日本情報技術取引所(JIET、二川秀昭理事長)は、今年度(2006年3月期)中に任意団体からNPO(民間非営利組織)法人へ移行する。これにより、会員獲得に弾みをつけたい考えだが、その上で、森本一臣・理事は「新たなビジョンが必要では」と、JIETが成長する転換点に立っていると指摘する。東海本部を立ち上げた経緯、「商談会」やJIETの進化に対する思いなどを森本理事に聞いた。
――今年設立5周年を迎えた東海本部(当時・東海支部)の立ち上げ当初に尽力したと聞いていますが。
森本 私と二上秀昭・理事長との出会いは、今から十数年前です。千葉県の柏市にある公団マンションに移り住んだ時に、共に管理組合の理事に就任したことから知り合いました。その後1992年、私は伸明設計(現・日本テクシード)の東京支店長から代表取締役として名古屋に単身赴任を始めた頃でしたが、JIETを設立することを聞き、参加を勧められ、趣旨に共感して創立時に加盟しました。当時からソフトハウスが2次・3次請けする「多重階層受注構造」を打破したいという問題意識を持っていました。これはJIETの設立趣旨でもありますが、この考えが多くの共感を得て、全国の中小ソフトハウスの加盟が増え続けました。
加盟後、ずっと二上理事長からは東海地区にも支部を設立するよう促され続けていましたが、どうせ設立するからにはある程度の数は纏めたいと考えていました。ところで、東海地区には、地域のソフトハウスが多く加盟する愛知県情報サービス産業協会(AiA)や岐阜県情報サ-ビス産業協会があり、こういう団体に所属するソフトハウスが、たとえJIETの活動趣旨や「商談会」に賛同しても、あらためて会費を投じて「どっと」加盟してもらえるか疑問で躊躇していました。しかし加盟後3年、そろそろ立ち上げなければと発足準備をし始めた矢先に、AiAの理事を務め、地元IT業界でも人脈の広い清川茂満・セントラルソフトサービス社長(現在、JIETの東海本部長兼東海支部長)から「互いに協力して支部を設立しよう」との応援を受けたこともあり、二人三脚で支部設立と会員の勧誘をすすめ、九州支部(現・九州本部)と同時期に東海支部を立ち上げました。
――JIETの課題である「多重階層受注構造」に対する意見があるようですね。 森本 日本テクシードは以前から、そして現在も機械、電子・電気の設計開発技術者の派遣を中心にしています。89年頃には、「第1次ソフトハウスブーム」のような現象があり、プログラマの常駐サービスも花開き、当社もソフト開発の技術者派遣を順次開始しました。そして現在は、単に技術者を派遣するだけではなく、顧客企業の研究開発(R&D)工程のアウトソーシング事業を展開しています。
JIETの会員は、ソフト開発のキーテクノロジーを持つものの、「人材派遣型」のソフトハウスが大半です。JIETは設立当初から、「“従来の受注構造”にある“多重構造”を打破する」と謳っていますが、依然として人材派遣型の「マンパワーサービス」を提供する団体になっているという課題があります。
日本テクシードは、顧客に密着して信頼関係を構築し、研究開発工程の中堅システムインテグレータ(SI)的な存在になろうと、技術者を派遣するだけでなく、当社が特定製品の設計をすべて請け負える集団になることを目指しています。そのために独立経営を放棄して「連峰」経営のアーク傘下に入りました。こうした業態革新・経営革新の必要性を感じます。
――そういう考えをもっているとなると、東海本部では、他の本部・支部とは違う「商談会」を展開しているのですか。その中で、森本理事の役割を教えてください。 森本 東海本部も現状、他の本部・支部と同様にソフト開発の技術者を「商談会」を通じて得た営業情報に基づいて人材派遣するという、その範疇の発表活動にとどまっています。設立当初は、「新たな顧客情報、営業情報の収集と受注に役立つ」として、こうした活動形態に賛同して会員が一気に増えましたが、2、3年後から伸び悩んでいます。
JIETは、2010年までに「会員3000社」に到達する数値目標を掲げて活動をしています。毎年100-150社が加盟しても15-20年かかり、このままだと数値目標は「絵に描いた餅」になってしまいます。そこで、本年度から「1県1支部」の活動方針を明確にして、草の根的に会員を増やす戦略を展開しており、その中で多くの幹事さんたちが生まれてきています。私は、本部理事として各地の本部・支部の幹事に対し、熱意を失わせないように側面支援をしています。
――この「側面支援」として、どんな活動を展開しているのですか。また、熱意を喪失させない意識改革として、何か考えはありますか。 森本 各本部・支部の「商談会」や幹事会に足繁く運び、JIETの現場を担う幹事さんたちとコミュニケーションを図り、問題点の把握をしています。また、誰からも信頼される認証団体になるため、JIETは任意団体からNPO(民間非営利組織)法人へ変わりますが、こうした本部の意向を地域に伝える活動もしています。
意識改革については、JIET会員が仮に3000社を達成した時に、何が実現するのか、そろそろ新たなビジョンを示す必要があると思っています。JIETが設立当初から掲げているビジョンも素晴らしいものですが、設立から10年経った今、方針のさらなる進化が求められているのではないかと思います。
――つまり、「多重階層受注構造」の改善に向けた活動をもっと積極的に取り組むべきだと。 森本 日本テクシードは、元々、ソフト開発ばかりをしていませんでしたので、「門外漢」の立場ですが、それだけに率直に意見を言える立場にあることを前置きします。JIETの会員は、設立当初から比べると、最近はパッケージ開発会社や組み込みソフトを扱うITベンチャーも加わり、会員層が多様化してきていますが、やはりソフト開発の「人材派遣」が大半です。零細・中小のソフトハウスの将来性を担う上で、現在の会員層を再度分析し、「多重階層受注構造」を改善するだけでなく、複数のソフトハウスを直接受注できる企業へ淘汰する方向へ促すか、業界内で秀でた技術を持つ専門的な分野に導くのか、会員の方向性を示す必要があるでしょう。
――一部地域では、零細・中小ソフトハウスの合従連衡が進んでいると聞きますが。 森本 そうした動向が1つのヒントになるでしょう。顧客企業から見て仕事を出したい企業になるのか、大手SIの意のまま人材派遣モデルのソフトハウスにとどまるのか、2つの選択肢があります。しかし後者では、相対的な地位も上がらぬまま、大手人材派遣業から参入してきている新興勢力に侵食されている現実もあり、厳しくなる一方だと思いますので、早く成り上がってほしいです。
方向性が同じ2、3社で合併して、株式上場などで社会的な信用を得て、案件を直接受注できる体制をつくることはできないでしょうか。
――そうしますと、現在の「商談会」も変容させる必要がありますね。 森本 今まで目先のビジネスに関する「商談会」をしてきていますが、もう少し中期的な視点で会員相互に相乗効果が生じる取り組みとして、「商談会」以外に「作業部会」的な活動を増やすべきだと考えています。
「作業部会」は、例えばある大型案件の受注を目指し、本部・支部の会員が協力体制を組み、共同受注に向けた業務提携や資本提携など踏み込んだ話し合いをする場として設置してみてはどうでしょうか。
JIETで進める1県1支部を設立する草の根運動は、とてもいい取り組みです。JIETを通じて地元のソフトハウスがいい交流を図れています。その良さを生かし、さらなる発展していく活動を提案していきます。
【PROFILE】
1950年、高知県高知市生まれ。54歳74年、中央大学経済学部経済科卒。同年、「VAN」ブランドで有名なアパレルメーカー、ヴァンヂャケットに入社し、経理部に所属。一時、家業の蒲鉾製造業に帰郷。83年、名古屋市の伸明設計(現・日本テクシード)に入社し、94年から東京支店長。94年1月、社長に就任。