その他
塗り替わるか、四国のベンダー勢力図 市町村合併で激化するシェア争い
2003/03/31 15:00
週刊BCN 2003年03月31日vol.984掲載
2005年3月末の合併特例法の期限を2年後に控え、市町村合併が活発化している。この急速な合併の動きが、e-Japan重点計画のための電子自治体構築の混乱に拍車をかけている。市町村の枠組みが変わる合併は、自治体にとって電子化を進めるための契機になる面と、逆に住民情報など各種データの統合の難しさに直面するのも事実だ。一方で、コンピュータベンダーは、シェアの確保に必死の競争を繰り広げている。愛媛県や香川県など市町村合併に積極的な地域と、高知県のように合併そのものに消極的としか見えない県もある四国地方をモデルに、合併により塗り替わりつつあるベンダーの勢力図を検証した。(川井直樹(ジャーナリスト)●取材/文)
システム案件獲得競争を検証する
■日立系のシェアが高い愛媛県 NEC、香川県では防戦一方
四国4県の中で、市町村合併計画が最も進んでいるのが愛媛県だろう。現在の70市町村は、すべての合併計画が実施されれば18市町にまで集約される。つまり、52の市町村で情報システム案件が消失することになる。
愛媛県の市町村にある住民情報システムのベンダー別シェアは、日立製作所41%、富士通23%、NEC19%、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、沖電気工業、東芝がそれぞれ3%となっている。
工業地帯の中心である新居浜市をユーザーにもつ日本IBMは別にしても、沖電気や東芝は中核となる市を押さえていないためにユーザーを失う可能性が高く、実力ベンダーの担当者も「強敵ではない」と明言する。
すでに、東宇和・三瓶町合併協と重信町・川内町合併協は日立系でいくことが決まり、「合併案件を受注できなければ生き残れない」(竹内顕也・愛媛電算統括本部取締役統括部長)なかで、勢力拡大に弾みをつけたいところ。
香川県では昨年合併した「さぬき市」の住民情報系システムは、地元システムインテグレータの富士通四国インフォテックがアウトソーシングとして受注しており、4月に新市となる「東かがわ市」はNECが獲得している。
富士通四国インフォテックの大久保博社長は、「新市のシステム運営のあり方として、アウトソーシングの実例をつくった。これを1つの標準モデルと考える自治体も出てくる」と自信を見せる。
NECは県庁所在地である高松市がユーザーになっており、「高松市を中心とした広域合併は重視している。全部を取りに行く気持ちはあっても、現実的ではない」(塊場收・NEC四国支社公共第一営業部長)と、少なくとも香川県では防戦一方。NEC系の四国電子計算センターの綾孝幸社長は、「合併をチャンスと捉えて顧客拡大を進める」と意欲的だが、基幹系システムよりも、図書館システムなど公共団体のサブシステムを重視している様子だ。
■富士通とNECが均衡する徳島県、高知県ではシェア争い表面化せず
徳島県は4市46町村。これが5市7町になる見込みだが、法定協として活動しているのは3か所。富士通とNECのシェアは均衡しており、東芝が2町、日立が1市2町、沖電気のユーザーは1町だ。
富士通ディーラーであるテック情報の村上弘和取締役公共ソリューション本部長は、「合併予定町村の中で、半分以上が当社ユーザーのケースはほぼ大丈夫とは思うが…」と、自信の中にも一抹の不安をのぞかせる。「すでに合併が動き出す前から、独自に新システムを検討している」と、先手先手でユーザーの囲い込みを進める考えだ。合併特例法のタイムリミットは迫っており、このままでは新システム構築の作業時間が十分ではなくなる恐れがあるからだ。
しかし、合併計画がなくなれば、それまでにかけた費用と時間のムダは自らが担保しなければならない。
その一方で、高知県に本社がある四国情報管理センターは徳島県の町村のシステムも担当しているが、「顧客に中核市町がない。基幹系システムではなく、その他の情報系システムの受注を狙うしかないだろう」(中城幸三社長)と、方向転換を余儀なくされている。
これら3県のベンダーやシステムインテグレータから見ると高知県は、「橋本大二郎知事が合併に消極的」という話が実しやかに伝わるほど、市町村合併でのシェア争いが表面化していない。
システム需要から見ると、県が経済産業省の実験事業でCDC(コミュニティ・データ・センター)設置に動いており、県内からも参加している市町村があることから、合併後もCDCとして統合される可能性が高い。そうなれば市町村システムのシェア競争どころではない。
富士通の大高敬雄・四国支社長は、「この2年間で合併対応のフォーメーションを作ってきた。積極的に攻めるところと、ある程度負けを織り込むところが出てくるのは仕方ない。ただ、合併だけを狙うのではなく、医療情報システムなどの受注にも注力していく」と、合併によるユーザー数の減少を付随する分野の拡大でカバーする。
合併のシステム商談は「これから1年が勝負」。全国で2003年を勝負の1年として激しい受注合戦が繰り広げられるだろう。一部では安値受注といった動きも出ており、実際に四国の中でも起きている。四国電子計算センターの綾社長は、「20年以上も動かなかったシェアが動く。これはチャンスだ」という見方もあれば、大手ベンダーの攻勢で「地元インテグレータの淘汰の時代」という厳しい見方もないわけではない。
2005年3月末の合併特例法の期限を2年後に控え、市町村合併が活発化している。この急速な合併の動きが、e-Japan重点計画のための電子自治体構築の混乱に拍車をかけている。市町村の枠組みが変わる合併は、自治体にとって電子化を進めるための契機になる面と、逆に住民情報など各種データの統合の難しさに直面するのも事実だ。一方で、コンピュータベンダーは、シェアの確保に必死の競争を繰り広げている。愛媛県や香川県など市町村合併に積極的な地域と、高知県のように合併そのものに消極的としか見えない県もある四国地方をモデルに、合併により塗り替わりつつあるベンダーの勢力図を検証した。(川井直樹(ジャーナリスト)●取材/文)
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