その他
災害対策でテープ装置の需要が増加
2005/12/05 14:53
週刊BCN 2005年12月05日vol.1116掲載
企業システムのデータバックアップに使うテープ装置のニーズが高まっている。総理府が8月に災害時の「事業継続ガイドライン」を示し、データバックアップを複数か所で行うことなどを求めたことが影響している。企業システムを構築するベンダーでは、災害に弱いとされるディスクのデータ保存だけでなく、サーバーなどから独立して保管できるテープ装置の活用も顧客に提案し始めている。大塚商会は、テープバックアップ用の倉庫を新設することを計画。このほかにも、ディスクとテープ装置を利用した新たなストレージソリューションが、各社から相次ぎ登場している。(谷畑良胤●取材/文)
ディスクと併用でバックアップ強化
■前年同期比4倍と急伸
大塚商会が「災害対策」をキーワードにシステム構築した案件数は、今年9-11月が前年同期比で約4倍に伸びた。多くは、ハードディスクドライブ(HDD)搭載のNAS(ネットワーク接続ストレージ)を同社のデータセンター(IDC)へリプリケーション(遠隔地へのデータ退避)する案件である。それでも、「テープ装置は可搬性に優れ、万が一の災害でも持ち出せる」(中本明彦ハードプロモーショングループ課長)ことから、ディスクだけにバックアップを頼っている企業へテープ装置の併用を促している。
このため、国内でデファクト(事実上の業界標準)となりつつある大容量のテープ規格「LTO」は、「ディスクの需要増に比例して伸びる」(中本課長)と予測する。しかし、テープ装置を企業内に設置できない中堅・中小企業向けには、テープ装置を保管する倉庫を設け、大塚商会が預かることも検討している。
データ保護製品を提供するシマンテックは、「最近、テープ装置が再認識されてきた」(大畑正典ソリューションマーケティングマネージャー)と話す。同社は、データ破損の最悪ケースを想定して、ディスクとテープ装置を組み合わせたバックアップを推奨。10月には、両媒体を利用したデータ保護作業を1か所のコンソールで管理できるデータ管理製品を出した。
テープ装置の利点について、大畑マネージャーは「数か月、数週間単位で世代管理ができ、トラブルに際して必要な日時のデータを素早くリストア(復旧)できる」という。ディスクで保存したデータは、上書きミスやハードウェア障害、ウイルス被害などで損失する可能性があるため、確実にデータを保存・復旧するためにテープ装置が不可欠だと指摘する。
■大容量の「LTO」は2010年に76万台に
日本ビジネスコンピューター(JBCC)では、1999年にシステム運用管理統合センター「SMAC」での保守・管理サービスを開始した。今年9月には、SMACを利用して業務データを遠隔地で保存して迅速に復旧させる「遠隔バックアップサービス」を始めた。「中堅・中小企業で災害対策に関する需要が高まった」(後藤浩マネジメント・サービス推進本部本部長)ためだ。
同サービスはIBMのIAサーバー「iSeries」のディスクに保存したデータをFTP(ファイル転送のプロトコル)で転送し、SMACに自動バックアップする。ただ、同サービスを利用する企業側には、テープ装置を加えた2重媒体でのバックアップ体制を構築するよう勧めている。「遠隔バックアップサービスの堅牢性は高いが、障害が起きる可能性が全くゼロではないため」(後藤本部長)だという。
多くの企業では、サーバー1台に対しテープ装置を1台設置している。しかし、最近では、サーバー統合が進展し、ディスクを仮想テープ(LTO)で1か所に統合できる「仮想テープライブラリ装置」の需要が高まっている。
米オーバーランドストレージが提供する仮想テープライブラリ装置「NEOシリーズ」の代理店であるアイ・アイ・エム(IIM)は、国内メーカーの富士通とNECに同シリーズをOEM(相手先ブランドによる生産)供給しているが、「この2年間でOEM製品は1300台を出荷した。毎年10%以上増えている」(元吉健二システムソリューション事業部事業部長)と、成長性に驚く。
調査会社の富士キメラ総研によると、国内のテープ装置は、「横ばいから微減」の見通し。だが、小容量の「DDS」や「DLT」が減る一方、大容量の「LTO」は、05年が約40万台、2010年に76万台に拡大すると見込む。
2年ほど前は小容量のテープ装置がバックアップの主流だった。その後、その役割をディスクが取って代わった。最近では、ディスクだけのバックアップに不安を感じるユーザーが再び大容量のテープ装置を求め始めているのだ。
総理府の「事業継続ガイドライン」では、データバックアップ体制について、「同じ場所で同時に被災しない場所に保存する」ことを求めている。テープ装置は、サーバーなど装置から離れた場所に独立保管できる点などが再評価されている。ディスクとテープ装置の利点を生かし、データをバックアップするニーズは今後も高まりそうである。
企業システムのデータバックアップに使うテープ装置のニーズが高まっている。総理府が8月に災害時の「事業継続ガイドライン」を示し、データバックアップを複数か所で行うことなどを求めたことが影響している。企業システムを構築するベンダーでは、災害に弱いとされるディスクのデータ保存だけでなく、サーバーなどから独立して保管できるテープ装置の活用も顧客に提案し始めている。大塚商会は、テープバックアップ用の倉庫を新設することを計画。このほかにも、ディスクとテープ装置を利用した新たなストレージソリューションが、各社から相次ぎ登場している。(谷畑良胤●取材/文)
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