その他
OBCのファンクションキー機能に特許権 業務ソフト競合各社が困惑
2003/06/30 15:00
週刊BCN 2003年06月30日vol.996掲載
業務ソフトウェア「奉行シリーズ」などを販売するオービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)はこのほど、行政訴訟を経て、特許庁から会計処理ソフトのファンクションキー機能などに関する特許を認められた。市場に流通している業務ソフトの大半にこれに似た機能が搭載されているだけに、競合する業務ソフト会社は困惑している。同特許は、1999年末に競合会社の「異議申し立て」を受けた経緯がある。これら一連の動きで業界は混乱しているが、国が進める「知的財産立国」を目指す取り組みと相まって、「知的財産権」に関する各社の認識が改めて問われる機会となりつつある。(谷畑良胤●取材/文)
「知的財産権」再認識の好機
■99年に一度は特許として承認
OBCが取得した特許は、マイクロソフトのウィンドウズ上で行う会計処理ソフトの画面上にファンクションキー(FK)を表示する際の機能。具体的には、FKを画面上に表示する際に行う、(1)FKに上下左右の移動指示、(2)ウィンドウの枠に沿った表示、(3)実際のキーボードのFK間隔に合わせた表示――の3点を具備したものが特許として認められた。95年に発売された「ウィンドウズ95」が登場する以前にあったDOS/V版の業務ソフトでは、同様の機能が他社製品にもあった。
業務ソフト会社の多くは95年当時、ウィンドウズの操作性を重視したウィンドウズ版の業務ソフトを相次ぎリリースし、DOS/V版で使っていたFKの機能を採用しなかった。一方のOBCは、既存ユーザーから、「DOS/V版で慣れた操作性(FK機能)を継承して欲しいという要望を受けた」として、ウィンドウズ上でも使える同機能を開発。これを95年7月、特許庁に申請し、99年12月に一度は特許として承認されている。
OBCが他社に遅れること半年ほど後に発売したウィンドウズ版の主力業務ソフト「奉行シリーズ」は、この機能によりヒットした。これらを受けた他社は、DOS/V版時代のFKを使った機能を搭載したウィンドウズ版の業務ソフトを相次いで発売している。
ところが、99年にOBCのFKを使った機能が特許として認められ、業界は騒然。競合会社が「OBCの特許に新規性はない」と、同庁に「異議申し立て」を申請。同庁はこの主張を汲み取ったと思われ、OBCに対し「特許取消通知」を出した。これに対しOBCは、東京高等裁判所に同特許の有効性で同庁を提訴し、02年12月に勝訴、今年4月に同庁から改めて登録の確認文書が届いた。
■対応に追われる業務ソフトメーカー
現在、同特許と似た機能はOBCと競合する業務ソフト会社の大半が使用している形だ。この特許は法令上、95年7月の特許出願時に遡り基本特許が認められる。OBCは現在、対応を協議中だが、販売店および開発パートナー会社を除く競合会社に限り、特許使用に関するロイヤリティー契約交渉を今後行うかを検討している。
これに対し、業務ソフトで競合する各社は対応に追われた。「大臣シリーズ」を販売する応研(原田明治社長)は6月17日付で、関連する販売店に対し同社製品が「特許第3015862号(同機能の特許番号)に抵触しない理由」と題する文書を配布。同文書では、「(今回の特許は)非常に限定された特許で、一般のFK機能は抵触せず、大臣シリーズは全く抵触していない」と、同シリーズの継続的な拡販を依頼した。
「PCA 7シリーズ」を出すピー・シー・エー(PCA、大炊良晴社長)は、「当社は画面表示とFK配列に関する今回の機能は採用していない。採用する予定もないが、念のため弁護士らと対応策を協議中」という。ソフトウェア特許の「知的財産権」に詳しいある弁理士によれば、「今回は特許として成立しているが、比較的限定された権利で、回避可能な技術」との見方をする。
だが、政府では折りしも、世界に準じて「知的財産立国」に向けた取り組みを活発化させている。日本の商習慣に支えられてきた業務ソフト業界でも、世界的な視野に基づいた、「知的財産権」に対する戦略的な取り組みの機運を高める必要がありそうだ。
業務ソフトウェア「奉行シリーズ」などを販売するオービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)はこのほど、行政訴訟を経て、特許庁から会計処理ソフトのファンクションキー機能などに関する特許を認められた。市場に流通している業務ソフトの大半にこれに似た機能が搭載されているだけに、競合する業務ソフト会社は困惑している。同特許は、1999年末に競合会社の「異議申し立て」を受けた経緯がある。これら一連の動きで業界は混乱しているが、国が進める「知的財産立国」を目指す取り組みと相まって、「知的財産権」に関する各社の認識が改めて問われる機会となりつつある。(谷畑良胤●取材/文)
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