その他
活発化するデジタル家電競争 見えてくるか、“AVとITの融合”
2004/02/02 15:00
週刊BCN 2004年02月02日vol.1025掲載
デジタル家電を巡る世界のメーカーの動きが活気を帯びている。ヒューレット・パッカード(HP)やデルといった米コンピュータメーカーが昨年からコンシューマ事業強化戦略を打ち出し、日本メーカーも新技術の開発や海外販売強化、増産への投資などデジタル家電をターゲットに活発な動きが目立つ。現在では、各社とも薄型テレビを大型商材に据えた戦略が中心で、薄型テレビ購入層をいかに取り込むかに焦点が集まっている。一方で今後、デジタル家電需要が急速に高まることを見越し、デジタル家電製品のそれぞれをネットワークでつないだり、機能の連携を見据えた総合戦略を打ち出すメーカーも登場してきた。需要の高まりとともに、メーカーのデジタル家電戦略は少しずつ新たなフェーズへと動き始めている。(木村剛士●取材/文)
メーカーの戦略は新たな段階に
■HP、コンシューマ事業を加速、松下はデジタル家電の“統合”へ
米HPのカーリー・フィオリーナ会長兼CEOは、1月上旬に米ラスベガス(ネバダ州)で開催された家電見本市「2004 インターナショナルCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)」の基調講演で、コンシューマ事業の加速を宣言した。世界有数のコンピュータメーカートップが、ターゲットを家電市場に定めたことは、デジタル家電の波を改めて世界に印象づけた一幕となった。
CESでHPは、32型と46型の液晶テレビや42型プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)テレビ、プロジェクタの発売、米アップルコンピュータの「iPod(アイポッド)」のOEM(相手先ブランドによる生産)供給による携帯オーディオプレイヤー市場参入を立て続けに発表し、一気にラインアップを揃え、他社を圧倒する戦略を披露した。
日本HPの馬場真・取締役副社長パーソナルシステムズ事業統括は、「コンシューマ市場は長い間、HPのビジネスの外にあった。今年の日本HPのスローガンである『飛躍』実現のためにはコンシューマ市場がカギになる。今年、カムバックする」と、日本においてもコンシューマ市場への復活を強調しており、ワールドワイドのHPの戦略に沿ってコンシューマ戦略を強化する方針だ。
フィオリーナ会長兼CEOは、デジタル家電の今後の方向性を「企業の情報システムにおいて、さまざまなアプリケーションやデバイスを統合するニーズが拡大しているが、家庭内でも同じニーズが生まれるだろう。HPは家庭内のデジタル家電を網羅し、スマートにコーディネートしていく」としており、企業情報システムでは当たり前のネットワークを家電にもあてはめ、“統合”を前提にトータルな戦略を推進していく考えだ。
HPは、製品ラインアップの発表以外にもあらゆるデジタルコンテンツを一元管理するデバイスの開発や、PDA(携帯情報端末)を統合リモコンとしてさまざまな家電を操作可能にする技術の開発なども進めていることも明らかにした。
デジタルカメラ、DVDレコーダー、薄型テレビなどのデジタル家電を戦略商品に位置づけている松下電器産業も、デジタル家電の“統合”を意識した技術開発を進めている。
具体的には、さまざまなデバイスをつなぐネットワーク技術を開発中で、家庭内に張り巡らされた電灯線を使って170Mbpsの通信を可能にすることを目指している。電灯線をネットワークケーブルとして利用し、配線を新たに行うことなく接続できるようにするのがポイントになる。
今年のCESでは、デジタルテレビと開発中のホームサーバーの間を電灯線を使ってネットワーク接続し、ホームサーバーにある動画データをテレビに映し出すデモンストレーションが披露され、その技術の一部が公開された。
松下電器の大坪文雄・専務取締役パナソニックAVCネットワークス社社長は、「簡単に接続できるネットワークがあれば、個人の生活をより豊かにできる。家庭全体をみたネットワークの活用方法を追求していき、ライフスタイルを一変させる」と話しており、ネットワークを含めた家電の統合提案戦略「life stream(ライフストリーム)」を掲げた。
■薄型テレビに力を入れるメーカー、将来はホームネットワークへ
一方、デジタル家電のカギとなる製品について、HPのフィオリーナ会長兼CEOは、「現在のテレビだけの機能にはとどまらない、あらゆるデジタルコンテンツを見られる製品を予定している。驚くべきモデルを紹介できるだろう」と、テレビの位置づけを重要視しており、「主軸はテレビにある」と語る。
このほか、海外メーカーも薄型テレビには力を入れており、韓国サムスン電子が世界最大の80型PDPテレビを開発したのを筆頭に、デルやゲートウェイといった米コンピュータメーカー、欧州勢ではオランダのフィリップスなども大々的に薄型テレビを登場させてきた。
AV(音響・映像)機器市場で世界をリードする日本メーカーも、薄型テレビをデジタル家電の事業戦略の中心に置いている。家庭用の液晶テレビをいち早く量産化し、昨年度最高益を叩き出したシャープの奥田隆司・取締役AVシステム事業本部長は、「テレビを中心としたホームネットワークの実現」を提唱。テレビを軸にホームサーバーなどと組み合わせたコンセプトで打って出る。
シャープは、今年初めに三重県亀山市の液晶テレビ生産工場の生産ラインを稼動させ、生産能力を約2倍に拡大した。05年度初頭には約3倍にする計画。松下電器も今年のCESで海外イベントでは初めて薄型テレビ「VIERA(ビエラ)」を展示。2400社以上の出展企業の中でもトップクラスのブース面積でアピール。海外での販売に力を入れていく姿勢を示した。
家電量販店、エイデンの岡嶋昇一社長は、「本格的な薄型テレビへの買い替え元年となるのが今年」と予測しており、薄型テレビを商材の中心として考えている。
「薄型テレビ市場の奪い合い」。デジタル家電を巡るメーカーの動きは、現状ではこの感が強い。だが、今後、どのようにホームネットワークを具体化するか。その時に、パソコンをどのように家電ネットワークに組み込んでいくのかといった部分の戦略はまだ見えてこない。
ソニーの木村敬治・業務執行役員常務は、「ホームネットワークがいよいよ本格化し、AVとITの垣根がなくなる」とし、「バイオ」の新たな付加価値創出が急務になっていると話す。
家電メーカーとコンピュータメーカーが混在するデジタル家電市場において、テレビ需要争奪戦後は、“機器のネットワーク統合”や“AVとITの融合”が、はっきりと見えてきている、と言っても過言ではないだろう。
デジタル家電を巡る世界のメーカーの動きが活気を帯びている。ヒューレット・パッカード(HP)やデルといった米コンピュータメーカーが昨年からコンシューマ事業強化戦略を打ち出し、日本メーカーも新技術の開発や海外販売強化、増産への投資などデジタル家電をターゲットに活発な動きが目立つ。現在では、各社とも薄型テレビを大型商材に据えた戦略が中心で、薄型テレビ購入層をいかに取り込むかに焦点が集まっている。一方で今後、デジタル家電需要が急速に高まることを見越し、デジタル家電製品のそれぞれをネットワークでつないだり、機能の連携を見据えた総合戦略を打ち出すメーカーも登場してきた。需要の高まりとともに、メーカーのデジタル家電戦略は少しずつ新たなフェーズへと動き始めている。(木村剛士●取材/文)
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