国内大手ITメーカーの2004年度(05年3月期)第1四半期連結業績が出揃った。景気回復が鮮明になりつつあるとあって、各社ともに業績は「回復基調にある」と口を揃える。だが、ITサービス事業ではハード単体を中心に「価格競争は激化している」と、案件数は増えるものの単価下落の影響で利益確保を難しくしている。一方、パソコン事業では、通期で出荷台数増加を各社見込むものの、第1四半期では前年並みの状況。外資系メーカーの低価格攻勢や、デジタル家電の台頭といった需要に対する懸念材料もあり、楽観視できる状況ではない。
■NECは大型案件増で2ケタ成長、富士通、日立は前年同期並みに
大手ITメーカーの04年度(05年3月期)第1四半期連結決算におけるITサービス事業は、売上高でNECが大型案件の受注増などで2ケタ成長したものの、富士通、日立製作所の両社は共通して、「(価格競争が激しく)今期は売り上げレベルが低かった」(富士通)と、増収の予想に反して前年同期並みに落ち着いた。この3社に比べ、売上高に占めるITサービスの構成比が低い三菱電機は、売上高で前年同期を上回っている。
ほとんどの大手ITメーカーでは、システム構築の案件の数は、例年より増えているようだが、「価格競争激化の影響は大きい」(的井保夫・NEC取締役常務)と、大幅な収益増を見込めない状況にある。NECは、ITソリューション事業のうち、ハードを除いたシステムインテグレーション/サービス部門の売上高が1483億円で前年同期に比べ12.7%増えた。官公需向けと民需向けの両面で堅調に推移した結果だ。
また、大型案件の受注でサーバーなどプラットフォームの出荷が増えた影響で、関連のソフト部門の売上高も前年同期比28.1%と大幅に増加した。NECは、「厳しい顧客要求は継続している」としながらも、ハードの原価低減など採算性の改善効果で、システムインテグレーション/サービス部門の営業利益が前年同期比82億円増え、137億円となった。

昨年度の第1四半期でソフト・サービス事業の営業損益で109億円以上の赤字を計上した富士通の今年度第1四半期業績は、営業損益が73億円の赤字に改善した。英国の富士通サービスが昨年度、政府系大型案件をアウトソーシングで受注した商談が収益に寄与したことで、国内の需要が例年並みだった状況をカバーした。しかし、富士通のソフト・サービス事業全体は売上高3845億円で前年同期比0.3%増でほぼ横ばい。しかし、ソリューション/システムインテグレーション部門だけを見ると、売上高1467億円で前年同期比5.2%減。これに対して富士通は、「いくつかのプロジェクトで採算性が悪化し、Linux対応の先行投資が響いた」(小倉正道・富士通取締役専務)と、減益の要因を分析する。それでも、4月時点で公表したソフト・サービス事業の年間収益予想である営業利益1700億円は、「プロジェクト管理など、常に適正な収益を確保する構造へ転換を図っている」と、期初の予想値を変更しない方針だ。
日立は情報通信システム事業全体ではハードディスク(HDD)が好調に推移し、売上高が前年同期比7%増の4804億円と伸びたが、ソフト/サービス部門は、詳細な業績を公表していないものの、「メインフレーム需要の低下で基本ソフトが落ち込んだ」(八丁地隆・日立製作所執行役専務)と、汎用機ビジネスが足を引っ張ったために前年同期並みにとどまった。一方、情報通信システム事業のうち、三菱電機は情報システム・サービス部門がアウトソーシングなどが伸長して、売上高が前年同期を上回った。
今年度の企業のIT投資について、「全般に緩やかな回復基調にある」と分析するが、価格低減要求は強く、導入提案から契約、システム構築、保守に至るまでのプロジェクト管理を、今以上に徹底する必要に迫られている。
■依然厳しい個人向けパソコン事業、影響大きいデジタル家電
昨年度(04年3月期)、パソコン事業で営業損益220億円の赤字(02年度は110億円の黒字)を強いられた東芝。国内外で間接人員500人のリストラを行い、部品点数ではマザーボードの数を24から12に減らすなど、地道なコスト削減を続けてきた。
第1四半期は、米国や欧州など海外市場向け販売が伸長し、出荷台数は前年同期比22%増の550万台となった。売上高も期初見通しを9ポイント上回り、同14%増の1620億円となり増収を達成。海外向け出荷台数は前年同期に比べ80万台増え420万台。国内向けは20万台増の130万台と前年同期を大幅に上回り、特に頼みの海外向け販売が引き続きけん引役となっている。
パソコン事業の営業損益は36億円の赤字となったものの、赤字幅を前年同期に比べ82億円圧縮し、「今年度通期の黒字転換に向けて順調に進んでいる」(西田厚聰・東芝取締役執行役専務)。今月6日に投入したAV(音響・映像)機能を強化した新ブランド「コスミオ」の販売が、どれほど貢献するかも黒字転換の大きな要因となりそうだ。

ソニーは、今四半期のパソコン販売台数および業績は発表しなかったものの、「夏商戦は、コンセプトを一新したバイオを発売したが、ユーザーに新しい用途提案が伝わらなかった」(湯原隆男・ソニー執行役常務)と弱気のコメント。今年度通期のパソコンの出荷台数予想は、国内外合わせて370万台。前年度に比べ50万台増の見通しとなっている。このうち海外向けは40万台増の250万台で、国内は10万台増の120万台の予想。国内市場は、コンシューマ向け需要の減退が影響し、海外市場での増加に頼ることになる。
富士通も四半期ベースの台数および業績は公表していないが、今年度通期で711万台(昨年度654万台)を見込む。「低価格化の影響を受けて厳しい状況が続いているが、ノートパソコンが好調に推移するなど、プラス材料もある」(富士通)とし、出荷台数増加を見込み、期初に定めた数字を変更していない。
NECは前年同期比に比べ2万台減り63万台。コンシューマ向けが全体の61%を占めており、「ここ数年個人向けの販売が伸びる傾向にある」(NEC)。こうしたなか今年度は、法人ユーザーの開拓にも積極的に動いており、外資系メーカーが5万円前後の低価格により直販で攻めるのに対し、既存の販売パートナーとの連携強化で販売を伸ばす戦略を打ち出している。ウェブサイトでの注文をパートナーに紹介し、サポートサービスなどの付加価値をつけて販売するなど、パートナーとの協業で拡販を目指す。
電子情報技術産業協会(JEITA)が7月28日に発表した今年度(04年4月-05年3月)第1四半期の国内パソコン出荷実績では、台数で前年同期比2%増の約256万台と5四半期連続で前年同期を上回ったものの、金額ベースでは同5%減の3735億円と落ち込んだ。