その他
JDLの無料ソフトが業界に波紋 「理解できない」、非難の矢面に
2004/04/12 15:00
週刊BCN 2004年04月12日vol.1035掲載
会計専用機大手の日本デジタル研究所(JDL)が、同社の経理ソフト「JDLIBEX出納帳3」の機能限定版を4月1日から無償配布開始した波紋が業務ソフトウェア業界に広がっている。JDL以外の各社は「一時的に自社ソフト売り上げへの影響はある」と、警戒感を強めている。JDLは、4月1日からの改正消費税の施行で中小企業や個人事業者に「経理ソフトの裾野を広げる」ことが目的だと強調するが、「パソコン量販店の理解は得られないだろう」と、JDLの手法に業務ソフト業界から非難の声が高まっている。経理ソフトを購入しようとする顧客の購買動向が読めないだけに、パソコン量販店や大手ディストリビュータは静観するしかないが、JDLの無償配布が評判を呼べば、業界の混乱は避けられない。(谷畑良胤●取材/文)
市場に一時的な混乱も
■初心者向け経理ソフトの影響大
JDLが無料ソフト「JDLIBEX出納帳3カジュアル」の配布を開始したことで、販売面で最も影響を受けそうなのが、経理業務の初心者層にターゲットを絞った経理ソフトを出しているBSLシステム研究所(BSL)だ。「基本的なお金の出入りは管理できる」というJDLの無料ソフトと、BSLの主力経理ソフト「出納らくだ」シリーズの機能を比較すると、ほぼ同等である。
今回の無料ソフト配布について、BSLの小野秀幸社長は、「当社製品が売れなくなる可能性はある」と、販売への影響を深刻に受け止める。しかし、JDLの無料ソフトに対するサポート体制が、ウェブを主体にしているため、「経理ソフトの初心者には、電話で対話しながらのサポートが重要だ」(小野社長)と、サポート体制の不備を指摘し、そこを弱点と見る。
BSLは、8年前に経理ソフトを初めて発売。それ以来、「挫折撲滅キャンペーン」と題し、初心者向けのサポートを継続的に進めてきた。この戦略が実り、「出納らくだ」から、他社の経理ソフトに乗り換えたユーザーは、「8年間で片手で数えられる程度」(小野社長)という自信がある。
JDLのサポート体制不備については、「かんたん経理4」を出すミロク・ユニソフトの三木正志社長も指摘している。三木社長によれば、JDLの無料ソフト配布について、「2つの反響が起きるだろう」と推測する。
1つは、ユーザーが無償ソフトに流れ、一時的にJDL以外の経理ソフトが売れなくなること。2つ目は、「無料ソフトを使っても、結局、機能に満足しなかったユーザーがパソコン量販店に足を運び、JDL以外の経理ソフトを購入する」(三木社長)という図式だ。JDLが言う「経理ソフト市場の裾野を広げる」ということには効果をあげても、決してJDLユーザーの拡大にはならないという。
■「量販店への配慮欠く」と批判も
JDLは、パソコン量販店にも無料ソフトを並べることを検討している。それも、「ユーザーの裾野拡大」(森崎利直・取締役マーケティング本部長兼広報担当部長)のためと主張して憚らない。各業務ソフト会社は、経理ソフトの無料版を使用期間限定の「体験版」として量販店に置いたことはある。しかし、JDLの無償ソフトに対しては、業務ソフト会社の多くが、「“禁じ手”だ。量販店の購買の苦労を分かっていない」(ミロク・ユニソフトの三木社長)、「会計事務所に顧問企業を誘導するだけで、量販店の流通への配慮に欠ける」(弥生の相馬一徳・執行役員営業本部担当)と激しい非難を浴びせる。
機能が大幅に制限されたこれまでの無料体験版は、「市販の経理ソフトの購入に結びつける重要な拡販材料になる」(三木社長)が、JDLの無料ソフトは、量販店の売り上げに結びつかない、と断言する。
弥生も「JDLに見込み客を取られる可能性があり、量販店の理解は得にくい。店頭から(JDLソフトの)在庫がなくなる、という覚悟があるのか」(相馬執行役員)と厳しい。量販店がJDL製品を扱わなくなる可能性すらあるという。
JDLの経理ソフトを量販店に卸すソフトバンクBBはJDLの無料ソフト配布ついて、今回は「ノーコメント」(広報室)と静観する考え。東京・秋葉原の大手量販店のあるソフト販売担当者も、「様子見の状態だ」という。
各業務ソフト会社は、「売り上げへの影響はある」と口を揃え、市場の動向を注視する。ただ、無料ソフト配布という手法が市場拡大に結びつくのであれば、競合企業は戦略転換を余儀なくされる。しかし、顧客の購買動向が読めないだけに、今の段階でJDLの無料ソフト配布というビジネス手法を評価することは早計だろう。
会計専用機大手の日本デジタル研究所(JDL)が、同社の経理ソフト「JDLIBEX出納帳3」の機能限定版を4月1日から無償配布開始した波紋が業務ソフトウェア業界に広がっている。JDL以外の各社は「一時的に自社ソフト売り上げへの影響はある」と、警戒感を強めている。JDLは、4月1日からの改正消費税の施行で中小企業や個人事業者に「経理ソフトの裾野を広げる」ことが目的だと強調するが、「パソコン量販店の理解は得られないだろう」と、JDLの手法に業務ソフト業界から非難の声が高まっている。経理ソフトを購入しようとする顧客の購買動向が読めないだけに、パソコン量販店や大手ディストリビュータは静観するしかないが、JDLの無償配布が評判を呼べば、業界の混乱は避けられない。(谷畑良胤●取材/文)
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