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<大阪・羽曳野市のICカードへの取り組み>自動交付機で社会コストを削減
2003/05/26 15:00
週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載
大阪・羽曳野市は、シティカードを活用した「証明書自動交付機」を1991年から導入しており、早くから住民票など各種証明書発行の自動化に取り組んでいる。自動交付機は利用率が高く、社会コストの削減を実現している。今年8月から稼動を予定している住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)に備えたカードの有効活用に向け、シティカードと住基カードを1枚のICカードにして一元管理することを検討する。今後は、住民サービスを一層向上することに力を入れ、ワンストップサービスにつながるシステムづくりを模索する。(佐相彰彦)
シティカードの統合化を検討
■シティカードを約7万枚発行
羽曳野市は、証明書の発行を自動化した端末「証明書自動交付機」や施設利用予約の端末、地域気象情報システム「お天気サテライト」、情報バリアフリー・テレワークセンター「生きがい情報センター」などを開設しており、全国の自治体のなかでもIT先進自治体として名を轟かせている。
なかでも、「証明書自動交付機」では、同端末を利用するための「はびきのシティカード」を約7万枚発行。人口約12万人の羽曳野市にとっては、非常に高い普及率だ。
同端末は91年に導入。住民票の写しや外国人登録済証明書、印鑑登録証明書、市民税証明書、固定資産税証明書などの各種証明書類を、市役所のロビーやコミュニティセンターなど市内8か所の公共施設などにある端末から手に入れることができる。
初心者が自動交付機で各証明書を発行する場合でも操作時間は1分以内で済むという。 自動交付機の導入効果について、戸谷壽夫・羽曳野市役所秘書室部長(情報・行革担当)は、「社会コストの削減を実現するもの」と話す。
■自動交付機が市民負担を軽減
戸谷部長によれば、「例えば、一番不便な地域の市民が羽曳野市役所に訪れる場合、住民票1通を取るために、バスや電車を乗り継ぐことになり、交通費で1000円以上かかっている。往復時間が約2時間と考えたとして、それを日当計算すると5000円以上の経費がかかるのと同じになる」と試算している。
「もし、自分が住む地域の近くでサービスが受けられれば、5000円プラス交通費という負担がなくなる」ことを強調する。
戸谷部長が社会コストの削減にこだわる理由は、市役所間でもITの導入効果に対する共通の認識は行き渡っておらず、「財政当局からみると、『行政効果がはっきりみえない』ということで財政問題で引っかかる可能性が高い」からだという。
経済不況が続くなか、多くの市町村では、財政難を抱えているケースが増えている。
羽曳野市でも例外ではなく、「情報化投資の評価により、予算がつきにくいのが現状。さまざまな取り組みを行えば経費がかさむため、投資と効果のバランスを考慮しなければならない」と漏らす。
IT先進自治体といわれている羽曳野市でさえも、財政難という大きな課題を抱えていることを示しているわけである。
■「使ってもらえるカード」を目指す
また、羽曳野市は経済産業省の「IT装備都市研究事業」にも参画した。ICカードを約1万枚発行しており、ICカードの活用に対しても積極的に取り組んでいる。
そのため、今年8月に本格運用を予定する住民基本台帳ネットワークシステムに備えたカードの発行に関しては、「はびきのシティカードと住基カードを統合化するなど1枚のICカードで管理することを検討している」という。
問題となってくるのが、国や自治体など、どこが主体で住基カードを運用・管理しているかである。 住民基本台帳ネットワークシステムが構築されれば、転入・転出処理が市町村すべてのネット上で行われることになるが、「それはあくまでも行政間の情報。引越しする場合を考えると、さまざまな手続きが想定される。少なくともそれらの手続きがすべてワンストップサービスでつながるシステムづくりを考え、『市民に使ってもらえるカード』をコンセプトに市民の利便性を追求したサービスを付加していくことが必要」と指摘する。
「情報化を推進する場合、あくまで住民の視点を忘れてはならない。利用者の視点に立った仕組みづくりが必要だ」としている。
今後ICカードを本格的に発行するにあたり、利用者である市民のニーズに対応した付加機能があるかないかによって、ICカードの発行枚数が大幅に変わってくるといえそうだ。
大阪・羽曳野市は、シティカードを活用した「証明書自動交付機」を1991年から導入しており、早くから住民票など各種証明書発行の自動化に取り組んでいる。自動交付機は利用率が高く、社会コストの削減を実現している。今年8月から稼動を予定している住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)に備えたカードの有効活用に向け、シティカードと住基カードを1枚のICカードにして一元管理することを検討する。今後は、住民サービスを一層向上することに力を入れ、ワンストップサービスにつながるシステムづくりを模索する。(佐相彰彦)
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