その他
特性をもった店舗作りへ 地域団結力を一層固める大須AIC
2003/04/28 15:00
週刊BCN 2003年04月28日vol.988掲載
名古屋・大須電気街のパソコン専門店などが加盟する大須AIC(会長=月城朗・グッドウィル社長)が、電気街各店舗の連携強化に積極的だ。「大須」の名前を前面に押し出し、メーカーとの意見交換を図りながら販売促進につなげていく。名古屋では近い将来、ビックカメラがJR名古屋駅前に新規オープンすることを計画。これに対し、大須地区のパソコンショップ各店舗では、それぞれの得意分野を強化することで来店者の増加を狙う。各店舗が互いの独自性を最大限に発揮し、地域単位で競争に打ち勝とうという構図だ。(佐相彰彦●取材/文)
“新しい電気街”を模索
■販促でメーカーと連携、集客率向上であの手この手
2003年4月22日、大須AICは今年度の方針を発表した。そのなかで月城朗会長は、加盟企業の連携を一層強化することを打ち出した。
最近では、日本3大電気街の「秋葉原」、「大須」、「日本橋」がカメラ量販店や郊外型量販店の新規出店により、少なからず売上高に影響が出ている状況だ。
大阪・日本橋地区では、JR大阪駅前の「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」の進出により、集客数が減少している。
大須電気街は、秋葉原、日本橋に比べると落ち込みは少ないといわれる。とはいえ、大須周辺に有力郊外店が出店してきており、大須の商圏が狭くなっているという見方が強い。
しかも、近い将来、ビックカメラがJR名古屋駅前に新規オープンを計画しているため、今後競争が一層激化することが予想される。
月城会長は、「ビックカメラの進出で、厳しい状況になる可能性はある。しかし、ピンチをチャンスに変えることが重要だ。今後は『大須のグッドウィル』など、大須AICの加盟企業が『大須』を冠に掲げ、大須地区を盛り上げていきたい」と話す。
昨年、大須電気街から徒歩5分程の場所にヤマダ電機が「テックランド名古屋栄店」を出店。同社が初めて電気街近くに進出したと話題を呼んだ。
一方、大須AICでは、昨年5月17日から19日までの3日間、テックランド名古屋栄店の新規開店にぶつけ、「大須PCファイヤーセール」を実施した。
キャンペーン期間中は、加盟店全店が共通のセールPRハッピを着用し、セールPRのパフォーマンス部隊や2トンアルミ車を使ったセールPRカーを配置。横断幕の設置やチラシの配布を行なった。また、無線LAN環境を実現するホットスポット「大須エアースポット」も実施するなど、大須を訪れた消費者の利便性向上に向けてさまざまな施策を行った。
「大須」の名前を前面に押し出したのは、地域単位の競争がますます激化するなか、それに打ち勝つための決意の表れといえる。
また、メーカーとの連携もさらに強化していく構えだ。具体的には、7月初旬に実施する予定の「夏のボーナスセール」(仮称)や11月中旬の「大須新名所誕生セール」(同)、12月初旬の「冬のボーナスセール」(同)などの販売促進策を実施するにあたって、メーカーが中心の賛助会員との意見交換を図りながら、一層実売につながるセールにしていく。
月城会長は、「今年度は原点に立ち返り、賛助会員と一緒に何ができるかを検討していく。『ギブ』と『テイク』を一層強化していきたい」意向だ。
集客率を高める策としては、富士通プライムソフトテクノロジや富士通、九州大学雨宮研究室が取り組んでいる無線タグの実証実験に参加。消費者に無線タグを貸し出し、大須商店街で役に立つ情報を携帯電話メールで配信する「大須@得インフォ」を今年3月8日から4月27日まで行った。
5月中旬には、「大須エアースポットII」を実施する予定だ。
■独自性をもった店舗作りへ、得意分野で来店者増狙う
大須AICが地域活性化に取り組むなか、大須電気街の各店舗では、独自性をもった店舗作りに注力している。
エイデンの「スーパーコンプマート大須メガタウン」では、中古パソコンの販売に力を入れる。
加藤敏明店長は、「顧客は何を求めて電気街を訪れるのかを考えた場合、そこでしか買えない商品を揃えることが重要。加えて、ほかの店舗が得意でない分野を伸ばし、かつ利益を確保できる商品を販売していくことが来店者を増やすことにつながる」と語る。中古パソコンの販売では、前年同月比20-50%増で推移している。
オーエー・システム・プラザの「OAシステムプラザ大須店」でも、「他店にはない専門性を打ち出す。専門的な知識が備わっていなければ、『パソコン専門店』とはいえない」(亀山幸三店長)と言い切る。
そのため、消費者が来店するきっかけとなる1階部分にiMacの新品や中古、携帯オーディオのiPodなど周辺機器を展示。「アップルコーナー」とすることで来店者数の増加につなげる。
亀山店長は、「パソコンの売上高のなかで、iMacの売上比率は25%とまだまだ少ない。しかし、その25%の固定客を逃さず、アップルの周辺機器やアクセサリー品などの購入につなげれば利益を確保できる」と意気込む。
同社では、売上高が前年並みでも利益を着実に上げられる体制づくりを急ぐ。
その具体策の1つとして大喜一夫社長は、「1店舗当たりの正社員を減らし、代わりにパートやアルバイトを入れる」という。
「正社員はリストラするわけではなく、本部や新店舗にシフトしていく。店舗の正社員が少なくなった代わりに、POP作りなど販売以外の部分を本部で統一する」としている。今年6-7月をめどに実施する。
グッドウィルでは、「グッドウィル1号店」をメディアやサプライ品、消耗品専門店として、このほどリニューアルした。
「今年6月をめどに、大型店舗『エンターテイメント・デジタルモール』も全面リニューアルする」(月城社長)という。
具体的にどのようなリニューアルを図るのかは今後詰めていく。
大須電気街は、秋葉原、日本橋の電気街とはやや趣が異なる側面がある。電気街であると同時に、大須観音、万松寺という2つの寺社、若者向けの古着店、古くからの大きな商店街などが併存し、老若男女さまざまな層が集まる街でもある。
また、大須AICを通じて、電気街の店舗同士が密接な連携をとっているのも特徴といえよう。連携強化により、新しい電気街を形成できるかどうかに注目が集まる。
名古屋・大須電気街のパソコン専門店などが加盟する大須AIC(会長=月城朗・グッドウィル社長)が、電気街各店舗の連携強化に積極的だ。「大須」の名前を前面に押し出し、メーカーとの意見交換を図りながら販売促進につなげていく。名古屋では近い将来、ビックカメラがJR名古屋駅前に新規オープンすることを計画。これに対し、大須地区のパソコンショップ各店舗では、それぞれの得意分野を強化することで来店者の増加を狙う。各店舗が互いの独自性を最大限に発揮し、地域単位で競争に打ち勝とうという構図だ。(佐相彰彦●取材/文)
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