その他
米英軍、イラクへの攻撃を開始
2003/03/24 15:00
週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載
米英軍は米東部時間3月19日(日本時間20日午前)、イラクに対する攻撃を開始した。これらを受け、海外拠点をもつ大手電機メーカーなどIT業界は、一斉に有事の対策を打ち出した。中でも、物流への影響を懸念する声が多く、ヒューレット・パッカード(HP)は「納期遅れの可能性も否定できない」とするほか、長期戦を心配する企業が目立った。戦闘は短期戦との見方が支配的だが、各社とも業績への影響など、事態を冷静に受け止めようとしている。(イラク情勢特別取材班●取材/文)
有事への対応を迫られるIT業界
輸送コスト、部材価格高騰の懸念高まる
■懸念される物流への影響
「どこに住んでいようが(戦争危機で)不確定要素が拡大している。顧客や社員が共に助け合うことが大切だ」――。米HPのカーリー・フィオリーナCEOは20日午前(日本時間)、攻撃開始前に社員に対し一斉にメールを配信、戦時下の冷静な対応を喚起した。攻撃開始で日本HPは、米国を含む海外出張の自粛を決定。これにより、「本来必要であった海外出張による会議や打ち合わせが延期になる」と、中長期的な悪影響を心配する。
同社がそれ以上に懸念するのは、輸送ルートの遮断などによる物流への影響だ。同社は5営業日でサーバーやパソコンを顧客の手元に届ける“速さが売り”のサービスを提供している手前、「万が一、部材調達が滞ると、納期が遅れる可能性も否定できない」という。
パソコンなどの納期10日以内を掲げるデルコンピュータなどでも、「顧客に迷惑がかからないことを前提とした対策は練っている」(デル)としているが、世界展開する企業では、輸送コストの増大などの影響を受ける可能性は高いものと思われる。NECは「基本的にアジア地域で販売する製品は、アジア地域内で部材を調達し、北米地域で販売する製品は、北米地域内で部材を調達するようにしている」ため、すぐに影響はないとしているが、「戦争が長引けば、物流への影響が出てくる」との見解を示す。
これに対し、パソコン専業のソーテックは「市場全体が冷え込むなど悪影響を受けるだろうが、コンピュータ業界としての物流や部材の調達は、少なくとも当社に限ってはない」とした上で、「戦争が1か月続いたとしても、業績を見直すまでの影響はない」と断言する。だが、「短期戦になれば影響は少ない」との判断が大勢を占めるなか、「1か月以上続くと予想の範囲を越える」という観測はIT業界全体に広がっている。
ネットワーク関連機器のコレガは、「ネットワーク機器は、海外からの購買比率が高い。今ある部材を買い占める財務的リスクと、部材が値上がりすることによるマイナスリスクを比較しても、部材を買い占めるリスクの方が高い」と、長期戦では結果的に手の施しようがない様子だ。
部材の調達については日立製作所も「短期的であればさほど影響が出ないが、長期化した場合、部材の値上がりや調達が難しくなるなどの影響は出てくるだろう」と、長期化を警戒。ただ、攻撃が開始されたばかりのため、海外拠点をもつ大手電機メーカーでは、「物資の輸出入や海外生産、業績などは、今のところはまだ分からない」(富士通)、「製品の輸出入、部材の値上がりや調達、生産に関して影響があるかは、現段階で何ともいえない」(松下電器産業)――など、情勢判断の見極めに苦心している。
■サイバーテロの可能性も
一方、戦争による「サイバーテロ」などを警戒するセキュリティ各社では、開戦に便乗した「愉快犯」によるウイルス蔓延を心配する。シマンテックは「開戦時の現段階では、特別新種のウイルスは発生してはいない。サイバーテロ発生の可能性も十分考えられるので、通常以上の注意は必要だ」と、万全の体制を敷く。このほか、「サイバーテロよりもむしろ愉快犯の挙動が恐い」(インターネットセキュリテイシステムズ)、「開戦に関連したウイルスメールなどが、蔓延する可能性が高い」などと、注意を呼びかける。
いずれにしても、戦争が短期的に終われば影響は少ないが、1か月以上の長期戦では物流コスト増などで影響は避けられないというのが業界の判断だ。
米英軍は米東部時間3月19日(日本時間20日午前)、イラクに対する攻撃を開始した。これらを受け、海外拠点をもつ大手電機メーカーなどIT業界は、一斉に有事の対策を打ち出した。中でも、物流への影響を懸念する声が多く、ヒューレット・パッカード(HP)は「納期遅れの可能性も否定できない」とするほか、長期戦を心配する企業が目立った。戦闘は短期戦との見方が支配的だが、各社とも業績への影響など、事態を冷静に受け止めようとしている。(イラク情勢特別取材班●取材/文)
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