企業向けパソコンの今年度(2005年3月期)出荷台数が、前年度比で約10%の伸びに達することがほぼ確実になってきた。昨年度(04年3月期)の10-12%増に続く高い伸び率で、「2000年(Y2K)問題の買い替え特需の更新期というだけでは説明がつかない」(メーカー関係者)と、景気回復に刺激された企業の旺盛なIT投資欲がパソコンの出荷増に結びついているもようだ。
各社増産モードに
昨年度と同等の伸びに手応えを感じる市場関係者が急増している。NECは、「下期(04年10月-05年3月)も引き続き増産体制を維持する」(久代智・パートナービジネス営業事業本部ビジネスPC事業部マーケティンググループグループマネージャー)と、シェア拡大に向けて強気の姿勢で臨む方針だ。

販売の現場においても予想を上回る伸びを示している。大塚商会は、今年前半(1-6月)のパソコン販売台数が「前年同期比で2割増えた」(高田美実・マーケティング本部販売企画部次長)とし、今年後半(7-12月)も需要が急激に落ち込むとは考えにくいと見ている。今年初めの段階では「前年より若干販売台数は落ちる」(同)と予測していただけに、旺盛な購買意欲の継続に驚きを隠さない。
市場関係者は、「Y2K問題の特需期に購入したパソコンの買い替え需要が断続的に続いているのに加え、景気の明るい兆しに刺激されIT投資予算が増えていることが、パソコン需要の拡大に結びついている」と、買い足し・買い増しといった新規投資が販売台数伸長の背景にあると分析する。
旺盛なIT投資欲を見越して勝負に出るメーカーも少なくない。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、企業向けパソコンの本体価格を四半期ごとに3-5%引き下げ、価格競争で先行するデルと激しい競争を展開した。この結果、今年度(04年10月期)は「前年度比5割増の出荷」(平松進也・パーソナルシステムズ事業統括デスクトップビジネス本部本部長)と大幅な伸長を見込む。
激しい価格競争によって、販売価格を引き下げざるえない販売店も続出した。「デル、日本HP、NEC、富士通の順で、市場価格を下方向に強く引っ張った」(販売店関係者)と打ち明ける。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の石田聡子・PC&プリンティング事業製品企画&マーケティングPSGマーケティング部長は、「出荷台数が伸びる割に金額は伸びていない」とし、出荷台数の伸びが目立つ一方、売上高では“戦々恐々”の思いという。
調査会社、MM総研の中村成希・ITプロダクト研究グループ研究員は、「金額ベースでの伸び率は、出荷台数の伸び率の半分以下になる可能性がある」と、低価格化に歯止めがかかっていないと指摘する。
こうしたなか、NECは「デルや日本HPが市場の伸びを上回る販売台数を叩き出している以上、当社もそれをできない理由はない」(久代マネージャー)と、市場の伸び率プラスαを目指す。富士通も、「市場の伸び以上を目指す」と市場を上回る成長に意欲を示す。
需要に即応できる“増産・増販モード”をベンダー各社が堅持する一方、販売シェア拡大に向けた価格競争がさらに激化する見通しだ。