グラフィックスソフトウェアの開発・販売を手がけるイーフロンティア（安藤健一社長）が、事業規模の拡大を図るため、国内外グラフィックスソフト会社の買収や業務提携を積極化している。グラフィックスソフトを自社に集積し、国内外の販売ネットワークで販売本数を拡大する戦略だ。他社製ソフトを復刻させて市場に再投入するなど、グラフィックスソフト市場全体の活性化も狙う。こうした施策により、2006年度（07年3月期）までに売上高を04年度の2倍となる100億円を達成できる自信を見せている。（谷畑良胤●取材／文）

国内外で販売拡大図る

■2年間で約400アイテムに

　イーフロンティアは昨年から、買収や業務提携を目的に、グラフィックスソフト会社へのアプローチを積極化した。03年4月にはエクス・ツールスから3次元CGソフト「シェード」の営業権を獲得。現在、新シリーズの開発も行っている。次いで5月には、総合素材ソフト「具満タン」を開発・販売するデザインエクスチェンジ（資本金7億6450万円）に5.74％資本参加して、デザインエクスチェンジのソフトすべての販売権を得た。この年には、オンラインゲームを運営するフロンティアグループを100％子会社化して、同分野にも参入している。

　今年に入ってからも事業は拡大の一途をたどる。2月にはアニメーション制作者向け3次元ソフト「ポーザー」の販売代理権をトゥーから取得。3月には、グラフィックス分野で広く使われている加コーレル製2次元CGソフトの販売や、オリジナルソフトの開発を行うメディアビジョンと業務提携。実質的にメディアビジョンの取扱ソフトすべての営業権をイーフロンティアが握った。さらに、7月下旬までに、年賀状作成ソフト「筆王」を開発・販売するアイフォーを約5億円で買収することで手続きを完了した。

　買収や業務提携により、イーフロンティアの取扱ソフト数はこの2年間で約400アイテムに倍増、05年度（06年3月期）の連結売上高は前年度に比べ、ほぼ倍増となる53億円に成長する見通し。

　イーフロンティアは昨年、米国のソフト開発・販売のキュリアス・ラブスを100％子会社化したのに加え、中国拠点「イーフロンティア上海」を開設して、海外での営業展開を開始した。安藤社長は、「国内で実績を上げたグラフィックスソフトを2つの拠点から、北米や欧州、東アジア市場に販売している。まだ、海外向けは年商数億円の実績だが、今後さらに拡大する」と、海外事業の拡大に自信を見せる。キュリアス・ラブスだけで、06年度には年商20億円規模までに引き上げ、その後、欧州にも販売拠点を設ける計画だ。

■市場に活を入れる

　イーフロンティアが事業拡大を図るのは、国内グラフィックスソフト市場全体がここ数年低調になっており、市場に活を入れることが目的だ。多くのソフト会社は、過去に人気のあったソフトを持ちながら、開発費や販売チャネルの開拓資金が決定的に不足しており、新たな展開ができない状況。

　そこで、「こうしたソフトを復刻させ、パソコン量販店や専門学校、ウェブ販売、海外拠点の販売チャネルを活用して、クリエータへ安価なソフトを提供できるイノベータとしての役割を果たす」（安藤社長）と、グラフィックスソフトの活性化が狙いと語る。同社が独占的に複数のグラフィックスソフトを扱うことにより価格の下方硬直化などの懸念もありそうだが、安藤社長は、「部品の共通化が図れ開発コストが削減できる。さらにセット販売による複数本数販売が期待でき、拡販につながる」として、相乗効果は高いと見ている。

　日本のソフトが海外展開で実績を上げた例は少ない。国内外の人気ソフトを集め、その復刻を大義名分として市場拡大と業績アップを狙うイーフロンティアの戦略が成功すれば、それは取りも直さずグラフィックスソフト市場の復活にもつながる。