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中小企業庁、「中小企業IT化推進計画II」策定 経営革新重視のIT利活用を促す
2004/03/29 15:00
週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載
中小企業庁は、「中小企業IT化推進計画II」を3月22日に策定した。第1期策定(2001年4月)から3年が経過したのを受けて、これまでの「業務改善のためのIT化」から、「経営革新のためのIT利活用」へと大幅に見直した。中小企業市場をターゲットとするシステムインテグレータにおいても、従来の“ハコ売り”中心から、より経営革新に焦点を当てたIT利活用提案へとシフトする動きが活発化している。(SMB特別取材班)
“ハコ売り”中心からの脱却がポイント
■3つのステップでIT利活用をITコーディネータが重要な役割
第1期の「中小企業IT化推進計画」策定から約3年の間に、パソコンやインターネット、電子メールなどIT化の基盤となるアイテムは、中小企業全体の8-9割で導入が進んだ。これを受けて、3月22日に策定された「中小企業IT化推進計画II」では、IT基盤整備に続く政策として「経営革新のためのIT利活用」に焦点を当てている。
中小企業の経営革新に向けたIT利活用のステップとして、「基盤整備」、「業務改善」、「経営革新」の3つを挙げ、それぞれの段階に適したアプローチが必要だと推進計画IIでは分析する。第1期の推進計画で「基盤整備」がほぼ完了したことを受けて、推進計画IIでは、次の「業務改善」の段階に進んだ企業に対する支援強化を訴える。
「業務改善」のステップでは、単なるIT導入から一歩踏み込み、コストダウンやスピードアップなど、IT利活用による業務改善を実現できる「アドバイス・コンサルティング」が効果的だと指摘する。
さらに、最上位のステップである「経営革新」へと進んだ企業に対しては、国際競争力の向上など、事業拡大に向けた企業活動全体の最適化が必要になる。具体的には、業務の特性に応じた業務モデル(ベストプラクティス)実現に向けた支援が、システムインテグレータなどのITベンダー側に強く求められている。
今回の推進計画IIでは、「経営革新」により重点を置いており、ここで重要な役割を果たすのがITコーディネータなどの「アドバイス・コンサルティング」だ。
これまで、ハードウェアやパッケージソフトなどの“ハコ売り”が幅を利かせていた中小企業市場では、経営層に対するコンサルティングが足りず、「基盤整備」のフェーズから「業務改善」、「経営革新」へと引き上げる動きが弱かった。推進計画Ⅱでは、この弱点の克服を訴える。
もとよりIT導入については、「約9割の中小企業が『経営活動において重要だ』と認識しており、潜在的な需要は高い」(中小企業庁)という。しかし、ITを導入したものの、ハコだけ売りつけられ、導入効果が感じられないという中小企業が増えると、将来的なIT投資の意欲を削ぎ落とし、市場そのものが萎縮してしまう。
システムベンダーの多くが、中小企業の経営革新をアドバイスするコンサルタントの育成に力を入れているものの、往々にして「自社製品など利幅の大きい商材を売り込みたい」という力学が作用し、結果的に市場を上手く伸ばし切れないという背景がある。
三菱総合研究所の「平成15年度(03年度)中小企業におけるIT利活用に関する実態調査」によれば、IT投資を増加させたいと考える中小企業は全体の約6割に達した。しかし、過去にITを導入したが「効果が出ていない、どちらとも言えない」と認識している企業だけを抜き出して集計してみると、「IT投資を増加させたい」と考える比率は36.0%にとどまった。
逆に、ITを導入して業務改善などに「効果が出ている」と認識している企業を抜き出した集計では、「IT投資を増加させたい」と考える比率が76.2%と非常に高い。IT導入による“成功体験”が、次のIT投資を引き出す好循環を作り出している。
■業務改革でIT投資を打ち切る例も“現状分析型”から“理想追求型”へ
ITコーディネータ約100人を擁する日本アイ・ビー・エム(日本IBM)では、ITコーディネータを業務改善や経営革新を推進するコンサルタントと位置づけ、中小企業の経営者向けにコンサルティング活動を展開してきた。
この結果、既存顧客の満足度の向上に加え、新規顧客の開拓にも結びつくという効果が出てきた。
日本IBMの番匠哲次・ゼネラル・ビジネス事業事業企画経営品質担当部長は、「経営層にコンサルティングという切り口で直接アプローチすることにより、これまで当社とは接点がなかった他社ユーザーへの進出が急増した」と成果を話す。
ただ、業務改革・経営革新のコンサルタントとして中小企業へアプローチすると、従来の商材が売りにくくなる可能性もある。
中小企業の経営革新に詳しいアルゴシステム創研の山田勝弘社長は、「業務改善を進めていくと、IT化を予定していた業務そのものが省略可能な業務だと判明して、投資を打ち切るケースも出てくる」と分析する。業務改善に必ずしもITが万能ではないわけで、こうした事実を素直に受け入れる度量がベンダー側に求められる。
「これまでの中小企業に対する売り方は、たとえるならば『あなたの洗濯機には、乾燥機能がついていません。今度は、乾燥機と一体となった当社の洗濯・乾燥機を買いましょう』という“現状分析型”の切り口だった。そうではなくて、『そもそも、あなたの生活に洗濯機は必要でしょうか? 外注に出すという方法もある』など、業務の見直しを通じた“理想追求型”を求める姿勢が大切」と、山田社長は話している。
中小企業庁では、「作業現場における無駄をそのままにしておいてITを導入しても、無駄を含んだ自動化になるとの声も聞かれる」と指摘する。中小企業庁の深瀬昭・技術課産学官連携二係長は、「突き詰めて考えれば、中小企業の満足度をいかに高められるかがポイント」だとし、中長期的な関係作りが大切だと語る。
日本IBMの番匠部長は、「どれだけの期間でビジネスを捉えるかの問題」とし、短期集中で無理にIT製品を売り込むのではなく、じっくりと顧客と一緒になって経営革新を推進するなかで、次の投資を引き出すことが大切だと強調する。日本IBMでは、ビジネスパートナーとも連携をしながら、経営コンサルティングを中心とした営業体制の強化に取り組んでいる。
経営コンサルタントとして顧客の経営にアドバイスすることを通じ、「これまでIT投資の部分しか見えていなかったのが、その企業の投資活動全体を把握できるようになる。これにより、限られた部分のIT投資を他のベンダーと奪い合うより、ビジネスチャンスは大幅に拡大する」(番匠部長)と考える。
中小企業のIT投資が新しいフェーズに移行しようとしている今、ITベンダーと中小企業との関係が改めて問われている。
中小企業庁は、「中小企業IT化推進計画II」を3月22日に策定した。第1期策定(2001年4月)から3年が経過したのを受けて、これまでの「業務改善のためのIT化」から、「経営革新のためのIT利活用」へと大幅に見直した。中小企業市場をターゲットとするシステムインテグレータにおいても、従来の“ハコ売り”中心から、より経営革新に焦点を当てたIT利活用提案へとシフトする動きが活発化している。(SMB特別取材班)
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