キヤノンシステムソリューションズでは、ウイルス対策だけではなく、情報漏洩防止、ファイアウォール、外部からの攻撃からシステムを守ること(被害者にならない)や、社内から社外に攻撃をしない(加害者にならない)といったことまで、包括的なセキュリティソフトのラインナップをそろえている。事業規模やニーズに応じて製品を選択することで、誰もが適正な価格で製品を購入できるという。総合的なセキュリティソリューションを展開する同社に戦略などをうかがった。
総合的なセキュリティソリューションを展開
■「住友金属」から「キヤノンへ」
今年の1月10日、「住友金属」システムソリューションズは「キヤノン」システムソリューションズと社名を変更した。
「キヤノン販売グループになることによって、機器やソフトの単体の販売にとどまらず、お客様がやりたいことを、システムインテグレーションを含めて提供できるようになりました」と、キヤノンシステムソリューションズ、セキュリティソリューション事業部プロダクトマーケティング部の高本勉部長。
これまでは技術力を中心に製品作りを行っていたが、今後はキヤノン販売グループの販売力を生かした市場展開を行っていくことが可能になった。
キヤノンシステムソリューションズのパソコンソフト市場への参入は、1992年。Windows 3.1の時代である。当初は「CorelDRAW」や「Chameleon」などのソフトウェアを販売し、シェアを獲得していた。
1998年には、ネットワークセキュリティ機器として「SonicWALL」を発売。当時、大企業には既に「ファイアウォール」が導入されていたが、一般の企業にはまだ十分に認知すらされていなかった。
「当社でファイアウォールを扱うということは、ネットワークの要所をおさえるという意味でとても重要だ、と考えました。しかし、機器の価格が高ければ、中小企業には導入されません。当時、ファイアウォールは500万円程度の商品でしたが、その中で50万円で提供できるものを探しました。やっと見つけたのが“SonicWALL”です」(高本部長)。
現在、「SonicWALL」は5万台以上の販売を行っている。
一方「MP3 JUKEBOX」や「MemTurbo2」といったユーティリティも開発・販売している。これらの商品を、同社では「デジタルツールズ」と分類し、コンシューマ向け商品と位置づけている。「MP3 JUKEBOX」は、同ソフトジャンルのシェア65%を掌握するヒット商品となった。
しかし、コンシューマ向けのヒット商品を長期間にわたって売り続けるというのは、決して容易なことではない。
「ひとつの製品を長く売るという方向で考えると、ビジネス向けのネットワークセキュリティ製品が向いているのではないかという結論になりました」(高本部長)
そこで同社では、新たに「デジタルセキュリティ」というカテゴリーを打ち出し、「デジタルツールズ」と共に販売の2本柱とした。
■セキュリティ全体をサポートする「デジタルセキュリティ」という構想
「住友金属の時から行っているソリューションに、“Digital Security”というブランドがあります。これは、“インターネットセキュリティ”、“イントラネットセキュリティ”“PC環境セキュリティ”を3つの柱とし、総合的なネットワークセキュリティをサポートしていこうというものです」(高本部長)
3つの柱の1つである「インターネットセキュリティ」では、ファイアウォールとして、中規模企業向けの「SonicWALL」、小規模事業者向けのVPN商品「Snap Gear」などを発売。また、IISサーバーを各種攻撃から守る「SecureIIS Web」や、Webサーバーの脆弱性の検査を行う「WALLScanner Web」など、企業の顔であるWebを守るソフトも提供している。
「イントラネットセキュリティ」では、ネットワーク解析ソフト「eEye Iris」やネットワーク監視ツール「NetworkView」を販売しているほか、社内から社外への攻撃を防止する「DeonaWALL」の発売を予定している。「ウイルスやワームに感染して被害者にならないためだけではなく“加害者にならないため”にもご利用いただきたいとお伝えしております。企業のセキュリティには、自分を守るということのほか、他社を攻撃しないことによって信頼を守るといった意味あいも含まれている」と高本部長。不幸にも企業内でワームなどに感染しても、その被害を外に及ぼすようなことはなくなるとのことだ。
「PC環境セキュリティ」では、ウイルス対策ソフト「NOD32アンチウイルス」、データの流出を防ぐデータの完全抹消ソフト「O&O SafeErase」などを販売。「NOD32アンチウイルス」は、1992年に東ヨーロッパのスロバキアに設立されたEset社が開発したソフト。設立当初から、ヒューリスティック手法を用いたエンジンを採用し、圧倒的な検出率と検出速度が特徴となっている。中でもウイルスの検出率は、コンピュータウイルスの予防・認識および駆除に関する国際誌「VirusBulletin」のレビューで「最高の検出率」と評価されている。
■セキュリティの百貨店を目指して 総合的なセキュリティ対策というと、高度な技術や知識が必要となり、セキュリティコンサルタントなどを利用し、莫大な金額を投じて行うのが一般的だ。しかし、中小企業では、資金の捻出が困難で、セキュリティ対策を十分行えていない。キヤノンシステムソリューションズでは、それぞれの領域ごとに必要な機器や技術、ソフトウェアを提供することで、ほぼ完璧なセキュリティ環境を適正価格で実現できるという。
「500万円の製品は無理でも、50万円なら導入できるといったお客様に、適正価格でシステムを提供したいと考えています」と、高本部長。
「最終的には“セキュリティの百貨店”を目指していきたいと考えています。セキュリティ関連はキヤノンだと認識いただけるよう、今後も多くの製品を提供していきます。どんどん価格を安くするのではなく、エンドユーザーに手頃だけど販社さんにもきちんと利益が出るような適正価格がありますので、そういう価格帯でビジネスを進めていきたいと考えております。販売店や販社の皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
【BCNへのメッセージ】 BCN1000号、おめでとうございます。創立から22年といえば、IT業界を初期の頃から見つめてこられたということで、当社の2倍の歴史になります。とても素晴らしいと思います。常に中立な立場で情報を掲載されているので、信頼度も高いですね。情報も速いですし、こういった媒体の価値は今後一層高くなっていくと思います。今後もご発展されることを期待いたしております。