その他
SCOのLinux訴訟 ユーザーまでも巻き込む
2003/09/08 15:00
週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載
米ソフト会社「SCOグループ」によるLinuxに対するUNIXライセンス訴訟は、単なるIBM相手の係争から、世界の大企業ユーザーまでを巻き込む騒動に発展した。一方、訴えられたIBMやレッドハットも逆にSCOを訴える訴訟合戦となり、騒ぎは簡単に収まりそうもない。Linuxライセンス問題は、業界で以前から危惧されていた課題だ。今回の騒ぎには、反Linuxのマイクロソフトの関与も噂される始末で、騒動は一層複雑化している。「知的所有権の厳守」は当然であり、議論の余地はない。しかし、ユーザーまでを巻き込んで影響範囲の拡大を画策しているSCOに対しては、世界の業界やユーザーからの非難の声が強い。(中野英嗣●取材/文)
OSビジネスの本質を問う議論に
■ソースコードの著作権所有を主張
2003年3月、UNIXソースコードの著作権所有を主張する「SCOグループ」は、IBMが自社のUNIXコードを無断でLinuxコミュニティに渡し、LinuxにUNIXコードが転用されたとして、IBMに10億ドル(1200億円)の賠償を求める訴訟を起こし、Linux騒動が始まった。
UNIXは元々AT&Tのベル研究所が開発したOSだが、その後、著作権はノベル、SCOへと譲渡されてきた。
IBMは当初、SCOの訴えを無視したが、SCOは賠償請求を30億ドル(3600億円)に引き上げるとともに、UNIXコードをライセンス契約で使用しているIBMのUNIX「AIX」の販売差し止め請求も行った。
さらにSCOは全世界フォーチュン1500の大企業に、「Linux利用ユーザーにも法的責任が及ぶ」との警告状を発送し、このライセンス問題はユーザーも巻き込む騒動に拡大した。
その後、SCOはユーザーに、1CPU当たり699ドル(8万3000円)のライセンス料支払い請求も開始した。SCOが自社コードの無断使用で訴えるのは、Linuxカーネル2.4以降のいわゆる「エンタープライズLinux」だ。
この問題について、日本企業に説明するため7月来日したSCOのダール・マクブライドCEOは次のように訴訟理由を説明した。
「SCOは、00年から業績が急速に悪化した。理由は自社のインテルUnixWareサーバー市場と見込んだ250万台が著作権無視のLinuxに奪われ、SCOが存続の危機に瀕していることだ」
■OSは社会公共財
SCOの一方的な訴訟にLinux陣営も反撃を開始し、ノベル、レッドハットに続いて、IBMもSCOの逆提訴に踏み切った。IBMはSCOの知的財産権は無効であると訴えると同時に、逆にIBM特許をSCOが侵害していると反撃している。
マイクロソフトの反Linux戦略との絡みもこのLinux訴訟をさらに複雑にしている。それは、IBMを訴えた直後、SCOがマイクロソフトとUNIXコードライセンス契約を結んだからだ。
この契約の目的をマイクロソフトは、「ウィンドウズとUNIXの互換性確保」と説明する。しかし、マイクロソフトは従来から社内で準備していた対Linux戦略の目玉は「ユーザーへのライセンス問題警告である」と当時米業界は噂していた。
「従って、今回のSCO行動の裏側にはマイクロソフトの陰がちらちらする」という米アナリストもいる。もちろんマイクロソフトは疑いを全面否定する。
米ウォールストリートには、「IT不況下、損害賠償訴訟も営業戦術の1つ。その場合の相手は巨大企業に限る」という皮肉な見方すらある。
一方、IT利用が高度に進んだユビキタス時代、OSは社会公共財(エッセンシャルファシリティ)であるという見解も業界に定着しつつある。
従って、今回の騒動は単にLinuxにとどまらず、OSビジネスの本質を問う議論の発端になればという期待もある。
Linux係争のITの巨人IBMが当事者であるだけに、オープンスタンダード普及を阻害しないためにも、スッキリした形の早い時期の決着が望まれる。
米国では大企業に続き、中堅企業にもLinux普及が急速に進んでおり、係争の影響は全くないようだ。
米ソフト会社「SCOグループ」によるLinuxに対するUNIXライセンス訴訟は、単なるIBM相手の係争から、世界の大企業ユーザーまでを巻き込む騒動に発展した。一方、訴えられたIBMやレッドハットも逆にSCOを訴える訴訟合戦となり、騒ぎは簡単に収まりそうもない。Linuxライセンス問題は、業界で以前から危惧されていた課題だ。今回の騒ぎには、反Linuxのマイクロソフトの関与も噂される始末で、騒動は一層複雑化している。「知的所有権の厳守」は当然であり、議論の余地はない。しかし、ユーザーまでを巻き込んで影響範囲の拡大を画策しているSCOに対しては、世界の業界やユーザーからの非難の声が強い。(中野英嗣●取材/文)
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