その他
<BCN REPORT>全米オープンテニスとIT PDAを駆使して大会運営
2003/09/08 15:00
週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載
今日ではスポーツ界といえども、そのITへの依存度は高くなるばかりだ。データの分析から戦術の検討まで、どの競技でも大手のIT企業が大きく関与している。そしてそれは近年再び盛り上がりを見せるテニス界も同様で、一年中世界各地を転戦するテニスのプロツアーでは、IT技術はなくてはならないものになっている。8月25日から2週間にわたって米ニューヨーク州コロナパークで開催されたテニスの4大大会の1つ、USオープンでも、試合運営から選手の情報収集・戦略まで、幅広くITが利用されている。この大会でのIT活用と大会に参加する日本選手の声も交えながら、現代のプロスポーツ界のIT事情をお届けする。(ニューヨーク発)
選手の情報収集でIT活用進む
■開始時間もデータで判断
USオープンは以前からIBMがサポートしており、現在ではそのシステムは非常に重要な位置を占めている。
まず大会へのエントリーはインターネット経由だ。選手は、データベース化されたポイントによるランキングを元に、出場する大会を決め、大会の主催者に連絡する。シード順や試合のスケジュールからコートの振り分けまで、ポイントシステムが基準となっている。
試合開始時間や、試合と試合の間隔などもデータを元に検討され、選手間で不公平が生じないように配慮されている。
試合そのものもIT化されている。まず主審は携帯情報端末(PDA)持参でコートに入る。審判台の上でPDAを大会専用のネットワークに接続、スコアは逐一PDAに入力され、ネットワークを経由し、コートサイドのスコア表示はもちろん、大会本部や会場内の電光掲示板へ送られリアルタイムで表示される。
試合中、各選手のその日のショットの確率から、はてはライン上に落下したボールの軌跡まで、三次元画像解析技術を駆使して瞬時にデータ処理される。その一部はテレビ放送に利用されたり、試合を終えた選手へ提供されるほか、翌年の大会開催の参考資料とされる。
公式サイトではリアルタイムのスコア表示と共に、グッズの販売やオークションが行われており、出場選手のこれまでの成績やプロフィールなども入手可能だ。
大会への来場者数は、入口で専用のPDAで集計され、飲食店の売り上げなども瞬時にデータ処理されている。午後3時にホットドッグが何本売れたかが、リアルタイムでチェックできる程までにIT化されているのが、USオープンなのである。
■データの利用が好成績を生む
選手は、ITやインターネットをどのように活用しているのだろうか。大会に臨む日本のトップ選手数人に話を聞いた。
「ホームページをもつことによって、ファンとの交流が密になった」(森上亜希子選手)。「用具メーカーと迅速に連絡が取れるため、安心して試合に臨める」(鈴木貴男選手)。「家族や友人にメールすることが多い」(浅越しのぶ選手)。「リラックスするために、好きな音楽をダウンロードして聞いている」(吉田友佳選手)と、一般のユーザーと変わらないようだ。
8月14日(米東部時間)に起こった大停電では、米国滞在中の選手達は少なからず影響を受けた。「協会や主催者との連絡は電子メールが中心。このようなことがあると、ネット経由でのやりとりに少し不安を感じる」(森上選手)。
競技者としてのIT活用はどうだろう。スポーツ界には試合前のコンディションなど、データ化しにくい部分が多い。しかしその一方で、選手達はデータには驚くほどシビアだ。
「その日の気温や湿度を考え、ストリングスのテンションを5%ほど変化させる」(鈴木選手)。「相手の戦績やサービスの確率は必ずチェックする」(浅越選手)。
また、選手自身は競技に集中する為、データ分析は専任のコーチが担当する場合が多い。「練習メニューを細かく区分けし、その状況をきちんと記録して、その後の練習方法や戦略の立案に役立てている。これらのデータ分析が、ここ数か月の浅越選手の好成績に結びついていると思う」(浅越選手の専属コーチ、谷川美雄氏)。
「コーチが細かいデータ分析をしたうえで、練習内容を決める。試合中もPDAにメモしながら、後日内容を検討する」(森上選手)と、それぞれの役割分担ははっきりしている。
各選手は、「試合中はとにかく相手をきちんと観察することが大切」(鈴木選手)。「データは所詮過去のもの」(吉田選手)と、試合中は自身の判断を一番大切にしているようだ。
今後のIT導入について、全英オープンに続き今大会でも上位陣を破る大活躍を見せた浅越選手は、「テニスのランキングは、結局は負けず嫌いのランキング。勝利のためにIT技術が少しでも役立つのなら、これからももっと積極的に取り入れたい」と明快だ。IT化が進んでも、やはりスポーツの本質に変わりはない。
米プロスポーツ界では、専用の大規模なデータ処理システムなくしては、競技そのものが成り立たないとさえ言われる。また、野球やゴルフでは、一般のアマチュア向けに多くのデータ解析ソフトが流通しているが、テニス界では現在のところ確立されたシステムは見あたらず、トップ選手でも試行錯誤を繰り返しているという。
今日ではスポーツ界といえども、そのITへの依存度は高くなるばかりだ。データの分析から戦術の検討まで、どの競技でも大手のIT企業が大きく関与している。そしてそれは近年再び盛り上がりを見せるテニス界も同様で、一年中世界各地を転戦するテニスのプロツアーでは、IT技術はなくてはならないものになっている。8月25日から2週間にわたって米ニューヨーク州コロナパークで開催されたテニスの4大大会の1つ、USオープンでも、試合運営から選手の情報収集・戦略まで、幅広くITが利用されている。この大会でのIT活用と大会に参加する日本選手の声も交えながら、現代のプロスポーツ界のIT事情をお届けする。(ニューヨーク発)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…