その他
NEC、ソニーなど経営計画を発表 海外シフト、人員削減などに取り組む
2003/11/10 15:00
週刊BCN 2003年11月10日vol.1014掲載
国内大手ITメーカーの2004年3月期9月中間決算が出揃うなかで、決算発表後にNEC(金杉明信社長)とソニー(安藤国威社長)が相次いで経営計画を発表した。成長分野に乗ったメーカーと、事業構造改革の遅れや商品戦略のミスが響いたベンダーなど、この中間期は明暗を分ける結果となったが、さらに各社は新たな方針を掲げて成長戦略の練り直しを始めた。景気回復といわれながら相変わらず先行き不透明な情勢のなかで、成長をかけた企業変革がスタートする。(川井直樹●取材/文)
成長をかけた企業変革スタート
■業績好転で6円復配
NECが掲げた中期成長戦略の要は、国内市場を中心とした安定的な成長基盤の確立だ。「3、4年後」(金杉社長)という漠然とした達成時期を掲げるが、成長基盤を確かなものにして「営業利益率7%、ROE(株主資本利益率)15%、D/Eレシオ1.0」の達成を目指す。
この目標を達成するために、国内10万ユーザーを超える既存顧客をベースに、新たなニーズの開拓によりシステムインテグレーション事業の拡大と強化を図る。加えて新規顧客の開拓も積極化、そのためにアウトソーシング事業規模を現在の1.5倍の1500億円に拡大するという。これにより、SIサービスで年平均5%の成長を維持していく考えだ。
04年3月期末で6円の復配に漕ぎ着けるなど、悪化していた業績の回復が確実なだけにターゲットも明確だが、固定費削減など構造改革は続く。国内市場での安定基盤確保を狙いながら、生産や開発などでの海外リソース活用は拡大する。
「国内での開発に比べて30-40%程度のコスト効果を生む」(金杉社長)ことから、03年3月期末の段階で2900人だった海外拠点の人員を、中期目標で最終的には4500人に引き上げる。海外への開発・生産シフトは行うものの、金杉社長は「国内の要員について削減などは考えない」と、自然減はあるものの現状の4万4000人体制を維持していく方針だ。
このほかにも、グローバルSCM(サプライチェーンマネジメント)の追求、CS(顧客満足度)、品質の徹底重視などを柱に、年間3000億円以上の固定費削減を目論んでいる。
■第2次構造改革、2万人削減
一方のソニー。10月28日に会見した出井伸之会長兼グループCEO、安藤社長ら経営トップは、デジタル家電に経営資源を集中することを明らかにし、国内7000人を含め、グループ全体で2万人を削減するというリストラ策を発表した。99年のピーク時で18万9700人いたグループの従業員は、02年までの第1次構造改革で16万1000人まで削減した。
今回発表した経営計画「トランスフォーメーション60」は、それに続く第2次構造改革というわけだ。この計画により、今年3月末で15万4500人の人員をさらに2万人削減するとともに、部品点数の大幅圧縮、サービス拠点の統廃合などにより、06年度(07年3月期)までに固定費を3300億円削減し、営業利益率10%以上の達成を目指す。
出井会長は、「06年度にソニーは60歳。再び赤ちゃんのようなフレッシュな会社に生まれ変わる」と宣言し、ソニー復活にかける意気込みは凄みすらうかがえる。
こうした発言の裏には、コンシューマエレクトロニクス分野でのビジネスの復活で、大きな差を見せつけられた松下電器産業(中村邦夫社長)の存在は大きいだろう。
中村・松下電器社長は、01年の年頭に子会社の再編をはじめとするグループ企業改革や、販売網の見直しなどを盛り込んだ中期経営計画「創生21計画」を打ち出した。その最終年度である03年度(04年3月期)は、中間期の段階でその効果が確実になった。
これまでの徹底した「破壊」で、事業ごとにグループ会社の統廃合を進めた結果が、今年度になって「ドメイン別体制やグローバル連結経営の成果に表れた」(中村社長)というわけだ。
松下電器は、薄型テレビの需要増にいち早く対応し、デジタルAV(音響・映像)への道を開いた。これからの地上波デジタル放送の開始などを視野に入れ、「V商品」と名付けた戦略商品の売上高は5650億円と伸長し、シェアアップにも貢献した。
シャープの町田勝彦社長は、かねてから「米国流の経営手法はとらない」という意味の言葉を語ってきた。「基盤技術は海外に出さない」という言葉通りに、同社を支える液晶の技術は全て国内で開発・生産している。
90年代から液晶事業には大規模な投資を続け、各社に供給するとともに自社製品の差別化にもつなげてきた。そのシャープの今中間期は、半期として過去最高の収益を達成し、1円増配し年間8円の配当を行う。
ソニーは、薄型テレビでの出遅れを挽回するために韓国サムスン電子と液晶パネル合弁設立で基本合意するなど、巻き返しへの布石を確実に打ちつつある。「トランスフォーメーション60」で新たなソニーに移行できるかどうか。「最強のコンスーマーブランドの確立」が、ソニーの経営計画の大きなテーマなのである。
国内大手ITメーカーの2004年3月期9月中間決算が出揃うなかで、決算発表後にNEC(金杉明信社長)とソニー(安藤国威社長)が相次いで経営計画を発表した。成長分野に乗ったメーカーと、事業構造改革の遅れや商品戦略のミスが響いたベンダーなど、この中間期は明暗を分ける結果となったが、さらに各社は新たな方針を掲げて成長戦略の練り直しを始めた。景気回復といわれながら相変わらず先行き不透明な情勢のなかで、成長をかけた企業変革がスタートする。(川井直樹●取材/文)
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