その他
NECのコンシューマ向けパソコン事業 リードタイム最短5日を実現
2003/09/22 21:12
週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載
NECは10月以降、パソコンショップで販売するコンシューマ向けパソコンの、受注から納品までのリードタイムを最短で5日に縮める。2001年に始まったパソコン事業の構造改革の集大成として「リードタイム最短5日」を実現する。これにより、流通在庫を従来の約3分の1に圧縮し、市場の変化にいち早く対応する。最短5日のリードタイムは、「デルのコンシューマ向け販売の納期よりも短い」と、販売店からは評価が高い。(安藤章司●取材/文)
流通在庫を従来の3分の1に圧縮
■「必要な数量だけ、必要な時期に」米i2テクノロジーのSCMを導入
NECは、「市場予測」、「生産体制」、「物流網」というパソコン流通の要となる3つの主要部分を個々に改善し、最終的にリードタイムを最短5日に圧縮した。01年の構造改革以前は3週間近くかかるケースが多かった。販売店からは、「売れるパソコンが、必要な数量だけ、必要な時期に店に並べられるのは歓迎すべきこと」と評価が高い。
「市場予測」は、米i2テクノロジーズのサプライチェーンマネジメント(SCM)システムを昨年11月に導入。昨年度に約30億円を投資し、今年度もほぼ同額の投資計画を立てる。これにより、市場動向を前もって予測・分析できるようになった。
「i2テクノロジーズの分析システムは昨年11月以来、精度の向上を図るための調整を続け、今年5月に本格稼働させた。しかし、今はまだ、システムの分析結果と担当者の長年の勘とを組み合わせて最終的な予測結果を算出している。これを機械だけで、ほぼ正確な予測数値を自動的に弾き出せれば、それだけ早く生産に取りかかれる」(宮本保之・パーソナル企画本部マネージャー)と話す。
「生産体制」は、山形県米沢市の米沢事業所を改善した。改善前は約7日間かかっていた生産を、3-4日に縮める。生産ラインを組まず、屋台方式(セル方式)と呼ばれる手法で、少量多品種を効率良く生産する仕組みをつくった。
1つの作業台(=屋台)に約5人を配置し、1人1日あたり約35台を生産し、1屋台で1日あたり約175台を生産する。需給バランスに合わせて生産する品目や屋台の設置台数を増減させることで、効率良く生産できるようにした。一方、まとまった一定数量が確実に売れる見込みが立つ商品については、中国へ生産拠点を移した。現在、パソコン生産全体のうち約4割を中国に移し、残り約6割を米沢事業所で生産する。
「物流網」も抜本的に変えた。これまで全国に13か所あった物流拠点を、東京都品川区に新設した総面積約1万平方メートルの大型倉庫「大井PCセンタ」1か所に統合。今年3月から統合作業を始め、7月までにパソコン本体など主要製品を大井PCセンタに集約した。これにより、販売店へ翌日配送(納品)できる対売上高比率を、統合前の32%から63%へと2倍近くに高めた。本格稼働は10月以降で、投資額は1億数千万円だった。
■翌日配送の比率を63%に、中国での生産比率が課題
これまで、コンシューマ向けパソコンの売上高に占める翌日配送の比率は32%、2日後の配送は60%、3日後の配送は8%だった。この比率を翌日配送63%に高め、一方で2日後の配送を32%、3日後の配送を5%にそれぞれ抑えた。地域別の翌日配送エリアでは、従来が東京23区および仙台市内だったのを、東名阪都市部および仙台市、静岡市、岡山市、広島市、高松市などに拡大した。
これらを総合した結果、市場予測に基づく販売・生産計画の策定に従来約10日かかっていた日数を1-2日に短縮、生産を約7日から3-4日に短縮。同時に、主要都市部で翌日配送が可能となったことで、これら短縮日数の最小値を足し合わせると、最も早いケースだと5日で販売店にパソコンが届く計算になる。
具体的には、パソコンが最も売れる土、日曜日の販売データを販売店からオンラインで集める。データのカバー率は、NECのコンシューマ向けパソコン売上高の約9割に達するという。
販売店からのデータは月曜日の昼頃までにNECの手元に揃い、同日の午後から市場変化の動向を需要予測システムで分析し始める。分析結果に基づき、生産計画を立て、販売台数を各販売店の実績に応じて割り当てる。その数は、原則として販売店が期間内に売り切れる分しか割り当てない。この作業は火曜日までで、その後の水-金曜日までの日程で実際の生産に取りかかる。
金曜日までに完成した製品は、翌日には売上高の約6割を占める主要都市の販売店へと届く。販売店は、土、日曜日の稼ぎ時に顧客の需要に合ったパソコンを店頭に並べられる。宮本マネージャーは、「正確に言えば、まだここまで完璧なものは出来上がっていない。だが、基盤整備は完了しており、実現可能な段階まできている」と語る。
NECの施策を受けて、販売店では「以前は根拠の薄い見込み生産をし、生産計画の数量が少なければ売り切れて、多ければ余った」、「SCMが稼働する前、販売店の多くはリードタイム期間である3週間分の店頭在庫を持つのが当たり前だった。そうでなければ品切れを起こし、商機を逃すからだ。これが1週間の店頭在庫で済めば、利益率が大きく改善する」などと評価する。
3週間から1週間へと在庫を圧縮することによる販売店のメリットは、(1)仕入れ資金を銀行から借り入れる際の金利を節約、(2)倉庫の賃借料を削減、(3)価格下落のリスクを軽減(商品周期の短いパソコンは、販売を始めた第1週の価格より、時間が経過した第3週の価格の方が下落している可能性が高い。その単価下落リスクを軽減できる)、(4)棚卸しの工数を削減、(5)市場動向に合った商品をいち早く店頭に並べることによる販売機会の拡大――などで、いずれも利益率を大きく左右する重要な要素である。
今後の課題は、中国での生産比率をどうするかである。NECでは、今年度中に売上高の約7割相当を中国での生産に切り替える方針だ。現時点では、まだ4割に過ぎない。しかし、今後中国生産の比率が高まれば、先の最短5日のリードタイムの実現比率は相対的に低下することにもなりかねない。
価格競争で勝つためには、中国での生産比率を高めなければならず、リードタイムを短くするには国内の米沢事業所をフル活用しなければならない。価格か、リードタイムの短縮かのバランスをどうとるかが課題だ。
NECは10月以降、パソコンショップで販売するコンシューマ向けパソコンの、受注から納品までのリードタイムを最短で5日に縮める。2001年に始まったパソコン事業の構造改革の集大成として「リードタイム最短5日」を実現する。これにより、流通在庫を従来の約3分の1に圧縮し、市場の変化にいち早く対応する。最短5日のリードタイムは、「デルのコンシューマ向け販売の納期よりも短い」と、販売店からは評価が高い。(安藤章司●取材/文)
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