを管理するニーズが高まっており、資産管理ソフトを導入するケースが増加している。
ここ数年、不正コピーを行ったとして、多額の損害賠償を請求する訴訟が数多く提起されていることが増加要因の1つだ。
コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の調べによると、1998年5月から昨年11月までの累計で、損害賠償請求の和解成立件数は187件で、1件あたりの平均和解金額が1200万円という。
このため、システムインテグレータ各社は、マイクロソフトやアドビシステムズなどのソフトのライセンス販売と組み合わせる形で、提供するケースも出てきている。
ライセンス販売とIT資産管理ソフト提供を組み合わせたビジネスが主流のウチダスペクトラムでは、「市場でIT資産管理ソフトが増え、選択肢が多くなったことも、企業のライセンス管理に対する意識が高まったといえる。当社のビジネスが拡大することにもつながり、今年度の売上高は前年度比30%増になる見通し」(実本雅一・常務執行役員ソフトウェア・セールスグループ担当)と自信をみせる。
大塚商会では、クオリティのIT資産管理ソフト「QND Plus(キューエヌディー・プラス)」を活用し、同社独自のIT資産管理サービス「α(アルファ)アセットサービス」における「キューエヌディー・アルファ」として提供している。
北川達史・マーケティング本部テクニカル販売促進部課長代理は、「IT資産管理のビジネスは、年間50%増で推移している。ライセンス管理以外でもニーズが高い状況だが、パソコンが100台以上あればライセンス管理に大変な労力が必要となる。ライセンス販売と組み合わせたビジネスも視野に入れているのは確かだ」と話す。
キヤノン販売でも、「大企業では、社内にワードやエクセルなどのライセンス数がどれくらいあるのかを管理する重要性を認識していたが、これが中堅企業にも広がりつつある。ライセンス販売の際に、ライセンス管理の重要性を提案することでIT資産管理ソフトを拡販している」(石川計一・ソフト&サービス商品企画本部ソフトウェア商品企画部ソフトウェア商品企画第一課長)という。
同社では、導入前のコンサルティングや導入後の保守・サポートを含めた「IT管理システム構築サービス」を提供している。「昨年度は、前年度比で10%増だった。今後も2ケタ増で推移する」と意気込む。
■ビジネス連鎖を視野に入れ、新規顧客の開拓図る
一方、ソフトウェアメーカーがライセンス管理の重要性を訴求する動きがある。
アドビシステムズでは、資産管理に関する企業向けセミナーを積極的に実施している。「不正コピーを防ぐことで『アドビライセンスプログラム』の拡大につなげる」(増渕賢一郎・ライセンス企画担当マネージャー)ことを狙いとする。
マイクロソフトでは、ソフト管理担当者向けに「ライセンス・ソフトウェア管理ガイドブック」を配布。適切なソフト管理を促している。行木直之・ゼネラルビジネス統括本部ライセンスマーケティング部長は、「ソフトの過剰・寡少な購入は、企業にとってデメリットになる。効率的な管理が実現できるようガイドブックを作成した」と話す。
また、IT資産管理ソフトは不正コピー対策を切り口とした販売以外でも需要が多い状況にある。
大塚商会では、「中小企業の顧客企業では、セキュリティ管理強化のために導入するケースが多い」(北川課長代理)という。
キヤノン販売では、「ネットを見直すために、ディレクトリーサービスとの組み合わせで提供することもある」(石川課長)としている。
アルゴ21では、ASP形式のサービス「Asset On The Web(アセット・オン・ザ・ウェブ)」を提供しており、1000人以上の大規模企業を中心に3万クライアントの導入実績、売上高で約4000万円規模のビジネスを展開している。
伊藤邦幸・システムマネジメントサービス事業本部営業企画部長は、「IT資産管理は、企業に比較的アプローチしやすい分野でもある。このASPサービスを皮切りに、システムインテグレーションサービスの提案にもつなげることが可能。ほかのシステム構築との相乗効果により、来年度はクライアント数を30万件、約4億円の売上規模に引き上げる」と話す。
NECソフトでは、IT資産管理ソフト「ASSETSCAN(アセットスキャン)」のパッケージ販売で17万クライアント、同ソフトのASPサービス「netASSET SCAN(ネットアセットスキャン)」で1万クライアントという導入実績をもつ。
鈴木幹雄・ITソリューション事業部セキュリティソリューション部マネージャーは、「コンサルティングからパッケージ販売、ASPサービスまでのトータルな提案で大企業を中心に顧客企業を開拓してきた」と自負する。今後は、中小企業の開拓を視野に入れ、パッケージとASPを合わせて28万クライアントまで増やす構えだ。
IT資産管理ビジネスは、ビジネス連鎖を視野に入れた提供により、新規顧客を開拓できる可能性を秘めていると言えるだろう。
不正コピー対策を切り口に、IT資産管理ソフトの需要が増えつつある。同ソフトを提供するシステムインテグレータのなかには、ソフトのライセンス販売と組み合わせることで、需要を獲得するケースも出てきた。ソフトメーカーがライセンス管理の重要性を訴求するという傾向もみられる。IT資産管理ソフトのビジネスは、年率2ケタ増で成長しているシステムインテグレータが多い。各社とも、潜在需要が眠る市場としてビジネス拡大を見込み、ビジネス連鎖を視野に入れたアプローチで新規顧客を開拓していく。(佐相彰彦●取材/文)
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