富士通(黒川博昭社長)は、パートナーを主体とする中堅企業市場向けビジネスで、売上高を3年連続で2ケタ増とする目標を掲げた。システム案件の小口化が進んでいることから、パートナーの商談期間を現在の平均4.7か月から平均3か月へと短縮。案件獲得数を増やすことで売上増につなげる。今年度(2005年3月期)から06年度(07年3月期)まで毎年度12%増の売上成長を達成し、中堅企業市場におけるシェアを昨年度(04年3月期)の14.4%から06年度に20%へと拡大する。
中堅市場ビジネス06年度売上3200億円へ
中堅市場におけるパートナー経由での売上高は、過去3年間、横ばいか微増で推移してきた。だが、中堅企業のIT投資に明るい兆しが見えてきたことから、今年度から3年間、パートナー経由での売上高を前年度比12%増のペースで毎年伸ばす。06年度にはパートナー経由の売上高で3200億円を達成し、中堅市場において20%のシェア獲得を目指す。
オープン化を背景に販売価格の下落傾向が続くなかで12%成長を持続させるには、効率良く案件を獲得し、短期間で売上計上できる仕組みづくりが欠かせない。富士通では、これまで平均4.7か月かかっていたパートナーの商談期間を、今年度第4四半期(05年1-3月期)までに平均3か月へ短縮する。商談サイクルを4割近く短くすることで、来年度(06年3月期)以降、パートナーは営業人員を増やさなくても案件数を4割近く拡大できる計算となる。
実現に向けて、顧客発掘を担当するコールセンターをフル活用するとともに、個別のソフト開発が発生しないソリューションの品揃えを強化することで、パートナーの商談期間の短縮を支援する。顧客発掘によりパートナーの手持ち案件が増え、手離れの良いソリューションが拡充すれば、パートナーは受注獲得に向けた提案活動やシステム構築に専念できる。案件あたりの小口化が進んでも、より多くの案件を従来と同じ営業人数で受注できれば、売り上げも利益も高まることになる。
富士通の中村巧・経営執行役パートナービジネス本部長は、「パートナーがすべて自力で案件発掘を手がけていては商談期間を短縮できない」と、案件が小口化するなかで売り上げを伸ばすには、商談の回転率の向上が欠かせないと考える。通常、中堅企業10社にアプローチしても、実際に商談できるのは2-3社で、受注まで漕ぎ着けるのは0.5社程度の比率だという。潜在顧客の発掘支援を強化することで、最終的な受注比率の倍増を図る。
また、富士通は中堅企業向けの業務アプリケーションを開発しているパートナーを中心に組織したパートナー支援プログラム「パートナーアリーナ」を今年6月に開設。オービックビジネスコンサルタント(OBC)や内田洋行など11社がパートナーアリーナに参加しており、これに富士通のERP(統合基幹業務システム)パッケージ「グロービア-C」やプラットフォームを組み合わせることで、中堅企業の需要にマッチしたソリューションの品揃えを増やす。
通信系システムに強いパートナーの中には、「ライバルのNECがコンピュータと通信を統合した『ユニバージュ』を立ち上げるなどユビキタスへの対応を進めており、富士通は遅れている」(パートナー幹部)との焦りの声がある。これに対して富士通では、「ソリューションの中にIP電話などユビキタス系の要素を組み込む」(中村経営執行役)ことで、品揃え拡充の一環としてユビキタス対応を進める方針だ。
富士通のパートナーは全国に約1700社。パートナービジネスの売上拡大をコミットする部隊として、今年6月に「パートナービジネス本部」を240人体制で新設した。パートナーの売上増が同本部の実績として評価される仕組みになっており、このため「中堅市場で富士通による直販を伸ばす考えはない」(同)と、パートナー経由の売上拡大に専念していく。