その他
新規参入組、2社の寡占状態に殴り込み!
2003/03/24 15:00
週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載
コンシューマ向けウイルス対策ソフト市場がこの春、活発な動きをみせそうだ。同市場はシマンテック、トレンドマイクロの2社でシェアの約90%を占め(BCNランキング)、事実上の寡占状態が続いている。もはや、他社が入り込む隙間のない感があるが、それにも関わらず、敢えて殴り込みをかけようと、新規参入が最近相次いでいる。2社の牙城を突き崩すべく、新規参入組はそれぞれの戦略に打って出る構え。果たして、揺ぎない地位を築いた2社を脅かす存在になれるのであろうか。(木村剛士●取材/文)
活発な動き見せるウイルス対策ソフト市場
価格と性能、サポート力が勝負の分かれ目
■各社、新製品を続々投入 大きな市場規模が魅力
ここ数か月間に、イーフロンティア、デジターボ、キヤノンシステムソリューションズが次々と、コンシューマ向けウイルス対策ソフト市場に参入を表明している。
イーフロンティアは、すでに昨年11月から「ウイルスキラー北斗の拳2003」を販売開始。デジターボは「ウイルスドクター」を4月上旬、キヤノンシステムソリューションズは「NOD(エヌ・オー・ディ)32」を5月下旬に、それぞれ販売を始める。
約2年前から「ウイルス警備隊」を販売していたNECインターチャネルも、製品名を変更。大幅な改良を行って、昨年11月から「V3 VirusBlock(V3 ウイルスブロック)」として販売するなど、同市場を巡り活発な動きが目立つ。
これら企業はすべて、海外のセキュリティベンダーと提携し、日本での販売代理店として市場参入を図る格好だ。
寡占状態にも関わらず、参入する理由を、「他分野とは比較にならないほど大きな市場規模」と、各社は口を揃える。
BCNランキングによると、2002年のウイルス対策ソフトの総販売本数は58万3481本、販売金額は約37億218万円。これは、人気の高いほかのソフト部門と比べると、はがき・毛筆部門が総販売本数41万9880本、総販売金額約16億297万円。画像処理ソフト部門では、総販売本数16万1109本、総販売金額は約16億5380万円となっており、その大きさがうかがえる。
参入者の相次ぐ登場を、シマンテックとトレンドマイクロはどう見ているのか。
「ソフト市場で唯一好調といえるセキュリティ対策市場にビジネスチャンスがあると考え、参入するのは当然。ユーザーがセキュリティ対策ソフトに目を向ける機会が増え、ニーズが高まる」(齋藤秀明・シマンテック執行役員コンシューマ営業事業部事業部長)。
「セキュリティに対する意識が高まり、市場の活性化につながり喜ばしいこと」(志賀健・トレンドマイクロマーケティング本部プロダクトマーケティング部プロダクトマネージャー)。
両社とも口を揃えて歓迎ムード。相乗効果になって、むしろ自社製品の拡販に繋がると余裕を見せる。
また、トレンドマイクロの小太刀和江・マーケティング本部マーケティング部リテールマーケティング課課長代理は、「相乗効果が期待できる」としながらも、「当社には、長年日本で製品開発を手がけ、販売してきた知識と経験がある。他社には追随できない」と、自信を覗かせる。
■難しい大手との差別化、サポート力がカギに
これに対し、新規参入組はどう立ち向かうか。デジターボの小坂崇気社長は、「当社がなぜ、と思う人も多いかもしれない。市場規模の大きさが一番の理由だが、単純に他社製品は使いにくいと感じた。すぐにとは言えないが、使いやすいものを売れば、必ず普及し、寡占市場は崩せる」と強気だ。
同社では、年商の約5分の1に相当する2億円を広告宣伝費に投じる。テレビCMや雑誌広告などを発売日前後に一気に展開し、製品の浸透を図る戦略だ。
「まず知名度を上げることが拡販の一歩と考えている。社運を賭けて力を尽くす」(小坂社長)と意欲を示す。
すでに同社では、ウイルス対策ソフトだけでなく、セキュリティに関する製品の発売も決めており、総合的な製品販売を手がけていく予定だ。
キヤノンシステムソリューションズも、寡占市場の切り崩しに意気込む。吉田幸秀・商品事業部ソフトウェアプロダクト部主任は、「当社が狙うのは、すでに他社製品を利用している買い替え需要」と明言する。
ウイルス対策ソフトの駆除率などを調査する英国の非営利団体「ウイルス・ブリテン」の調査で、他社に比べ高い評価結果を受けたことを武器に、「まずは初心者ユーザーではなく、性能を理解している、すでにウイルス対策ソフトを利用しているユーザーを核に展開する」という。体験版を約1万ライセンス無償で配布するなど、性能面をアピールしていく。
NECインターチャネルは、2年ほど前から「ウイルス警備隊」を販売してきた。斬新なパッケージデザインと2500円前後の低価格戦略で、他社製品とは一線を画してきたが、昨年11月になって商品名称を変更。新たに「ウイルスブロック」の名称で展開を開始した。パッケージデザインも落ち着いたイメージに変更し、価格も4000円前後に引き上げた。その分、機能を豊富に加える戦略を取っている。
しかし、山下賢一・ネットワーク・ソリューション事業部ソフトパブリッシングチームプロデューサは、「新たに打ち出した製品は好調とは言い難い。大手製品と差別化が難しくなってしまい、ユーザーに優位性を理解してもらえてないのではないか」と漏らす。
同社では、今後発売される新バージョンでは価格も値下げし、機能の改善を図り、他社にはない付加機能を搭載した製品を投入していくという。「大手の牙城は簡単に崩せるとは思ってないが、大手と違う形の製品を提供すれば、活路を見出せる」と主張する。
店頭の声を集めると、「ブランド、知名度で決めるユーザーが多く、なかなか新参者が割って入るのは難しいだろう」(ショップ関係者)と分析。そのうえで、「セキュリティソフトは買えば終わりの世界ではなく、年間で更新するもの。初心者ユーザーでも更新の形態や、サポート力を気にする傾向はある」(同)と説明する。
新規参入組は、各社とも性能面、価格面は強く主張するが、サポートに注力するという声は目立たない。トレンドマイクロでは、ユーザーアンケートを定期的に行い、ニーズを的確に捉えることを一貫して続けている。
また、シマンテックでは、ウイルス対策に関するホームページを新たに開設するなどの取り組みを行っている。
新規参入企業はいずれも、シマンテック、トレンドマイクロのようなセキュリティベンダーではなく、販売代理店の位置にある。提携するベンダーといかに連携をとり、単なる製品の販売だけでなく、細かなサービスを上乗せしていけるか。製品だけではなく、この部分の充実も、2社を脅かす存在になるための条件となろう。
コンシューマ向けウイルス対策ソフト市場がこの春、活発な動きをみせそうだ。同市場はシマンテック、トレンドマイクロの2社でシェアの約90%を占め(BCNランキング)、事実上の寡占状態が続いている。もはや、他社が入り込む隙間のない感があるが、それにも関わらず、敢えて殴り込みをかけようと、新規参入が最近相次いでいる。2社の牙城を突き崩すべく、新規参入組はそれぞれの戦略に打って出る構え。果たして、揺ぎない地位を築いた2社を脅かす存在になれるのであろうか。(木村剛士●取材/文)
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