その他
「共同アウトソーシング事業」スタート 電子自治体へ向けた動きが加速
2003/07/07 15:00
週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載
「電子自治体」実現のカギを握るプロジェクトが本格的に動き出した。総務省が地方自治体と協力しながら推進している「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」に基づいて、各都道府県が分担して行う基盤的な業務システムの開発作業が順次、スタートする。先月、第1弾として統合連携システムなど4種類の情報システムを北海道など16都道府県で開発することが決定。近く第2弾として電子調達などの個別業務処理システムの開発分担も決まる見通しだ。システム開発段階から地方自治体を幅広く巻き込むことで、業務手順の見直しや業務効率の改善に向けた認識も共有化し、電子自治体に向けた各自治体の動きを一気に加速させる狙いでいる。(千葉利宏(ジャーナリスト)●取材/文)
16都道府県、業務システムを分担して開発
■3つのステップで推進、まずは業務システムの統合から
全国約3000もの地方自治体のIT化をどのように進めていくか――。自治体の規模もIT化の取り組み状況も千差万別、しかも市町村合併の動きも活発化しているなか、一定の水準を確保しながら行政サービスのIT化を進めるという難題に、総務省が出した回答が「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」である。
同戦略のステップは、大きく3つある。まず第1に、各自治体ごとに異なっている業務の手順や様式を標準化すること。昨年12月に行政手続オンライン化3法が成立し、約5万2000の行政手続をオンライン化する法的な基盤が整備された。紙による手続きの場合、自治体ごとに業務の手順や書類の様式が多少異なっても問題はないが、そのままシステム化すると自治体ごとに個別のシステムを開発しなければならず、無駄が生じてしまう。このため、まず業務の標準化作業を昨年度からスタートし、システム開発に向けた準備を進めている。
第2に、標準的な業務システムを自治体が分担しながら開発し、他の自治体がそれらの標準システムを無料で利用できる環境を整える。今回決まったのがこの部分で、図に示すように大きく分けて4種類の基盤システムを16の都道府県が分担して開発作業に着手する。今年度中にシステム開発を完了する計画だ。
第3に、各都道府県に1-2か所、電子自治体業務を支援するデータセンターを設置、業務処理を共同化することで経費削減を図る。一方で、各自治体が抱える国民年金などの既存システムの見直し作業も順次進めていく。これらは04年度以降に取り組む課題としている。
同戦略では、電子自治体の実現に必要な情報システムを大きく「住民サービス業務系」と「内部事務系」に分類した。内部事務系は、各自治体が必要に応じてそれぞれ独自にシステムを導入してきており、業務システムの統合化を進めるために、それら既存システムを捨てるわけにはいかない。そこで最初に統合業務システムを実現するための基盤システムを開発して、順次、個別システムを統合していく作戦を立てたわけである。
■求められる“センスと水準”業務手順の標準化が重要
4つの基盤システムは、住民・企業からの電子申請・届出を一元的に受け付ける「電子申請受付システム」、受け付けた申請・届出データを個別の業務システムへと振り分ける「統合連携システム」、業務の標準化に基づいて標準業務手順を管理する「標準業務手順管理システム」、申請・届出データを標準様式で文書管理する「業務進行支援(文書管理)システム」。統合連携システムも、1種類だけを開発するのではなく、各自治体の事情に応じて選択できるように4タイプを開発する。電子申請受付システムも、機能ごとにモジュール化して組み合わせ可能なシステムをめざしている。開発作業は分担して行われるが、4つの基盤システムが相互に連携できなければならないため、16の自治体が協調しながら作業を進めていくことにしている。
引き続き、住民サービス業務系のシステム開発第2弾として、電子入札・調達などITを使って新たに提供する行政サービス用の個別システムの開発にも着手する。これらのシステムも標準システムを開発して各自治体が利用する方が効率的であるからだ。
「電子自治体の実現に向けた施策も、着実に実行していく段階に入った。自治体の実情を踏まえながら、一歩一歩進めていくことが重要」。プロジェクトの指揮官である猿渡知之・総務省自治行政局自治政策課情報政策企画官は、進ちょく状況をそう冷静に見ている。戦略のシナリオを全ての自治体が確実に達成していくことは口で言うほど簡単なことではないからだ。
先月下旬、国の「電子政府構築計画」の原案も策定された。中央官庁であれば、方針が決まって一気に情報システムの開発・導入が進むだろうが、電子自治体では標準システムの開発はまだ入り口段階。次に標準システムに必要な修正を加えながらシステム導入を進め、全ての自治体が統合業務システムを利用して電子自治体サービスを開始する段階が正念場である。
電子自治体推進戦略では、標準システムは開発するものの、自治体が全て同じシステムを導入するわけではない。「自治体にとっては、情報システムに要求するセンスと水準が問われる」(猿渡企画官)ことになり、ITベンダー側も自治体の要求にどこまで応えられるかがカギを握る。自治体が開設しているホームページでも、すぐにほしい情報に到達できる使い勝手の良いものとそうでないものと優劣が分かれるように、申請・届出のオンライン化も操作性や利用しやすさなどの面で最初から全ての自治体が同じレベルを実現するのは難しい。むしろ、優劣がつくことで自治体の間で競争原理が働き、電子自治体サービスのレベルアップにつながることが期待される。
その一方で、自治体ごとに手続きのやり方が異なってしまっては、サービスの公平性が確保されず、利用者側も戸惑ってしまう。そうした混乱を防ぐために開発するのが標準業務手順管理システムだ。「自治業務のワークフローを管理し、ナレッジマネジメントシステムと呼べるもの」(猿渡企画官)と位置付けられるが、システム導入の狙いは手順の管理だけではない。IT化によるワークフロー管理を推し進めていくことで、自治体の組織そのものがフラット化され、効率化されていかざるを得ないというシナリオだ。
「IT社会のなかで、少なくとも自治体が、ボトルネックになるような事態は生じさせない」(猿渡企画官)。電子自治体がめざしているのは、単なる行政手続のオンライン化だけでないことは確かである。
「電子自治体」実現のカギを握るプロジェクトが本格的に動き出した。総務省が地方自治体と協力しながら推進している「共同アウトソーシング・電子自治体推進戦略」に基づいて、各都道府県が分担して行う基盤的な業務システムの開発作業が順次、スタートする。先月、第1弾として統合連携システムなど4種類の情報システムを北海道など16都道府県で開発することが決定。近く第2弾として電子調達などの個別業務処理システムの開発分担も決まる見通しだ。システム開発段階から地方自治体を幅広く巻き込むことで、業務手順の見直しや業務効率の改善に向けた認識も共有化し、電子自治体に向けた各自治体の動きを一気に加速させる狙いでいる。(千葉利宏(ジャーナリスト)●取材/文)
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