パソコン拡販の決め手の1つは顧客満足度(CS)の向上だ。コンシューマ向けパソコン市場が低迷するなか、NECパーソナルプロダクツ(片山徹社長)が2004年7月1日付でパソコン修理および中古パソコン再生会社のNECカスタムサポートを統合した。これにより商品企画から開発、生産、保守・サポートまでを一貫して行う体制が整った。パソコン販売拡大のカギを握る保守・サポート拠点、群馬事業場(群馬県太田市)でCS向上の現場をみた。(佐相彰彦)
顧客満足度の向上に貢献
■1日8000件の問い合わせに対応 NECパーソナルプロダクツの群馬事業場は、パソコン修理、中古パソコンの再生拠点として位置づけられている。また、電話によるサポートサービス「121コンタクトセンター」の拠点としても機能している。
ユーザーのパソコンに関する問い合わせに対して、24時間365日体制で対応するのが121コンタクトセンターだ。この群馬事業場でコールセンター業務に携わっている人員は約250人。1日平均の問い合わせ件数は約8000件にのぼる。
センター内には、各サポート担当者がユーザーへの対応状況を把握できる大画面のスクリーンを設置。このスクリーンに、問い合わせへの対応が終了してサポート員がシステムの入力を行っている段階を「赤」、ユーザーの電話に対応中であれば「青」、ユーザーが電話でのサポートを待っている状況を「緑」と、ユーザーへの対応状況に応じて3種類の色で表示する。
このスクリーンを見ながら、各サポート担当者が的確な作業を行い、業務効率の向上につなげている。同社が実施したユーザーアンケートでは、121コンタクトセンターを活用したユーザーの95%が「非常に満足している」と高い評価を出しているという。
02年7月以前は、パソコンの使い方相談や故障診断、修理受付など受付窓口の電話番号が分かれていた。現在ではワンナンバー体制に移行し、CS向上に貢献している。
■パソコン修理は全国50%をカバー ワンナンバー化により、修理が必要と判断された場合のみ、ユーザーはパソコンを修理に出せば済むようになった。
故障診断における問い合わせは、ソフトウェアの設定などを行っていなかったことなどによるものが半数を占める。つまり修理に出す前に、ユーザーが問い合わせただけで解決してしまうことも多い。また、121コンタクトセンターで故障診断を行い、修理が必要であればその場で受け付けることが、ユーザーにとってメリットになっている。
修理が必要な場合は、保証期間に関わらず、(1)集配料が無料の「あんしんサービス便」、(2)NEC製品を取り扱っている量販店への持ち込み、(3)NECの営業所への修理依頼──という3種類の受付窓口がある。現在、量販店への持ち込みが45%と最も多く、次いであんしんサービス便の利用が30%、同社の営業所経由が25%という。
着荷した修理品は、まず添付品も含めてチェックし、そのデータを記録する。その後、ノートパソコンやデスクトップパソコン、プリンタ、テレビなどに分けられた修理ラインに運ばれる。ラインは、診断から修理、完了作業までを1人の作業員で行う。作業は、機種ごとに用意されたウェブメンテナンスマニュアルを参考に進めていく。
同事業場が修理拠点に転換した02年7月時点では、全国47都道府県の7%しかカバーしていなかった。それが昨年7月には50%に拡大。修理台数は1か月平均で3万台弱に上っている。

中古パソコンの再生では、筐体のクリーンアップで新品と同様に仕上げているほか、電源ケーブル類をすべて新品に交換。HDD(ハードディスク装置)のデータ消去は、米国防総省の標準規格を採用した専用ソフトウェアを開発した。データ消去後は、一部アプリケーションソフトウェアの削除や電子マニュアルのインストールを自動的に行い、中古パソコン用のバックアップソフトCDを自動作成する。工場内には、CDライターを8台設置、1日で最大800枚のバックアップCD作成が可能だ。
再生ラインは、20人のスタッフが作業を行っている。同社がリユース事業を開始したのは03年7月。1年間で累計で1万台程度の中古パソコンを出荷している。
■商品企画とサポートの連携強化を目指す 群馬事業場は、かつてデスクトップパソコンの開発・生産工場だった時代がある。それが生産の中国移管など体制の変更で、02年7月にNECカスタムサポートとして、サポートサービスだけを手がける拠点に変わった。今年7月にNECパーソナルプロダクツがNECカスタムサポートを吸収合併し、NECパーソナルプロダクツの群馬事業場となった。
片山社長は、「NECカスタムサポートを吸収したことで、商品企画からサポートサービスまでの一貫体制が整った。今後は、サポートサービスで吸い上げたユーザーの声を製品に生かすなど商品企画と保守・サポートの連携を強化していく」と強調する。
企業向けパソコンの販売が徐々に明るい兆しをみせている一方で、コンシューマ向けパソコン市場は伸び悩んでいる。製・販・サポートが一体となり、魅力的な製品開発とサポートの充実を図り、どう需要につなげていくか。群馬事業場もその一翼を担う存在として重要な拠点の1つだ。