その他
NECと富士通、パートナー向けIDC支援へ 自治体の公共需要を起爆剤に
2003/10/06 15:00
週刊BCN 2003年10月06日vol.1009掲載
NEC、富士通がパートナー販社向けのインターネットデータセンター(IDC)開設支援に力を入れている。NECは「パートナiDCサービス」の名称で、2004年度(05年3月期)までに全国50か所の開設を目指す。富士通もすでに昨年6月から「B-IDC」の名称で、全国30か所近いIDCの開設に漕ぎ着けた。いずれも、地域のパートナー販社との協業を前提としたIDCだ。両社はこれらパートナー販社によるIDCと既存の直営IDCを合わせて、全国網のIDCネットワークを構築。地域の需要に細かく対応することで、IDCの新規需要の創出を目指す。(安藤章司●取材/文)
全国規模のアウトソーシング網を構築
■今年度から来年度が開設のピーク、LGWANなどのIT需要が追い風
NECや富士通が、パートナー販社による地域IDCの開設支援の強化に乗り出すのは、自治体のアウトソーシング需要が、今年度(04年3月期)から来年度(05年3月期)にかけて、ピークに達することが背景にある。地域IDCの当面の役割は、こうした自治体向けの「公共IDC」として機能することになる。
自治体はまず、電子申請システムや電子受付システムなどの「フロントオフィス業務」の共同アウトソーシングを地域IDCに発注する。その次の段階として、市町村合併が一段落する05年度には、「バックオフィス業務」を巡る商談が本格化すると見られる。バックオフィス業務とは、主に財務会計システムなどの汎用的な部分のアウトソーシングを指す。
NECや富士通では、自治体がこれらの業務を民間のIDCにアウトソーシングすると、全国で新しく100-150か所の公共IDCの需要が生まれると予測する。
自治体案件の獲得には、地域振興の見地から地場のパートナー販社を起用する必要がある。そこで、NECや富士通ではパートナー販社への技術支援や営業支援を強化している。これが、NECの「パートナiDCサービス」、富士通の「B-IDC」だ。
ブランド名を冠したパートナー販社のIDCは、NECが来年度(05年3月期)までに全国で50か所の開設を目指し、富士通は今年9月末時点で、すでに全国23都道府県・計30か所近いパートナー販社との協業を主体としたIDCを開設している。
今年度(04年3月期)中には、全国3000団体余りの自治体すべてを結ぶ「総合行政ネットワーク(LGWAN)」が完成する。公共IDCはこのLGWANに接続する構造であることから、ASP(アプリケーションの期間貸し)サービスなど、今後自治体のIT需要を獲得するうえで有利だと言われている。
当面は電子申請システムなど、フロントオフィス業務を中心としたASPサービスだが、市町村合併が一段落し、新生自治体に相応しい基幹業務システムを導入する機運が高まると見られる05年以降のタイミングで、財務会計システムなどバックオフィス業務のASPサービスの受注を獲得できる可能性もある。
■JVでリスクを分散、大学や医療機関からの受注も視野に
地域のパートナー販社が新しくIDCを開設するには、“億単位”の先行投資が必要だ。「非常にリスキーなビジネス」(システムインテグレータ幹部)でもある。確実に案件を獲れる見込みがなく、可能性だけに頼ったビジネスは危険であり、リスク分散が求められる。
このため、「パートナー販社が単独でIDCを開設し、受注に漕ぎ着けるケースはそれほど多くない」(NEC関係者)とベンダー側は見る。従って、自治体から確実に案件を受注するには、地域のシステムインテグレータや通信事業者と共同企業体(JV)を組み、受注しやすい環境をつくる必要がある。
たとえば、1つの県にNEC系や富士通系、日立製作所系の有力パートナーが勢力を競っていたとする。競合関係にあるパートナー同士が一緒になってJVを組めば、自治体は、公平な発注という観点から、JVを選びやすい環境が生まれる。JVの中で、アウトソーシングの業務別や、ハードやソフトといった製品別に仕事を振り分け、利益を分配するだけでなく、億単位のIDC開設における投資リスクを各社で分散できるという利点もある。
NECや富士通のパートナー販社の多くは、ネットワークのインフラ部分に強いNTT系や電力会社系の施設の中にIDCを開設し、パートナー販社はインフラのうえに構築するアプリケーションやサービス・サポートを請け負うなどの役割分担をしているという。
NECの公共ビジネス部門幹部は、「NECのパートナー販社だけで、最低でも公共IDCの領域で30%以上のシェアは獲りたい。しかし、実際は富士通系のパートナー販社と組んだり、NTT系や電力会社系と組んだりと、リスク分散を兼ねたJVの比率が高まる。このため、大枠ではNECのパートナー販社が一部でも参画した公共ITの案件ベースで、全体の約50%のシェアを獲る方針」を打ち出す。
富士通では、「富士通およびパートナー販社による公共IDC分野におけるシェアを、最終的に4-5割獲得する」(天野順二・e-Japan推進統括部自治体第二ソリューション推進部長)方針を打ち出す。
NECや富士通の「パートナiDCサービス」、「B-IDC」は、これらIDCを開設するだけが目的ではない。全国のパートナーによる地域IDCをネットワークで結び、民間企業も含めた全国規模のアウトソーシング網を構築することに主眼を置いている。
自治体からの受注で安定的な収益を得つつ、さらに民間企業や大学、医療機関などからのアウトソーシング案件を増やし、収益源の多角化を目指す。パートナー販社が運営する地域IDCを前面に出しつつ、その背後で、直営データセンターを活用したASPやセキュリティサービスも視野に入れる。
富士通の浦野健一・アウトソーシング事業本部マーケティング統括部アウトソーシングビジネス推進部プロジェクト課長は、「大都市圏にあるメーカー直営のデータセンターの大半は、売り上げが民間企業向けで占める。これを、今回の地域データセンター整備を起爆剤として、全国津々浦々の公共・民需双方のIDC需要を取り込む」と話す。
現在、NECは首都圏や大阪府、広島県、愛媛県の全国7か所、延べ床面積約5万平方メートルの直営データセンターを運営している。富士通は、東京都内の東京システムセンタに加え、群馬県館林市に館林システムセンタ、兵庫県明石市に明石システムセンタの計3か所で直営データセンターを運営している。
今後は、これら直営データセンターと地域のパートナー販社によるIDCとをネットワークで結ぶことで、全国規模での分散処理や地域ビジネスの活性化を狙う。
NEC、富士通がパートナー販社向けのインターネットデータセンター(IDC)開設支援に力を入れている。NECは「パートナiDCサービス」の名称で、2004年度(05年3月期)までに全国50か所の開設を目指す。富士通もすでに昨年6月から「B-IDC」の名称で、全国30か所近いIDCの開設に漕ぎ着けた。いずれも、地域のパートナー販社との協業を前提としたIDCだ。両社はこれらパートナー販社によるIDCと既存の直営IDCを合わせて、全国網のIDCネットワークを構築。地域の需要に細かく対応することで、IDCの新規需要の創出を目指す。(安藤章司●取材/文)
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