その他
中立的なITコーディネータ不足気味? 制度の定着に微調整が必要
2003/12/15 15:00
週刊BCN 2003年12月15日vol.1019掲載
主に中小企業の戦略的IT投資を支援する資格認定制度として、経済産業省の肝入りで「ITコーディネータ(ITC)」が発足して3年弱。最近、この制度自体の成熟度や問題点が見えてきた。全国にはITCの「コミュニティ」が数多くでき、「相談窓口」は増えたものの、「ITCの活躍が見えてこない」というIT企業側の声は多い。IT企業寄りでない中立的な立場で支援できるITCが不足気味だ。同制度を認定するNPO(民間非営利団体)法人のITコーディネータ協会は「経営とITに精通する人材が必要」としているが、養成過程や制度の運営方法などで、いまだに微調整が必要のようで、完全な定着までにはさらに時間がかかりそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
「コミュニティ」は拡大したが
■東京・江東区では「ITC江東」設立
東京都江東区に本社や本店を置くNECソフトや日本電子計算、日本ユニシス、ヤマタネなどのITベンダーに勤務するITコーディネータ(ITC)を束ね中小企業のIT化を支援する任意団体「ITC江東」(会長=村田萬亀雄・NECソフト執行役員兼システム開発事業部長)が、10月28日に設立された。区内の中小企業経営幹部や従業員向けに、セミナーや有料の経営指導を開始。江東区も相談料など費用の一部を負担するほか、関連団体や共同受注組合などを通じ、積極的な利用を呼びかけている。
幹事社のNECソフトは、人材活用施策の一環として、現在110人いるITCを今年度(2004年3月期)中に250人に増やす計画だ。4月にはITC主体の「コンサルティング事業部」を新設。「協会が示したシステム導入のプロセスガイドラインは役立つ」(国武洋・NECソフトコンサルティング事業部事業部長)と、同制度を利用して企業の経営戦略から分析したソリューション事業を拡充する。
大企業や官公庁向けのビジネスが主体のNECソフトは、「中小企業対象のITC業務は採算に合わない。だが、ITCの資格を取得しても実際の活用機会がなくては成長しない」(村田執行役員)と、「ITC江東」をスキルアップの手段として活用している。「ITC江東」での活動は、収益性を度外視した「現段階では地域貢献」(同)との認識だ。
■「中立的立場」の解決が課題
ITコーディネータ協会によると、ITCの数は11月末現在で2783人。実務経験を経てITCに認定されるITC補が1383人。内訳は情報処理技術者など有資格者の「情報系」と、中小企業診断士や税理士など「経営系」とで半々という。また、IT企業に属する情報処理技術者は全体の4割弱に達し、「ベンダーに寄らず中立的な立場で中小企業のIT導入のアドバイスをする」という本来の役目を果たせるITCは不足している。
IT企業に属するITCは、ユーザー企業の相談に応じる場合、自分が所属する企業の製品ばかりを薦めるわけにはいかない。つまり、IT企業にとっては、「直接的な営業には使えない資格」となる。しかし、NECソフトは「ITC江東や区役所など第3者を通じ、製造業や材木業などの組合レベルで一括受注できる可能性はある」(村田執行役員)と、期待している。
一方、IT経営相談では「中立的立場」でIT診断ができそうな「経営系」のITCだが、税理士や公認会計士などは「もともと、IT企業と中小企業の“橋渡し”をして仲介料をもらっていた」(大手業務ソフトベンダー役員)と、決して中立的とは言えない。公認会計士などがITCになる目的は「資格にハクをつけるためだ」(同)と、うがった見方もある。「ITを論じるには技術力が不足した人が多い」(システムインテグレータ関係者)と、「経営系」ITCの技術力に否定的な意見も少なくない。
企業がITCを自治体などの派遣制度で利用した場合は、ITCに対して1日3-5万円の謝礼を払う。その3分の2は自治体が負担するが、中小企業がその程度の金額を払うならば、安価で導入できる市販の業務ソフトを入れた方が負担は少ない。これまでにNPOや研究会として、ITCのコミュニティが全国91か所にでき、「中小企業の経営者が気軽に相談する場が広がった」(ITコーディネータ協会事務局の松下正夫・ITC補)と、実績も上がっている。今後はこうしたコミュニティの拡充がITC制度の浸透を左右することになる。
主に中小企業の戦略的IT投資を支援する資格認定制度として、経済産業省の肝入りで「ITコーディネータ(ITC)」が発足して3年弱。最近、この制度自体の成熟度や問題点が見えてきた。全国にはITCの「コミュニティ」が数多くでき、「相談窓口」は増えたものの、「ITCの活躍が見えてこない」というIT企業側の声は多い。IT企業寄りでない中立的な立場で支援できるITCが不足気味だ。同制度を認定するNPO(民間非営利団体)法人のITコーディネータ協会は「経営とITに精通する人材が必要」としているが、養成過程や制度の運営方法などで、いまだに微調整が必要のようで、完全な定着までにはさらに時間がかかりそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
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