その他
2004年3月期9月連結中間業績 明暗分かれる主要IT機器メーカー
2003/11/03 15:00
週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載
国内の主要IT機器メーカーの2004年3月期9月連結中間業績が出揃った。景気回復の兆しが見えるなかで、経営革新により着実な業績回復軌道に乗ったメーカーと、業績低迷から抜け出せない企業の色分けがはっきりしてきた。NECはパソコン事業の回復と携帯電話の好調により、中間最終利益を前期の収支トントンの状態から抜け出し、中期経営計画「創生21計画」の最終年度にあたる松下電器産業も中間純利益で前年同期比32%増を果たした。その一方で、ゲーム部門の伸び悩みやデジタルAV事業での遅れが響いたソニーは2万人規模の人員削減を発表。パソコン事業の立て直しの遅れにあえぐ東芝は、中間期での最終赤字幅が拡大するなど、事業変革のスピードで差がついた。(川井直樹・佐相彰彦●取材/文)
事業変革のスピードで差
■松下は改革が奏効、ソニーは人員削減へ
松下電器産業は、2001年度をスタートに03年度で終了する「創生21計画」の中で、「破壊」と「創造」をテーマに大胆な事業構造改革を実施してきた。特に今年1月には、グループ内の重複を無くすために事業分野(ドメイン)を明確にした新体制に移行。9月中間決算でも、「ドメイン別の事業体制が奏効した」(中村邦夫社長)と大胆な改革で復活のきっかけをつかんだと自賛している。
これと対照的なのがソニー。中間最終利益は前年同期に比べ66%減の340億円にとどまった。これまで好調だったゲーム部門が大幅な営業減益となり、赤字となったテレビ事業を含めエレクトロニクス部門の営業利益は前年同期比36%減の485億円となった。ソニーの出井伸之会長兼グループCEOは、10月28日に会見し、「ワールドワイドでの2万人削減」、「サムスン電子との液晶パネル合弁」、「固定費の3300億円圧縮」などを柱とする経営再建策を発表した。
■パソコン事業で明暗分ける、NECと東芝
東芝は、売価ダウンのため第1四半期(4-6月期)業績の足を引っ張ったパソコン事業が、第2四半期(7-9月期)にも継続してマイナス要因となっており、9月中間段階でのデジタルプロダクツ分野の営業損益は282億円の赤字。このうち、パソコン事業の赤字額は170億円を占めた。
同社は9月に、パソコン事業で海外体制の見直しや国内販売の統合など再建策を発表したが、「部材の価格が高止まっており、採算面では厳しい状況が続く」(笠貞純・執行役上席常務)と通期でも赤字を予想する。出荷台数ベースでは、昨年度(03年4月期)に比べ16%増の460万台を見込むだけに、売価ダウンとコストアップが業績に与える影響は大きい。
一方、NECは「6%の売価ダウン」(松本滋夫・取締役専務)の影響を受けるとともに、中間段階で出荷台数が前年同期比2%増の131万台にとどまるものの、固定費削減、原価低減が奏効してパソコン事業の損益の黒字転換を果たした。これによりITソリューション事業全体の営業利益を339億円(前年同期比41%増)に押し上げる要因となった。東芝の場合、海外パソコン事業の売価ダウンが大きく影響していることから、海外事業の有無が明暗を分けたことになる。
また、NECの場合、携帯電話の内外での出荷増が寄与した。海外向けの携帯電話は、通期で前年の5倍増の出荷を目指しており、上期ですでに3倍増を達成した。これらによりネットワークソリューション事業は、中間段階で売上高8525億円と前年同期に比べ21%の大幅増となり、通期でも売上高8850億円で同2%増になる予想。営業利益は上期250億円、通期300億円を見込んでいる。
なお、NECは7月に半導体事業子会社のNECエレクトロニクスが上場するなど子会社2社が上場しており、それらの株式売却益の計上による上場益537億円が利益の大幅改善に寄与した。
■ノート好調の富士通、日立はパソコンで2ケタの赤字
「我慢してきたことで、少しずつ芽が出始めた」と語るのは、富士通の小倉正道・取締役専務。この中間決算でもサーバー、伝送事業などのプラットフォーム部門が207億円の営業損失を計上したほか、ソフトウェア・サービス部門の営業利益も288億円と前年同期比44%減となるなど苦境に立つ状況には変わりないが、「金融向けの大口案件など下期偏重型の予算」(小倉取締役専務)とし、下期の復活にかける。
特にe-Japanに関連して事業開拓している公共部門の伸びが上期から効果を表しており、これとともに医療分野の増加も寄与。ソフトウェア・サービス部門のうちソリューション/SI事業の売上高は今中間期で4137億円となり、前年同期比2.6%の伸びになっている。
第2四半期(7-9月期)だけをみれば、全体の営業利益が198億円となり、ノートパソコンやHDD、プラズマディスプレイなどが好調に推移。フラッシュメモリー事業の米AMDへの移管、富士通リースの持分法への移行など減収要因はあるものの、プラットフォーム、電子デバイス事業でカバーし、通期で最終利益300億円を予想する。
日立製作所は、米IBMから買収したHDD事業が足を引っ張った格好だ。しかし、同事業を担当する子会社、日立グローバルストレージテクノロジーズの赤字幅は、「当初の見込みより赤字幅は縮小した」(八丁地隆・日立製作所執行役員法務コミュニケーション部門長)。
そのため第1四半期終了時点で予想していた中間期の営業利益150億円を、実際には202億円まで拡大できた。日立の場合、白物家電が冷夏の影響を受け、デジタルメディア・民生機器部門の営業利益が前年同期比87%減となった。情報システム部門では、パソコンが売価ダウンにより売上高が同7%減少し、営業損益については、「2ケタの赤字」(八丁地執行役員)と、東芝と同様にパソコン事業が収益に与える影響も軽微ではない。
景気動向に関しては、「IT不況の底を脱した」(各社首脳)という認識が一般的になっており、デジタルAVの伸長やパソコン、サーバーなどについてもe-Japan関連の需要増、企業のIT投資に復活などが期待できるという。
このため松下電器、NEC、富士通など、昨年度(03年3月期)は最終赤字だった各社が黒字転換を予想するほか、全社が増益を見込んでおり、NECは2年ぶりに6円(中間期3円)配当を実施する。
国内の主要IT機器メーカーの2004年3月期9月連結中間業績が出揃った。景気回復の兆しが見えるなかで、経営革新により着実な業績回復軌道に乗ったメーカーと、業績低迷から抜け出せない企業の色分けがはっきりしてきた。NECはパソコン事業の回復と携帯電話の好調により、中間最終利益を前期の収支トントンの状態から抜け出し、中期経営計画「創生21計画」の最終年度にあたる松下電器産業も中間純利益で前年同期比32%増を果たした。その一方で、ゲーム部門の伸び悩みやデジタルAV事業での遅れが響いたソニーは2万人規模の人員削減を発表。パソコン事業の立て直しの遅れにあえぐ東芝は、中間期での最終赤字幅が拡大するなど、事業変革のスピードで差がついた。(川井直樹・佐相彰彦●取材/文)
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