オービックビジネスコンサルタント(OBC)は今年も意欲的な動きを見せている。今年度の売上目標は130億円としており、「基幹業務システムを巡る環境は復調の兆しも見え始めてきたので、是非達成したい」と和田成史社長は話を切り出した。今年は「次のステージに踏み出す年」と位置付けており、新製品も数多く投入、販売促進面でも新機軸を打ち出す。「業界をあげて技術開発競争を盛り上げ、知財の認識を高めていきたい」と語る和田社長に聞いた。
秋には64ビット版も投入
■新ERP、3000社に納入
OBCの創業は昭和55年、平成5年7月には奉行シリーズを発売した。以来業務システムベンダーとして発展、昨年度(3月期決算)の売上高は124億4300万円、今年度は130億円を目標にしている。
和田成史社長は、これまでの実績について「累計ユーザー数は38万社、累計のシステム出荷数は56万システムに達した。現在力を入れているブロードバンド対応ネットワーク版は4万社、奉行新ERPシリーズは3年弱で3000社に納入した」と明かす。
現在の商品体系は、(1)財務会計系の「勘定奉行」、「建設奉行」 (2)人事給与系としては「人事奉行」、「給与奉行」、「就業奉行」 (3)販売・仕入・在庫管理を行う「商奉行」、「蔵奉行」 (4)顧客管理の「顧客奉行」 (5)固定資産管理の「償却奉行」 (6)申告書作成の「申告奉行」 (7)年末調整・法定調書作成の「法定調書奉行」 (8)エレクトロニックバンキングの「OFFICE BANK」 (9)奉行新ERPを拡張する「オプションコンポーネント」-となる。
「13シリーズにそれぞれ20バージョン、勘定奉行では24バージョンを揃えている。当社のメインユーザー層は400-500人規模以下の中堅・中小企業だが、ユーザーニーズをきめ細かく吸い上げてきた結果、こうした幅広い商品体系となった。今では、基幹業務に関してはほとんどのニーズに対応できる」と、和田社長は力強く語る。
■提案営業のできる体制軌道に
和田社長は今年を「IT再出発の年」と位置付けている。理由は、「ブロードバンドが新しい通信環境として定着し、業務システムもそれを前提にした機能アップが望まれている。また、IT投資減税が動き出し、ユーザーもIT投資に前向きになり出しているし、オフコン専用機のサポート終了で専用機からの乗り換えも動き出した。さらに2000年問題で導入したシステムの更新時期を迎えていることなどを考えると、業務システムにとっては向こう2~3年は非常に明るい環境にある」と見ているためだ。
そうした中で、さらにシェアアップを図るべく、今年もさまざまな施策を展開している。
「奉行新ERPシリーズの発売に当たって考えたのは、提案営業が出来なければならないという点で、そのためのパートナー組織として『OESP』(OBC ERP Solution Partner)や、コンサルタント営業ができる『OSAP』(OBC Solution Accounts Partner)を組織してきた。監査法人、ITコーディネーター、税理士法人など専門知識を持ったパートナーと幅広く連携できる体制を作ったが、この成果は奉行新ERPの販売ではっきり出ている」そうだ。
いま力を入れているのは、オフコン専用機からの乗り換えを促進するための「大手ハードメーカーとの提携」である。すでに富士通、IBMなどとの提携を実現させている。
「大手ハードメーカーさんの業務システムは、大手企業を対象にしているケースがほとんど。400~500人規模以下のユーザー層に売るには“奉行”がいいということで、当社製品も扱ってくださることになった。富士通さん、IBMさんのERPは当社の奉行新ERPとデータ連携ができるので、複合的な提案も推進できる」という。
新製品として、秋には64ビット対応版を出す。「高スピード化に対するニーズは極めて高い。情報系システムと基幹系システムのドッキングは時代の流れで、そうなると社員一人ひとりが基幹データにアクセスするようになる。この場合、違和感なく使えるようにするには、64ビットで高速化を図るしかない」と見ているためだ。
販売促進の面では、「奉行フォーラム2003」を今年の8月から全国規模で開催する。セミナーと展示会で構成、「検証データを使用したセミナーを行い、業務改善・経営改善ができることを感じてもらう」ことで販売促進に結びつける。パートナー主催のフォーラムとする意向で、OBCは運営支援を行う。
■本当の意味での技術開発競争を ところで、同社のファンクションキーに関する特許成立が業界で関心を集めている。同社の狙いは何か。和田社長は語る。
「私はかねがね、もっと知的財産権に関して敏感にならないといけないと考えてきた。私どもの目から見て、“ああ、真似されたな”と思えることは結構ある。自衛するためには、特許なり著作権なりを取得しておく必要があると考え、ソフト特許が認められて以降、積極的に特許取得にチャレンジしてきた。
長い時間をかけて行ってきた基礎技術などの研究開発の成果は、特許という形で守られるべき。強調したいのは、“業界をあげて技術開発競争を盛り上げ、知財の認識を高めていきましょう”という点だ。真似しただろう、などという低次元なところでのけんかはしたくない。新規性、進歩性を競い合い、特許を取れるものならお互いに積極的に特許を取る。そして、抵触するならクロスライセンスの形でお互いが発展する、そういうルールを早く確立しておかないといけない。たとえば、システムの世界でも中国は必ず台頭してくると思うが、対海外企業との競争を考えると、私はこの点で危機感を感じている」
確かに、日本のソフト業界は知財権に対する認識にはもう一つの面があるようだ。ソフトウェアでも技術立国日本を実現するために、「本当の技術開発競争をして、お互いの特許は尊重しあう」という和田社長の主張は、千金の重みを持っている。
【BCNへのメッセージ】 BCNさんの創刊号で、当社の新製品を1面で取り上げてくださったのを、いまでも鮮明に覚えています。当社の創業は、BCNさんよりちょっと早く昭和55年12月でしたが、実質的には同期生の戦友だと思っています。それにしても、お互い良くここまでこれたものですね。IT業界は、これからも有為転変を繰り返していくでしょうが、当社も必死で生き残っていくつもりです。BCNさんには、今後も業界をリードする紙面つくりに期待しています。