その他
統合プリンタドライバ規格が始動 「BMLinkS」、日本発の世界標準へ
2003/05/26 15:00
週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載
プリンタドライバは1つでよい――。そんな時代が見えてきた。OA機器系のメーカー団体、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA、樫尾幸雄会長=カシオ計算機副社長)傘下の15社は、統合プリンタドライバの規格を固め実証実験を続けてきたが、まずは10機種に「BMLinkS」のロゴ認証を与えた。このドライバをノートパソコンにインストールしておけば、例えば出張先でプリントアウトが必要になった際、近くのコンビニにBMLinkSロゴを取得したMFP(多機能複合機)やプリンタが置いてあれば、そこで出力ができるようになる。「日本発の世界標準として普及させる」(相馬郁夫・BMLinkSプロジェクト委員会副委員長=キヤノン常務取締役)意向だ。(石井成樹●取材/文)
OA機器系メーカー15社が足並み
■「つながる、見つかる、手に入る」業界統一のインターフェイスへ
複写機などのOA機器がネットワークにつながる時代を迎えている。だが、社内LANにつながっているデジタル複写機、MFP、プリンタなどは、1社のベンダー製品で統一されているよりも、A社、B社、C社などの各種ベンダー製品を混在利用しているケースの方が圧倒的に多い。
ここで問題になるのは、クライアントパソコンに各社のドライバをインストールしないと、その資源をうまく活用できないという点である。
例えば、東京本社ではA社のプリンタしか利用していなかったので、ノートパソコンにはA社のプリンタドライバだけをインストールしていた。ところが、出張先の大阪支店ではB社のプリンタを使用していたため、自分のノートパソコンから直接プリントアウトすることができなかった――。
日常的に見られる光景だが、これを何とかしようというのがBMLinkS構想である。
「Business Machine Linkage Service(ビジネスマシンリンケージサービス)」の略で、(1)いつでも、どこでも、どんなメーカーとの機器でも簡単につながる、(2)必要な機能をもつOA機器がネットワークから瞬時に見つかる、(3)どんな機器からでも共通したオフィスサービスが手に入る――という「つながる」、「見つかる」、「手に入る」の大目標を掲げ、業界統一のインターフェイス仕様づくりに取り組んできた。
1999年にプロジェクト委員会を組織。01年2月に標準仕様書V1.1を策定し、02年5月には仕様書V1.2を公開した。
その後、02年9月にプリンタドライバを開発。02年12月と03年4月に認証試験を実施し、5月15日にBMLinkSドライバの公開に踏み切った。
今回公開したのはプリンタドライバだが、今後ファクシミリ-イン、同アウト、スキャナ、ストレージなどネットワークにつながる5つの製品領域で標準仕様を固めていく。これを総称して「BMLinkSオフィスサービス」と呼ぶ。
プロジェクト委員会への参加企業は、5月15日現在15社で、MFP、プリンタの国産主要メーカーはほぼすべて参加している。
「BMLinkS」というロゴ制度も設けており、認証試験に合格すれば、このロゴを使用できるようになる。
■マルチベンダ環境で使える統合プリンタドライバ
BMLinkS統合プリンタドライバはどんな機能をもっているのか。
最大の特徴は、クライアントパソコンには、BMLinkS統合プリンタドライバだけをインストールしておけば、マルチベンダのプリンタやMFPでプリントアウトできるという点である。
もちろん、利用できるプリンタやMFPには、「BMLinkS Print Service」の機能を搭載していなければならないが、この機能を搭載しているプリンタやMFPがネットワークにつながっていさえすれば、出張先の札幌でも博多でも好きなプリンタから直接プリントアウトできる。
BMLinkSに対応しているかどうかを示すのが「BMLinkSロゴ」で、認証試験によってロゴの使用を認める。
BMLinkS統合プリンタドライバは、デバイス検索、プリントジョブ発行、イベント登録・通知の機能も備えている。
デバイス検索というのは、ネットワークにつながっている対応プリンタやMFPを検索する機能で、どのビルのどの部署に、どんなプリンタが置かれているかを表示する。
モノクロかカラーか、どのくらいのプリントスピードをもっているかなどがわかり、どのプリンタを使うかの選択ができる。
用紙サイズの選択、印刷部数の指示など出力条件の指定もできるし、ジョブ完了などの画面を出すかどうかといった選択もできる。
ところで、プリンタドライバは、プリンタの性能そのものを左右する要の技術の1つである。各社にとっては“秘中の秘”だ。
そこに登場したのがこの統合プリンタドライバになるわけだが、性能的には最大公約数を盛り込む必要性から、アプリケーションの起動時などには純正ドライバに比べ多少時間がかかると言われる。
その意味では、純正ドライバに置き換わるという存在ではなく、純正ドライバにはできない付加サービスを担うという位置づけになりそうだ。
ただ、ユーザーに与える利便性は極めて高く、BMLinkSロゴ取得マシンでないと競争力を失うという可能性はかなり高い。
プロジェクト参加メーカーの中で対応マシンの発売を表明したところはまだないが、5月15日の記者会見時には、リコー、キヤノン、富士ゼロックス、ミノルタの4社が対応マシンを持ち込んで実際に稼働することをデモンストレーションしてみせた。
これらのメーカーが先行しながら市場開拓に当たることになりそうだが、呉越同舟のメーカー団体が策定した規格が、世界のデファクトスタンダードを握るというかなり珍しいケースが現実性を帯びている。
プロジェクトの参加メーカーは国産メーカーが中心で、米ヒューレット・パッカード(HP)などは参加していない。
だが、「統合プリンタドライバそのものを公開していることでわかる通り、極めてオープンに運用している。新規加盟は大歓迎」(大柴信久・幹事会リーダー)としており、世界の関連メーカーに参加を呼びかけていく意向だ。
プリンタドライバは1つでよい――。そんな時代が見えてきた。OA機器系のメーカー団体、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA、樫尾幸雄会長=カシオ計算機副社長)傘下の15社は、統合プリンタドライバの規格を固め実証実験を続けてきたが、まずは10機種に「BMLinkS」のロゴ認証を与えた。このドライバをノートパソコンにインストールしておけば、例えば出張先でプリントアウトが必要になった際、近くのコンビニにBMLinkSロゴを取得したMFP(多機能複合機)やプリンタが置いてあれば、そこで出力ができるようになる。「日本発の世界標準として普及させる」(相馬郁夫・BMLinkSプロジェクト委員会副委員長=キヤノン常務取締役)意向だ。(石井成樹●取材/文)
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