台湾が電脳の大国になると、派生するサービス機関や研究機関も必要となる。また、産業自体を影で支える調査機関や研究所なども政府主導で構成されるようになる。台湾を代表するIT関連の日刊紙「デジタイムズ(電子時報)」(台北市)を発行するデジタイムズ・パブリケーションの黄欽勇(コリー・フアン)社長は、東アジアのIT産業の未来に関して、日本からの技術移転の重要性を強調する。
「アジアは付加価値の拠点になるべき」

ITバブル崩壊後、多くの米欧ITメーカーは、台湾や中国などへ生産拠点や設計拠点を移した。
「これらの動きは、台湾にとって大きなプラスになった。これからも、台湾、韓国、中国は世界の電子製品とIT製品の製造拠点として重要であり続ける」と話す。
また、台湾、韓国、中国は低コスト製品の供給源だけでなく、最近はロジスティクスの中心にもなっていると言われる。
アジア全体での製造業のボリュームは金額的には大きいが、「マーケティングやソフトウェアに比べて付加価値が非常に低い。デルやヒューレット・パッカード(HP)などはサービスの部分が付加価値となっている。IBMが先導したソフトウェアサービスなどにデルも追従している」と話す。
黄社長によると、世界のノートパソコンの3分の2は台湾企業が受注しているという。「今年は全世界で3600万台のノートパソコンが販売される予想だが、そのうち2400万台が台湾の企業によって製造されることになる」と数字をあげる。
しかし、その利益率は10%程度にとどまり、決して割のいい仕事ではないという。
今後の台湾を含めたアジアの企業の命題はこの付加価値をどうやって高めていくかである。
台湾のIT業界は伝統的に輸出依存、OEM(相手先ブランドによる生産)依存で成長してきた。今後のチャンスは中国市場へのアクセスであると、黄社長は言う。
「携帯電話で世界一の市場、パソコンでも世界で有数の巨大市場である中国。ここへ進出し、付加価値を高めることで(台湾企業は)生き残っていくしかない」と話す。
中国のIT産業も成熟して、聯想や方正といったブランド力のあるIT企業が育っているが、彼らは必ずしも台湾企業の敵ではないようだ。
「実は、それらの会社は部品やユニットを台湾企業に依存している。マザーボードなど大半が台湾の会社から購入しているのが実情」らしい。
黄社長の分析では、将来を見た場合、台湾企業は日本の敵ではない。しかし、「日本と韓国の企業が同じ土俵で戦うと日本は市場を奪われることになる」という。
これに対抗するためには、日本から台湾にどんどん技術移転をして、台湾メーカーに生産させることで、韓国メーカーに対抗できることになると見ている。