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<BBアクセスルータ市場動向>5000台超の大型案件も登場 2倍以上の急成長市場へ
2003/03/31 15:00
週刊BCN 2003年03月31日vol.984掲載
企業向けルータ市場で、ブロードバンド(BB)アクセスルータ製品が急激な伸びを示している。2002年度から企業ネットワークのBB化が本格化しており、支店・営業所や店舗などへの大量導入が続いている。特にVPN(仮想私設網)対応製品への引き合いが強い。ルータメーカー各社は03年度の需要にも強気の見通しで、前年度比2-3倍の計画を掲げる。市場動向とともに、メーカー各社の販売状況、販売戦略をまとめた。(坂口正憲)
■市場規模は02年度で約10万台
BBアクセスルータは、インターネット経由で社内ネットワークに接続する目的で、企業の営業所や店舗などに設置する10万円前後の小型ルータ。家庭向け製品から分化する形で市場が形成されてきた。
市場規模は02年度で10万台程度と見られる。1800億円のルータ市場全体から見れば、まだ規模は小さいが、伸び率は全ジャンルの中で最も高い。
特に02年度下半期は、需要の伸びに拍車がかかった。「上半期に比べて、下半期は4倍強の出荷台数」(NECネットワークス)、「02年度の第4四半期は、第3四半期に比べて倍増の月平均8000台の出荷を見込んでいる」(富士通)。メーカー各社の鼻息は荒い。
■通信コスト削減に高い効果
急成長の背景として、企業ネットワークの広帯域化が予想以上に進んでいる点が挙げられる。「BB化への投資は、通信コストを引き下げる効果が確実に見込める。不景気だからこそ、かえって投資意欲が強い」(古河電気工業)。
社内ネットワークの足回り回線をダイヤルアップ接続や専用線からADSLやFTTH(光ファイバー)に切り替えると、場合により通信コストを3分の1から5分の1へ減らせる。1拠点当たり10万円前後のルータを導入する程度の投資ならば、早期に回収できる。
また、社内ネットワークを常時接続、広帯域化すれば、リアルタイム性を要求される業務や大容量データの送受信も可能となり、用途は大きく広がる。
■02年は“VPN元年”で需要喚起
市場が伸びる要因として、VPNへの信頼度も高まっている。従来は、インターネットを社内ネットワークに利用することに対し、安全面での不安が指摘された。だが、通信事業者からADSLやFTTHを足回り回線としたIP-VPNサービスが次々と登場。それに呼応し、VPN機能を強化したBBアクセスルータが登場、状況が変わってきた。
人気を集めるヤマハ・RTX1000は、VPN機能使用時で50Mbps以上の実効速度を誇る。それまで暗号化を伴うVPN機能を利用すると通信速度が極端に低下し、広帯域回線の能力を活用できなかった。それが今や、FTTHの能力も十分引き出せる。
さらに最近は、IP-VPNより低コストなインターネットVPNを利用する企業が増えている。「1年前までインターネットVPNの案件は、拠点数が多くても数十か所だったが、最近は100か所を超える大型案件がある」(富士通)。それだけ、社内ネットワークにインターネットを利用することへの抵抗が少なくなっている。
■水面下で商談進む大型案件
こうした状況を受けて、メーカー各社は03年度も引き続き、高い伸長率を期待している。「需要規模は最低でも2倍は堅いだろう」(ヤマハ)と、倍増以上を見込むメーカーが多い。
実際、大型案件を抱えるメーカーは多い。アライドテレシスは、1社で5000か所に及ぶ拠点への導入を予定するインフラ系企業との商談を進める。センチュリー・システムズも、「提携システムインテグレータはどこも、同時に3つぐらいの大型プロジェクトを抱え、しかも20社ぐらいの見込みを持っている」と話す。
BBアクセスルータを積極的に導入する業種としては、全国に店舗展開する流通業や外食産業、建築現場を多数抱える大手建設会社、公共インフラ会社などがある。メーカーやシステムインテグレータが提案先として注力しているようだ。
100台、1000台単位の導入となると、ルータ単体のビジネスと言うより、ネットワーク構築の総合力を生かせる分野だけに、NECや富士通など大手ITベンダーも力が入る。「03年度は、市場シェアで倍増の20%を目指す」(NECネットワークス)。
02年度に続き03年度も、BBアクセスルータ市場が高い伸び率を達成するのは間違いないだろう。通信機器全般の需要が伸び悩む中で救世主になる。
メーカー各社の販売状況、販売戦略
●ヤマハ RTX1000の成功をバネにシェアアップ
2002年末に発売した「RTX1000」がヒット商品となり、SOHOから大企業まで幅広いユーザー層から支持されている。
RTX1000は、VPN(IPsec)使用時の実効速度が50Mbpsを超える、高い基本性能が評価されている。また、ISDNポート標準搭載による冗長性確保など、BBアクセスルータに求められる機能を標準搭載する点が受ける。
安定した品質や障害への迅速な対応などで信頼性を維持し、03年度は倍増以上の出荷台数を狙う。
●富士通 間接販売強化で50%増確保へ
2002年11月に発売した「Si-R170」の出荷が好調に推移し、BBアクセスルータ全体を押し上げる。02年度第4四半期には、月平均8000台の出荷実績を確保したもようだ。
03年度も引き続き、台数ベースで50%以上の高い伸び率を目指す。富士通のネットワークサービス「フェニックス」との連携や、通信事業者とのタイアップを増やす。
さらに、02年度で10%しかなかったディストリビュータ経由の間接販売を増やし、高成長を維持していく。
●NEC ソリューション連携でシェア20%
2002年度下半期から「IX1000」の出荷台数が好調に推移する。大型案件が次々と決まり、上半期に比べて4倍強の出荷実績となった。
03年度は、サーバーとBBアクセスルータを絡めたソリューション販売を強化する。02年末に発表したVoIPシステム向けパソコンサーバー・パッケージ「iExpress5800」に、IX1000が標準バンドルされる。NECが強みを持つVoIPソリューションで販売機会を増やす。 そのため、大塚商会などソリューション系販売パートナーとの関係も深める。
●アライドテレシス 低価格機種で大型案件狙う
2002年(暦年)上半期、BBアクセスルータ全体は、台数ベースで前年同期比倍増、金額ベースで同50%増を達成した。その中でメイン機種となる「AR740/720」は、2機種で7000台の出荷実績となった。
02年末には、実売価格で5万円を切る戦略的な製品「AR410V2」を発売、さらに販売攻勢をかける。低価格を武器に、多数の拠点にルータを導入する大型案件に食い込み、販売シェアを一気に伸ばす計画である。
現在、5000拠点を超える“超大型”案件の商談にも取り組んでおり、03年はBBアクセスルータ全体で3万台の販売を目指す。
●古河電気工業 センター機投入で一括受注狙う
2002年度は、「FITELnet-F40」を2万台以上出荷する。大口契約の受注残が数千台規模であり、受注ベースでは2万5000台に迫る勢いだ。
今年3月からはFTTHに対応した新製品「FITELnet-F100」を投入し、6月にはセンター向けの高機能機種「FITELnet-F1000」を発売する予定だ。
センター向けをラインアップに加えることで、拠点向けBBアクセスルータとの相互接続性を売りに、システム案件での一括受注を狙う。03年度は前年度比倍増の5万台を目標にする。
●センチュリー・システムズ 不動産業者とのタイアップ深める
2002年度は、不動産業者からインターネットマンション向けに5000台の大口受注があり、主力機種「XR-360/350」シリーズの販売数量を大きく伸ばす。箱売りよりも、案件別のソリューション販売に営業特化する。
また、企業向け製品は運用面での差別化が重要と判断し、ルータの設定情報を記録媒体に保存。障害からすぐに復旧する仕組みを開発した。
03年度も引き続き、ソリューション販売に力を入れ、ソリトンシステムズなどのネットワークインテグレータとの連携を強化していく。
企業向けルータ市場で、ブロードバンド(BB)アクセスルータ製品が急激な伸びを示している。2002年度から企業ネットワークのBB化が本格化しており、支店・営業所や店舗などへの大量導入が続いている。特にVPN(仮想私設網)対応製品への引き合いが強い。ルータメーカー各社は03年度の需要にも強気の見通しで、前年度比2-3倍の計画を掲げる。市場動向とともに、メーカー各社の販売状況、販売戦略をまとめた。(坂口正憲)
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