その他
政府・自治体のシステム構築に民間人 IT専門家を「即戦力」で登用
2003/11/03 15:00
週刊BCN 2003年11月03日vol.1013掲載
急ピッチで進む電子政府・自治体の構築に向け、システム構築の「即戦力」として民間人を「CIO(最高情報責任者)補佐官」相当職、およびそれに順ずる担当者として登用する自治体が増えている。体力のある特定の大手ITベンダーにシステム構築のイニシアチブを奪われ、業務システムが個別バラバラに行われてきた状況を見直し、調達側に能力の高いIT専門家を外部から招聘し、「主導権」を調達側に戻す動きだ。透明性のある情報システム調達が実現すれば、地場IT企業や独立系ITベンダーが落札する可能性が高まる。一連の動きが「IT産業全体の活性化」となるのか注目される。(谷畑良胤●取材/文)
大手ITベンダー支配が終焉へ
■佐賀県、民間人を「最高情報統括監」に
佐賀県は、11月1日付で「電子県庁」化にともなう業務プロセス改革(BPM)や、県内IT産業の育成などを担当する「CIO補佐官」相当職の「最高情報統括監(部長級)」として、民間のコンサルティング会社、アビームコンサルティング(旧ブラクストン)の井坂明氏(51歳)を登用した。
民間のIT専門家を、職務命令権などの権限を持たせて採用するのは全国初。アビームでは、パブリックセクター部門に通称“チーム井坂”を発足させ、「佐賀県庁の情報政策を全面的にバックアップする」方針だ。
民間のIT専門家を、電子政府・自治体構築のための「即戦力」として採用する動きは、昨年7月の「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」施行で増えてきた。
同法に順じて県条例を制定すれば、最長5年間の民間人採用が可能。現在までに、福岡、佐賀、長崎、岩手、熊本など7県で9人が「CIO補佐官」相当職に順ずる職として、情報システム会社やコンサルティング会社などから登用された。
電子政府・自治体の実現に向け、中央省庁・自治体では現在、メインフレーム(大型汎用機)の再構築や情報システム全般の見直しが進む。しかし、大手ITベンダーが各部門別に構築したシステムの仕様が複数乱立し、その多くは統一的な業務・システムの管理・把握が困難な状態にある。
この要因となっているのが、大手ITベンダーにシステム構築の上流工程から大半を任せていた、いわゆる“丸投げ”。これを打破するため、経済産業省では「調達側に能力の高い民間のIT専門家を据える必要性が高まった」(村上敬亮・商務情報政策局情報政策課課長補佐)として、BPM改革も担うことができる「CIO補佐官」を今年5月、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)などから3人招聘した。
■イニシアチブが取れるIT専門家を
「CIO補佐官」相当職に順ずる民間人を登用した前記7県の採用理由で共通しているは、経産省の主張に加え、「将来のIT技術の展望や動向に見識のある人材」であり、「地場IT企業・産業の育成強化に関する技術指導ができる」(迎出・佐賀県企画部地域・情報課参事)ことなどが条件という。
従来の政府・自治体システム管理では、メインフレームの“お守り”をしてもらうために、技術力のある大手ITベンダーに投資した。だが、最近の政府・自治体の情報部門には、透明性のある情報システム調達に加え、業務削減や市民サービスの向上などを数値化してROI(投資対効果)を評価し、無駄を省くやり方が重要になっている。こうした計画の立案にイニシアチブを取れるIT専門家が求められているのだ。
これら各県の動向は、「ひいては、情報システム調達市場に一定の競争を促進する効果をもたらす」(経産省・村上課長補佐)という。地場IT企業や大手ITベンダー以外で入札経験のない独立系ITベンダーなどが政府・自治体ビジネスで恩恵を受け、そこで技術的ノウハウを享受することにより、IT産業全体の発展につながることが期待されている。
急ピッチで進む電子政府・自治体の構築に向け、システム構築の「即戦力」として民間人を「CIO(最高情報責任者)補佐官」相当職、およびそれに順ずる担当者として登用する自治体が増えている。体力のある特定の大手ITベンダーにシステム構築のイニシアチブを奪われ、業務システムが個別バラバラに行われてきた状況を見直し、調達側に能力の高いIT専門家を外部から招聘し、「主導権」を調達側に戻す動きだ。透明性のある情報システム調達が実現すれば、地場IT企業や独立系ITベンダーが落札する可能性が高まる。一連の動きが「IT産業全体の活性化」となるのか注目される。(谷畑良胤●取材/文)
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