BTO（受注生産方式）パソコンの販売に乗り出す組立パソコン用パーツ流通業者が増えている。海外パーツメーカーと国内販売契約を結んでいる強みを生かし、さまざまなパーツを組み合わせてパソコンを製造。小ロットの受注にも対応しており、コンシューマから企業まで、顧客のニーズに合わせた幅広い製品を提供している。パソコン専門店や家電量販店向けに、未完成パソコンのベアキットやショップブランドのオリジナルモデルを卸している業者もいる。これまでパーツ販売の要であったマザーボードの低価格化が進み、市場規模が縮小していることから、新たにBTOパソコンへビジネス領域を広げ収益確保につなげる狙いだ。（佐相彰彦●取材／文）

マザーボード市場の縮小が背景に

■自社ブランド品を発売

　ギガ・バイト製品の販売代理店であるリンクスインターナショナルは、同社製オリジナルパソコンの販売を今年8月末をめどに開始する。パソコンの販売は初めてということもあり、ユーザーニーズの度合いを調べるため、まずは同社のサイトのみで発売する。川島義之社長は、「ニーズがあれば、パソコン専門店や家電量販店に卸していきたい」意向だ。

　シネックスでも、自社ブランドのパソコンを近く発売する。同社は「これまでも、組立パソコンのニーズに対応してきた」（小島宏・業務部プロダクトマネージャー）経緯があり、エム・エス・アイ・コンピューターのマザーボードを中心に、さまざまなパーツを組み合わせ、企業を中心に顧客を獲得してきた。

　今後は、自社ブランドのパソコンを新しく製品カテゴリーに加えることで、パソコン専門店や家電量販店向けにパーツを含めた卸事業を拡大するとともに、システムインテグレータなどとの協業で企業顧客を増やせる体制が整うことになる。

　恵安では、2002年から法人ビジネスを手がけており、自社ブランドのBTOパソコンを提供。サーバーも自社開発しており、中小企業を中心に法人顧客を開拓している。パソコンは、5万円程度と低価格に設定。法人ビジネスの責任者である国安卓美・PCペリフェラル営業部副部長は、「システムインテグレータとの協業でシステム案件を手がける際、低価格パソコンは有力なアイテムになる」と強調する。

■新ビジネスで利益を確保

　このほか、自社ブランドでの提供ではないものの、ショップブランドのオリジナルモデルを提供する“黒子”ビジネスに乗り出したパーツ流通業者もいる。

　ユニティコーポレーションでは、パソコンの卸事業を昨年2月に開始。同事業は、ショップブランドモデルの販売に加え、ショップがコンシューマユーザーから受けたBTOパソコンの注文に対し、同社がパソコンの組み立てを行うという“黒子”ビジネスだ。

　今年7月の時点で10社程度のパソコン専門店や家電量販店などと契約している。出荷台数は、2003年は約7000台にとどまったが、今年に入ってから1か月平均2000台で推移。斎藤敬・第一営業部長は、「今年は3万台の出荷台数は見込める」と、一気に4倍以上の規模に引き上げる方針を掲げる。

　パーツ流通業者がパソコンビネスに事業領域を広げ始めたのは、パーツだけでは利益を確保するのが厳しくなっていることが最大の要因。BCNランキングによると、パーツ販売の核であるマザーボードが台数と金額ともに前年割れの状況にある。メーカーサイドでは、「マザーボード単品で機能面の差別化を図ることが難しくなった」（日本ギガ・バイトの井上友之・マーケティグ部マネージャー）という声も挙がっている。しかも、マザーボードの低価格化には歯止めがかかりそうにない。

　パーツ流通業者にとっては、マザーボードで利益を確保することが難しくなり、ビジネス自体の存続が危ぶまれる可能性が出ている。このため、BTOパソコンの販売を新規ビジネスとして確立することで、パソコン専門店、家電量販店とのパートナー関係の強化や企業顧客の新規開拓などで利益を高めようという狙いがある。